何で僕だけ「墓穴を掘る」
歩き続けて丁度ゴブリンを以前発見した場所と森の入り口との中間に穴を掘る事にした。
その作業は難航する。スコップが無いからだ。剣をその代わりにして土を掘るのだが、コレが大変である。
土魔法で「落とし穴」は作れるのだが、それ以上に魔力を減らしたくないと言う点が僕にはある。
「先制攻撃、僕の生命線。それを減らすよりかはこうして穴掘りした方がまだマシってもんだ。」
以前に街の中でのドブさらいでこうした仕事は慣れたものだ。一生懸命に穴を掘る。
「そう言えば師匠から「スコップ」は習って無いな。・・・まあ、冗談だけど。」
もしかしたら師匠に頼めば「スコップ」も教えてくれるかもしれない。軍隊というモノはあらゆる物を武器に戦うと言う。
その中で「スコップ」は接近戦では万能だと言った事を聞いた事がある。いや、シャベルか?同じ物でも呼び名の違いがある事をこの場で思い出したが、下らない事だった。どちらでもここでは関係無い。
「今度はスコップを持って森に入るか。それもまあ、今回の事が上手く行ったら、だけど。」
恐らくは開幕の魔法で二体、続けての連続魔法で二体を運が良ければ倒せる事ができる。
だが今回は七体が出て来る予想だ。そこで残りの三体に対してそのまま連続で魔法を撃っても避けられてしまう可能性がある。
こちらをしっかりと敵と認識したゴブリンが迫る魔法を避けようとしないなんてことは無いだろう。
確実に接近戦をする為にこちらに走り寄って来る。そうなれば三対一、こちらの勝ち目が小さくなる。
一体は魔法で牽制しても、残り二体がこちらに向かってくる。その片方へと剣を振って倒している隙を見て、もう一方のゴブリンの攻撃が僕を襲うだろう。
そうなると僕は一撃で殺される可能性がある。それはキツイ。せめて盾があればと思う。それでも今無いモノは無いのだ。
盾は剣よりも少々お高めで手がギリギリ出せなかった。街の中でアルバイトでも探して資金を稼いで買えば何とかなったかもしれないのだが、懸念があった。
「検証ができてない。と言うか、寧ろ一人だとこのクエストの検証ができない、いや、できるけど今の状態が再度、再現できるかどうかは分からないから無理だ。」
もしこのギルドのクエストに特殊条件で発生するモノがあるとすれば、それが一度きり、なんて言うと僕一人では今の時点で「中止」は選べない。
その時点でもう二度と同じ特殊条件を発生させられない可能性があるからだ。
何としても今の時点でこの今の状態をクリアする。そう、こうした特殊なイベントはクリアすると称号やスキルが手に入る可能性があるからだ。
連続で同じクエストを受けて特定の魔物を連続して倒す。そんな条件だった場合は狼を倒した事に懸念がある。
もしかしたら森へと入る前の遭遇だったのでノーカウントとして扱ってくれていればいいのだが。
「はぁ~、これくらいで良いか。・・・あ、もしかしてコレ、登るの?」
深く掘り過ぎて穴から出るのに再び苦労した。手持ちのサブ武器のショートソードを壁に深く刺してソレを足掛かりにしようとしたが、穴から出たらソレを回収できない事に気が付いた。
「足がかりにできる溝を少し彫って地道に上るか・・・」
こうした罠を張るなら今度は梯子も用意しておかねばならないと言う事が嫌という程理解できた。後悔先に立たず。
この落とし穴以外にも罠のバリエーションは考えてあったのだが、先ずは罠の基本だろうと思って穴を掘り始めたのは間違いだった。
他のブービートラップを用意すればよかったと心底思う。そしてまだまだこの穴を隠す為の準備もしなければならない。
「落とし穴って本当に苦労して作る罠なんだなぁ。いわゆる「攻撃的」なんじゃ無くて事前準備の「防衛型」なんだな。」
土魔法でパッと作れる魔力の余裕が有ったら良かったが、僕にはそこまでの魔力量が無い。流石のレベル「1」だ。
しかも深くしようと思えば思う程にこの「落とし穴」は魔法で作ろうとすると魔力を消費する。
そうなると先制攻撃、奇襲をかけるための魔力の計算上で効果的な深さの穴を作る事は今の僕には不可能だ。師匠から教わった土魔法、かなり使えるモノではあるのだが。
「あれ?この落とし穴ってそのまま残り続ける?もしかしてここってダンジョン判定されてて僕が森を出たらもしかして消えちゃうとか?」
再度の使用が不可、そんな所まで考えてからまたしても後悔した。落とし穴は掘るモノじゃないな、と。
こうして僕は幾度もの心が折れそうな事態に面した後にゴブリン探しを始めた。




