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何で俺だけ  作者: コンソン
「僕」
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何で僕だけ「罠」

 さて、疑問は解消されたが、まだこれから問題が山積みである。直近でゴブリンの事だ。


「あの、師匠、六体までは何とか一気に倒せる所まで行ったんですけど、七体はキツイなって流石に思うんですよ。何かアドバイスくれないですか?」


「甘ったれた事を言うのぅ。それはお前の工夫が足りんからじゃぞ?まあ良いじゃろ。特別に教えてやるわい。」


 そうして教わった方法は何とも言えないモノだった。そんな手まで自分は使わないとならないのかと。

 しかし僕のこの「無職」を知って他のプレイヤーが僕を仲間に入れてくれるかどうかを考えると、これもしょうがない気がした。

 もし仲間に入れて貰っても、何時までも魔物を倒してもレベルが上がらない僕を見限ってプレイヤーたちは僕の事を追放するだろう。


「分かりました。時間が掛かりそうですけど、やってみます。ああー、昔見た映画に何かしらヒントってあるかな?」


 師匠に一礼してから別れようと思ったのだが、ここで家事全般を済ませて行けと言われてしまう。

 稽古を付けてやったのだから支払いはそれで済ませろと言う事だ。僕は師匠に鍛えて貰っている間お金を一切請求されていない。

 卒業したと思っていたが、まだまだ師匠には教わる事が多いと思いつつも僕は炊事、掃除、洗濯の仕事を熟して家を後にした。


 この日は既にもう時間がそれなりに過ぎてしまっていて続きは明日にして僕はログアウトをした。


 次の日、僕は朝食を摂って直ぐにログインする。ニートはヤバい。それを分かっていながら僕は今日もゴブリンの事を考える。

 流石にレベルが一つでも上がればゴブリン以外の魔物も相手できるだろう。そんな風に思って森へと向かうが、その森の入り口付近でにハグレ魔物だろう一体の角の生えた狼と遭遇してしまう。


(ヤバイ!真正面から真っ向勝負って!僕のレベルで倒せるのか!?)


 一瞬パニックになりかけた。ゴブリンをどうやって倒そうかと考えていた所にいきなり他の魔物との遭遇だ。

 心の準備もできていない所か、この狼をソロで倒せる物かどうかを調べてもいなかった。

 森には当然ゴブリン以外の魔物が生息している。それをすっかりと忘れていた。ギルドで受けた依頼が「ゴブリン討伐十体」と言うのも余計に今の僕の混乱に拍車をかけている要因だ。


(まさかこいつを倒したらゴブリンの数がリセット、とかは無いだろうな!?くっそぉー!検証してる暇も無ければ逃げられそうも無いなんて!)


 すかさず腰に佩いた剣だけは抜いて正眼の構えを取る。コレは防御の型だ。剣を真正面、相手の方へと向ける事に因って牽制の意味もある。

 そして剣の長さが基準となって距離を、間合いを量るための方法にもなるのである。


 狼は低い唸り声を上げてじりじりとこちらを観察するように僕の周りを歩き始めた。距離は一定。3m程だ。

 こんな距離は一瞬で詰められてしまう事だろう。僕は焦りを抑えられない。


(息を吸うのもツライ位に何故か体中が固まってる。リラックスできてない・・・無理やりにでも息を吸わないと・・・)


 そう思っても狼の鋭い視線がずっと僕に向けられ続けていてその隙も無い。

 過度の緊張感で呼吸が止まりかけたその時に狼は飛び込んで来た。僕のその隙を逃さなかったのだ。


 交錯は一瞬。僕の身体は狼の懐に潜り込んでいた。狼に飛び込まれたと同時に僕は相手の腹へと刺突を狙った。

 その刺突は運が良かったのか狼に避けられたりせずにその胴を貫いた。ここで僕は捻りを入れるのを忘れない。ダメージアップ。

 しかし昨日のゴブリンの時とは違って直ぐに引き抜かずにそのまま狼を押し倒すようにして自分の体ごと剣を押し込んでいく。

 ズブズブと刀身がめり込んでいき、その手応えが無くなった後はそのまま地面へと勢いのままに剣ごと狼を叩き付ける。そこで狼は青光を発しながら消えて行った。


「・・・ぶっはあああああああああ!ふぅ、はぁ、ふぅ、はぁ・・・た、倒したぁァぁァぁァ~・・・」


 ここはゲームの中だ。これほどに大げさに深呼吸をしないでも現実の方の身体の方は別に何ともなっていない。

 そう言った健康面はかなり綿密に管理、配慮されていると言うのを前に何処かのネットニュースで読んだ事がある。

 それでもこれほどまでの緊張感に晒されて僕の精神はそう言った行動をとってしまうくらいにそれだけ追い詰められていたと言う事だ。


 その場で尻餅をついて一息入れたい気分をぐっと堪える。この森に来たのはゴブリンが目的だからだ。

 それともう街へと帰りたい気分に襲われるのだが、それも我慢する。


「もう、ひと踏ん張り・・・さて、これから罠を張ってそこにゴブリンを誘い込まなきゃいけないんだ。時間が幾らあっても足りない。」


 ゴブリンを見つけて、そして誘導、仕掛けた罠に嵌めてその数を減らす。コレが師匠から教わった方法である。

 これなら仲間が居なくてもソロで多数の相手と対抗できると言う事だ。確かに効果的ではあるんだろうが。


「これ、罠を森の中に仕込む所から始めないといけないから時間との戦いだったりするんだよなあ。」


 ゴブリンを見つけるにしろ、時間が掛かる。その前に罠の準備で時間が掛かる。

 見つけたら誘導するにしても森の中をちゃんと罠の張った場所を把握して美味く誘導できないといけない。

 相手に罠がある事を悟られてはならないのだ。演技力も必要になる。


「さてと。さっきの狼で少しくらいは経験値が多めに入ってると良いんだけどな。と言うか・・・未だにレベルが上がらない。どれだけ倒せば良い加減上がるんだよ・・・」


 僕はそうぼやいて森の奥へと入って行った。

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