何で僕だけ「なぞはすべてとけた」
「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ・・・し、師匠は何で僕のレベルが上がらないのか知りませんか?ゴブリンを今クエスト受けて15体以上倒しているんですけど、1レベルも上がってないんです。」
「ワシのつけてやった修行の成果じゃ。喜べ。しっかりと効果が出ておる。」
この返しに僕は「は?」としか言えなかった。だけども師匠が続ける。
「何じゃ、何も知らんでワシに師事を申し出たんか。はぁ、情けないの。やはりバカ弟子じゃの。」
かーっつかっかっかっか!などと愉快そうに高らかに笑う師匠。またしても僕はこれに何も言えない。
どうなってるのかサッパリなので教えて貰え無ければ何も分からないのだ。
「あの、師匠。僕以外でプレイヤーに弟子とか居ますか?」
「あん?おらんのぅ。誰もワシの事など知らんのじゃないか?」
僕は考える。そもそもだ。僕以外のプレイヤーは戦う術を持っていて、そして戦えるジョブだろう。
生産職でも街の外に出てゴブリンとの戦闘くらいは熟せるはずだ。
だから、冒険者ギルドで登録してもそこで「鍛えて欲しい」と言って一々自分の戦う術を増やそうと言った思考になる者は居ない。師匠をギルドから斡旋して貰うと言った思考にはなるはずが無い。
それよりも先ず依頼を受けてさっさと街の外に出て戦闘して楽しみたいと思うはずだ。
依頼を熟した報酬とドキドキワクワクな戦闘がプレイヤーたちを待っている。レベルが上がった方が強くなるのにっ手っ取り早い。
そんな状態で自身を強くするために師匠を探すと言った事などしないはずだ。
「あの、もし、ギルドが戦士のジョブを持つプレイヤーを紹介して弟子にしてやって欲しいと来たら、師匠はコレを受けていましたか?」
「ふむ、そうじゃの。鍛えがいがありそうじゃ。受けていただろうな。」
これでこの師匠のイベントは誰でも受けられた物であると言う事が判明した。
そしてそんなプレイヤーが一人も今まで居なかった事も同時に分かった。
「あの、そうしたら、その戦士も俺と同じ様にレベルが上がらない事になってましたか?」
「なっとったじゃろ。基礎能力の向上、そしてそもそも潜在能力も深くなる。ここが重要じゃ。しかしここで問題になるのがのう、経験がより一層に必要になると言う点じゃ。」
ソレはどう言う事かと思ったのだが、師匠が説明を続けてくれる。
「魔物を倒すとな、レベルが上がる。それは神の力で手助けされておる。倒した魔物の力を取り込むのに神の力が働いておるのだ。倒した魔物から取り込んだ力が、我々を強くする。コレがレベルの上がる仕組みじゃが、その手段以外で強くなった者はどうなる?」
潜在能力の深みが増すと言っていた。基礎能力も向上すると。
「あの、潜在能力を満たすだけの経験値が溜まるとレベルアップするって事ですか?」
「そうじゃ。ただしコレは既に魔物を倒してレベルを一つでも上げておる者には効果が無い。そしてワシはお前のその器を思いきり深くした。当然その分だけ経験が溜まらなければレベルは上がらんな。」
「あの、もしかして今さっきの特訓も深くしちゃってます?」
「おう、そうじゃわい。まあ悪い事でも無いぞ?さっきのでワシの見立てだと最大級、行く所まで行きついたはずじゃわい。後は魔物を狩って狩って狩りまくるだけじゃ。簡単じゃろ?」
僕はこの時に「苦行だ」と心底思った。後どれくらいゴブリンを狩ればレベルが上がるだろうか?今の僕で倒せる魔物はゴブリン位だ。これよりちょっとでも強い魔物だと危うい。
でもここで師匠は悪い事でも無いと言っている。さて何が悪い事でも無いのだろうか?
これ以上僕の楽しみたいと言う気持ちをバッキバキに折ってこないで欲しい。
「将来お前が行きつく所まで行きついた時には、他の者たちよりも頭一つ、いや、二つは抜きん出た力を得ている事じゃろ。そう悲観するで無いわ。ワシが鍛えてやったんじゃぞ?シャキッと背中を伸ばさんか!」
どうやら僕は最大レベルまで上がった時に周りと比べて相当にステータス差ができていると言う事らしい。それはいつの日になるだろうか?考えると頭が痛くなってきそうだ。
僕の落ち込んだ気持ちに活を入れるつもりだったのだろう。まだその手に持っていた木剣でいきなり師匠が僕へと斬り掛かって来た。
突然の攻撃に僕はさっきまで散々やらされていた受け流しの動作を咄嗟に取る。カン、そんな木剣同士が打ち合った音が響く。
その時に今までで一番気持ち良く受け流しが成功した。まるで師匠の攻撃がするすると流れていく、地面へと自然と吸い込まれていっているような錯覚まで手に感じた。
カーン、そんな乾いた音が師匠の木剣からした。コレは師匠がそのまま剣を止められずに地面を木剣で叩いてしまった音だ。
僕は以前にこの稽古で師匠に打ち込んだ際に全く同じ事を経験している。
「ふ、ふ・・・ふははっ!ふははははは!久しぶりじゃわい!ここまで手が痺れたのは!」
どうやら師匠は僕がまぐれだったとしても完璧に一撃を受け流せた事が嬉しいらしかった。




