何で僕だけ「もっとマイルドにして欲しい」
今回は上手く行ったが、次はどうなるかは分からない。何せ七体だ。六体でも限界に近かった。
もう一体あそこに居たら僕はダメージを負っていたはずだ。ゴブリンの攻撃を防ぐための防具が無い。
小さな盾だけでもあったらそれで受け止めるか、或いは受け流すかするのだが。
「剣で受け止めて受け流す・・・まだちょっと自信が無いんだよな。」
あれは本当にタイミングが肝心だ。早く受け止めようとして構えてしまうと相手の勢いを殺しきれない可能性が。
遅すぎると流すのに間に合わずに打ち込みを受けてしまうだろう。
丁度相手の攻撃に合わせて振り、良い具合にかち合ってからスッと力を抜く。それが一番相手の動きを崩す。
ソレがこのゲームの受け流しシステムだ。ショートソードでやろうとすると難易度が上がる。メインで使おうとしている今の剣ならばちょうど良い長さだし、重さだし、攻撃力なのだが、難易度はちょっとだけ甘くなる位だ。
街に戻って来て僕は先ず師匠の所に向かう。レベルの件で何かしらの情報が得られないか聞くためだ。
心当たりがありそうな人物に真っ先に聞きに行く。それで駄目だったらもう一度ギルドで確認だ。
(帰還する途中で自分でも確認したけど、上がってないんだよなあ)
「師匠、お尋ねしたい事があって参りました。」
僕はそう言いながら師匠の家のドアをノックする。すると師匠の答えは裏庭の方から聞こえて来た。
「鍛え直してやるから来い。」
スパルタも程々にして欲しのだが、コレを乗り越えなければきっと質問には答えてくれないんだろう。
そう思って裏庭に向かう。そこには木剣を持った師匠が居る。その手に二本。
「コレを持て。お前が今一番苦手にしている技術を鍛え直してやる。」
「超能力でも持ってるんですか?僕の考えが読まれてる?」
この僕の返しに「何を馬鹿な事を言っておるんじゃこのバカ弟子が!」と怒鳴られた。
「もうそろそろ限界が来る頃じゃと思っておったわい。さあ、時間が惜しい。まだまだ消耗している訳でも無かろう?とことんやるぞ。」
これに僕はうんざりしながらも付き合う。こうした機会は断らない方が良い。何せ一度逃せばもう二度と出てこないイベントなどザラに存在するだろうこのゲームには。
そうするとそんなのを断ったりして後々に「あれは受けておいた方が良かったか?」などと逆に悩む事に繋がったりもする。
こうして再び師匠からの厳しいシゴキが始まる。最初はもの凄く遅く感じる踏み込みと斬り込みで師匠が木剣をこちらに落としてくる。
しかしその動きは遅いはずなのに鋭い。そうした感覚に何か矛盾を受けるのだが、今はそれ所じゃない。
師匠があらゆる角度で斬り込んでくるモノだからソレを受け流すのに必死になってしまう。
しかも一撃一撃受け流しに成功するたびにその速度も鋭さも上げて来るので恐ろしい。
受け流しが成功するたびに上がっていく、しかし、失敗するとソレが一段階また下がるのだ。
しかしワザと失敗して速度を落とすのは厳禁だ。そんな事をしたら師匠に即座に勘付かれる。
そうなればもっと死にたくなる様な目に合わされる事は理解している。前に一度似た様な事をしてその時には瀕死状態になるまで追い込まれた。
なので僕はここでずっと止まらない師匠からの鋭い斬撃を浴び続けなければならない。
どれもこれもマトモに当たれば致命傷、そんな緊張感が無理矢理に僕の受け流しの技術を上げていく。
その内に緩急をつけて斬り込まれるようになり、フェイントをかけてこられるようになり、そうした中で急に全力で突き攻撃が挟まれるなど。
僕の限界を見極める様に師匠がめちゃクソ計算された攻撃を仕掛けてくる。
(息継ぎもマトモにさせてくれない!と言うか!本当にこれだけ激しい魔物との戦闘とかこのゲーム実装されてるの?!)
絶対にソレは無い、そんな風に思ってしまう。ゴブリン十体と戦ったとしても、こんな激しい攻撃の嵐は来ないはずだ。
魔物の種類はもっと多いし、これだけの密度の攻撃を繰り出してくるかもしれない魔物は居るのかもしれないが。
それでも今の僕の現状からして、こんな鍛錬は必要性を全く感じ無い。もっとマイルドで良いはずなのだ。
そんな事を考えているとやっと師匠が剣を引いた。それはこの剣撃地獄の終わりを意味する。ソレは時間にして一時間ぴったりだった。
「で、尋ねたい事とはなんじゃ?まあ大体予想は付くがな。」
ようやっとこれで僕は師匠への質問を許された。




