何で僕だけ「一対三」
師匠からは魔法も教わっている。その際には様々な属性の魔法の「初級」までしか教えては貰えなかった。師匠曰く。
『基礎さえしっかりと練っていれば初級で何事も事足りる。初歩を極めろ。中級を習いたかったらそれからだ。中途半端になりたければ今すぐに教えてやるが?』
そう言われてしまうと中級を覚えようとは思えない。それこそ何処まで初級、基礎を極めれば良いと言った部分を教えては貰えなかったが、上限を決めるなと言われているのでそこは何処までも初歩魔術を追及するのが良いのだと思う事にした。
派手な演出の魔法攻撃も憧れるし、威力もそう言った魔法は絶大なので手っ取り早く戦力として使えるだろう。使えるようになりたいと言った思いはある。
しかしここで僕は深読みをした。もしかしてこの師匠の言葉は何らかの特殊なスキルや制限解除などのフラグでは無いのだろうか?と。
(良く基礎やら初歩、初級を極めると言ったのは「オレツエエ」系でもあるあるだ。ゲームでだってこうした要素は採用されていたりする事も良くある)
僕は森に到着、探索でかなり深い部分にまで入り込んでいた。慎重に歩き、草などを掻き分けて、しかし不要に音を出さない様に慎重に歩きつつもそんな事を考えていた。
(お?ゴブリンが三体・・・こちらにはまだ気づいていない。良し、奇襲で一体を仕留める。魔法でだ。そこから・・・)
暫く長い時間を歩き回ってやっと討伐対象に遭遇した。これに僕はウキウキした気持ちを抑え込んで冷静になろうと努力する。
一旦考えを整理して脳内シミュレーションする。そうして魔法で仕留め切れなかったとしてもゴブリンの態勢は崩れるはずだ。
その隙をついて突撃で一対一を保つように立ち回る。もちろん魔法も使って妨害を決めつつ一体ずつ確実に倒していくのだ。
「先ずは・・・こちらに一番距離が近いゴブリンを、狙う!」
ここで僕は指先をそのキョロキョロと首を左右に振って警戒をしている一体のゴブリンに向ける。そしてその指先から魔法を放った。
ソレはアイスニードルと言う「氷の針」を飛ばす攻撃魔法だ。この氷の針、人差し指位の大きさだ。
しかし先端はかなり鋭く、僕はコレをその狙ったゴブリンの顔めがけて、もうちょっと言うと、その目を貫く、射抜くつもりで発射した。
それと同時に走り出す。がさり、そんな音をさせてワザとこちらに意識を向ける様にだ。コレは計算して音を出したのだ。
グサリ、その後に「ギャアアアアア!」と叫び声が森に響いた。この悲鳴はゴブリンのモノだ。
ソレは僕が放ったアイスニードルが見事に命中したからである。狙い通りに目に突き刺さった。こうして上手く行った事で状況は僕の勝利へとこれで一歩近づいた。
音をワザと出してこちらに意識を向けさせたのは魔法攻撃で狙ったその「目」に突き刺さる様に誘導するためだ。
音を立てれば当然そっちに顔は向くだろう。その位置を始めから計算に入れて狙いを定めて放ったのだ。
当たるか当たらないかは五分五分だったと思う。けれども結構な高い精度で目に、もしくはその近くに魔法が命中すると僕は感覚で何となく解っていた。
思い通りになった事で次の動きに僕は集中した。一匹は暫くの間戦力にならないだろう。
そう、殺し損ねていた。だけどもそれも幾つものシミュレーションした中の予想範囲内だ。
残りの無傷のゴブリン二体はそのままこちらを睨んで迎撃態勢を取っていた。向かってくる僕に対して同時にその手に持つ棍棒で攻撃するつもりである様子。
しかし僕はここでもう一度、走ってゴブリンに近づきつつも魔法を放つ。ファイアーボールだ。しかしコレは野球ボール位の大きさのモノである。
当然威力は低いが、飛んで行く速度はかなり速い。そう僕が「調整した」のだ。
師匠の元ではこうしたコントロールもしっかりミッチリやらされた。
コレは一方のゴブリンの動きを一瞬だけ止めるためのモノだ。べつにこれで倒そうなどと思ってはいない。
アイスニードルの時には奇襲といった事だったし、こちらに気付かれていない状況からでの攻撃だったので願望として「これで一匹仕留められたらいいな?」といった願望が込められている。
この二回目の放った魔法は目的が最初と違う。あくまで一対一に一瞬でも状況を持ち込むために放った一撃である。
ゴブリンの顔に火がマトモにぶつかった。これに慌てふためいて地面を転がっているゴブリン。
その間に僕は残りの一体の目の前まで接近していた。そして接触の寸前に僕は鞘から剣を抜き放ちつつゴブリンの腹を横薙ぎする。
居合切りの真似事だ。だけども上手く行った。深く切ったという手応えが僕の全身に駆け巡る。仕留めた、それがちゃんと理解できていた。
「良し!次!」
切ったゴブリンの状態を確認せずに僕は次の目標を視野に入れて即座に動く。
僕のアイスニードルの攻撃で目を潰されて呻いていたゴブリンが残った目でようやっと僕を睨んだ時にはもう遅い。
そいつの脳天から僕は剣を思いきり叩き付けて唐竹割にしていた。




