何で僕だけ「ようやっとの独り立ち」
「おめでとうございます。アナタはこれで冒険者となりました。これからのご活躍を期待しております。利用規約の説明は御入り用ですか?」
受付からそう言われて僕は「あ、要りません」と返す。これに受付は。
「では早速何かクエストを受けますか?」
と言ってくる。今僕は旅の資金。装備を充実させるためのお金が充分とは言えない状態だった。
以前に斡旋所で稼いだ金はもう残り少ない。結構あったはずなのにこれまでに何かとポーション関係のアイテムを店で購入していたらドンドンと減ってしまった。
先ずは自分の命の安全の為のアイテムを揃えようとしたのだが、コレが結構なお値段だ。
ギリギリでショートソード一本を買うお金を残し、それを購入してから冒険者登録をしに来た。
そう、僕は師匠からやっとの事で合格を得る事ができ、こうして晴れて「戦闘ができます」と言うフラグを起てる事ができたのである。
登録の際にはもしかしてまた駄目だと言われないかとちょっとだけドキドキしたのだが、無事に登録が完了した。
ここからが僕の冒険の始まりなのである。
「斡旋所での仕事の記録が残っていますね。どうやら真面目にお仕事をこなして頂ける方だとお見受けしました。それに老子からの合格を受けた方ですので、そうですね。ゴブリンの討伐をお願いしても良いでしょう。」
どうやら僕は登録したばかりなのにある程度の信用があるようだ。そこで受付がこんな仕事を出してきた。
【近郊の森でのゴブリン退治・討伐目標数「10」以上。上限無し】
である。コレは要するに初心者用の戦闘クエストと言う事だ。
僕は登録したばかりだし、確かにこうした初級のクエストを重ねて行かねばならないのだろう。
ある程度のギルドランクを得られないとこの街から他の土地への移動は許可されない。
なので僕はここでも地道に一歩一歩前へと進まなければならないのだ。
「受けさせて貰います。あの、コレは期限は決められていますか?」
「いいえ。どれだけ時間が掛かろうとも大丈夫です。ゆっくりと身の安全を確保して取り組んでください。アナタの御武運をお祈りしております。」
受付からそう言われて見送られる。僕はギルドの外に出た。
「やっと、やっとだ!まだまだこの始まりの街の外でも近郊にしか足を運べないけど。僕は自由を手に入れた!」
そんな事を一人ギルドの前で呟いて拳を握る。そんな僕を道を行くNPCも、プレイヤーも気にしない。
今や僕の体型は初めの頃とは全くの別物へと変貌している。いや、まだ少しだけポッチャリかもしれないが。
それでも今やダイエットの効果が表れて僕の身体は「普通」なのだ。そう、太っていた時の面影など何処にも無い。
「行こう。これで僕一人でも外に出れるはずだ。このギルドカードさえあれば。」
僕はメニュー画面を開いてクエスト目的地の「近郊の森」方面へと歩き出す。
その方向は外に出ようとして強制的に止められたあの門である。その門を出て真っすぐ道を行った場所にある森が目的地だ。
「はい、次の方。お?冒険者か。ギルドカードを見せてくれ。ゴブリン退治、だな。良し、通って良いぞ。なるべく多く狩って来てくれよ?何せあいつらは幾らでも湧いて出てきて放っておくと氾濫を起こすんだ。頑張って来てくれよ!」
そう門番から言われつつ送り出された。この門番、最初僕がまだ冒険者になっていない時に止めてきたあの門番だった。
僕はこの門番の事は忘れたくても忘れられないのだが、向こうの方は僕の事に気づかなかったようだ。
「何せ見た目は生まれ変わったかの如くだしね。それもそうか。よーし!気合を入れてレベル上げだな!」
僕はこの時にメニュー画面を開いてちゃんと自分のステータスを確認していなかった。師匠からこう言われていたから。
『数字に惑わされる者になるな。強さを求めるのに上限を設定するな。一つに拘るのも良いが、なるべく満遍なく武器を使いこなせ。』
もっと色々な事を卒業の際に言われたが概ねこんな感じだ。だから、この教えを何となく守って僕はステータスを見ずに森へと向かった。




