何で僕だけ「卒業の為の一撃」
またもそれから3ヶ月が過ぎた。この頃になると諦めと言うか、ハイになっていると言うか。良く自分でもずっとこれまで飽きずにここまで付き合ってこれたなと思う。
もう一人で外に出られるようにならなくても良いんじゃないかな?などと考え始めてしまっているくらいに。
こんな長期間にわたってずっとこのイベントに集中できたのは師匠から教わる武器の取り扱いの数が次第に多岐に亘っていったからだ。
ジャマダハル、ハルバート、十文字槍、薙刀、鏟、鈀、モーニングスター、三節棍、トンファー、十手、クロスボウ、チャクラム、ブーメラン、手裏剣、流星錘、鎖鎌、刀。
その他にももっと細かく言えば似通った武器種を様々に扱わされ続けた。それらを「一応は合格じゃな」などと言われるまでずっと付きっ切りで稽古を付けて貰っていた。
馬鹿か?と思ったのは言うまでもない。こんなに使わんわ!と心の中だけで僕はツッコミを入れている。
流石に師匠に面と向かって「必要が無い」とは言えない。僕に教えてくれている立場の相手にそんな偉そうな事は言い放てる勇気を持っていない。
ましてやそんな生意気な事を言ったらこのイベントが失敗扱いになる可能性も考えるべきなのだ。
(しかし僕は今どれくらい戦えるようになったんだろう?流石にもう冒険者登録をして外に出られる実力は得ていると思うんだけど・・・)
そう、僕はずっとこれまで長い期間この修行に耐えていた。しかし今となってはもうこうなると良い加減このイベントを終わらせないと何時まで経っても僕はこの始まりの街から外に出られない気がしてきた。
だからこの時にやっと僕は勇気を振り絞って師匠に訊ねたのだ。いつになれば僕は冒険者ギルドに登録できる実力になるのかと。
で、返って来た答えがこれだ。
「うむ、そうじゃな。もう基礎はもう大丈夫じゃろ。では卒業試験をしてやろうかの。ホレ、好きな武器を使え。ワシを唸らせる一撃を放ってみせよ。」
ここに来て嘘だろ?と零してしまった思わず。だが師匠は真剣な眼差しでこちらを見据えて来るのだ。
ここを乗り切れば晴れて僕はやっとこのゲームの世界を旅できると言う事だ。
ならば本気にならなければならない。だから、僕は一番自分が扱いやすいと思ったロングソードを両手持ちした。
今ではダイエットの効果が表れて僕のアバターは普通体型と言える程に変わっているのだ。
そう、僕はずっと筋トレを続けていたばかりか、徐々に痩せて引き締まっていく自らの身体に喜びを覚えて本格的な「肉体改造」とやらに途中で取り組み始めていた。
このイベントをずっと飽きずに続けられていた要因のもう一つに徐々に変わっていく自分のアバターの体型と言うのがある。
「僕は変わった、変われた。だからこの一撃は自信をもって放たなければ・・・」
僕の現実も、アバターも、今では両方とも以前の面影は無い。生まれ変わった気分である。
「行きます!」
僕は一撃に賭けた。それは上段からの斬り下ろし。それは一番最初にショートソードでひたすらに型を覚えろと師匠から言われて繰り返した動き。ソレを自分でロングソード用に修正したモノだ。
剣の間合いに入った瞬間に振り下ろす。遠慮は無しだ。この一撃を師匠が食らうはずが無い。
だから、全力を出した。単純にここでは戦う技量がどれだけ上がったかを見せる訳では無く、、師匠から一本取ると言った訳では無く、唸らせる一撃を見せるのがクリア条件。
ならば何も考えずに自分の全力を乗せた単純な一撃を披露するのみ。
そして僕の予想通りにその一撃は師匠に軽く受け流された。




