何で僕だけ「僕はいつ解放されるのだろう?」
それからというモノ、掲示板で今このゲームの進行度がどれくらいになっているかといった情報を仕入れるのを止めた。
そもそも自分の心配をせねばならない。他の事など構ってはいられない状況だった。
今まで訓練で培ってきたモノを外に居る魔物にぶつける事は非常に有意義ではあったのだが、難易度が高い。
別の何かに意識を取られてはいられないと悟ったのだ。
それに覚える事も増えた。師匠が僕に今まで指導してくれなかった武器の扱いや動きを教えてくれるようになったからだ。
その教えてくれるようになったきっかけは多分僕の体型である。
ずっと続けていた筋トレの効果が少しづつ出てきていてゲーム内のアバターにも変化が現れていたのだ。
最新式のこのゲームベッドはヘッドギアと連動式で、しかもプレイヤーの現実の方の身体データがゲーム内のアバターとリンクする仕様だったのだ。
そう、僕は痩せ始めた。それこそホンの僅かずつではあったのだが、確実に体重は減っていたのだ。
続けていた筋トレがこの様に作用するとは思っていなかった。よくよく仕様説明などを細かい所まで後から読んでみたらその様な類の文が掛かれていたのは衝撃的だった。
そんな事でまたまた早くも一ヵ月が過ぎていた。その間、余りにも僕の毎日は代り映えしない毎日だった。
いや、僕はこのイベントをクリアするのに必死でログイン中は毎度の師匠の家事手伝いが終われば特訓、魔物との戦闘といった具合でそれどころでは無いと言うのもあるが。
「街の中を散策したいな。いや、コレは別に今の状態でもできるだけど・・・」
師匠からの指導が苦し過ぎて終われば街を歩く気にもならないのが正直な所だ。
それだけ精神的にも、体力的にもかなりの追い込みをかけられていると言う証明でもある。
体力と言う意味では現実の方でやっている筋トレも関わっていると言えるが、それでも「簡単トレーニング」なる物をしているので本来だったら多少の余裕が有ってしかるべきだとも思うのだが。
師匠からのシゴキはそんなモノすら残さない程に厳しい。ここ最近は時々に三時間の訓練の後にすぐさま街の外へと出かけて魔物との戦闘訓練に入ったりもするので余裕など無かったりする。
「いつまで僕はここでこうして居れば良いんだろうか?終わりは?ノルマの達成条件が分からないとモチベーションが保ちにくいな。」
まさか師匠から模擬戦で一本を取れ、などと言った目標なら早い話、無理だと感じる。
あの鋭く突き刺さる眼光を真正面から受け止めるなどと言うのは正直に言って、勘弁願いたい。
あんな物をマトモに受けたら僕は脚が縮こまって動けなくなるだろう。
幾らゲームであっても怖いモノは怖い。相手が幾らNPCであろうともあれは流石に無い、と言いたくなる位に師匠の底は計り知れない。
「時々向けられる何だか背中が冷える現象は師匠なんだよなぁ、完全に。」
時折魔物との戦闘時にいきなり背筋がぞっとする時がある。それを感じると一瞬だけ僕は動きが止まってしまう。
ここ最近はそれにも多少は慣れてはきたのだが、それでも魔物との戦闘中は勘弁してほしいと思ってしまう。
前にそれでゴブリンの一撃を受け損ねそうになった。そしてソレを師匠から罵倒と共に指摘された事がある。
『馬鹿者が!咄嗟の判断に迷ってそのまま正直に受け止めるとはなんたる弛みじゃ!受け流しを教えたじゃろうが!』
意図的に師匠が狙ってやっている事だと最初の頃は分からなかったが、それを理解するようになってからはその背筋の冷たくなる現象は「危険だ」と認識してその場その場で的確な判断ができる様にと必死に意識するようになった。
ただ闘うのではなく、そう言った危険を察知する事もまた訓練である。コレは僕が魔物との戦いに慣れたと思って油断している時に良くされる。
「僕は今徹底的に鍛えられているんだよなぁ。有難いんだけど、有難いんだけど・・・」
僕は早くこの世界で冒険がしたいのだ。ゲームで遊びたいのだ。だけどもコレを完璧に熟せるようになれなければこの始まりの街からは自分一人だけでは外に出られない。
そう、かなり長くやっているのだが、まだ一歩も出られたことが無い。こっそりと出て行こうとした事もあったが、必ず門番に止められて出ては行かせて貰え無いでいた。
改めてこのイベントを終わらせてからじゃないと出て行けないのだろうと諦めてからはいち早くこのイベントを終わらせられるように、師匠から卒業を言い渡されるようにと自主練も始めたりもしたが、余り効果は出ていない様に感じている。
それでもやらないよりかはマシだろう、そんな風に思って僕は今も自主練を続けている。




