何で僕だけ「やっとの事で」
あれから追加で一週間が経過した。気が向いたら教えると言われていた魔法を習う機会は二度あった。
基礎中の基礎の魔法を教わったのだが、魔法の中でも一番地味と掲示板で言われている「土魔法」を教わった。
それこそ「生き延びてナンボ」みたいな使い方を。相手の意表を突く使い方をこれでもかと。
そんな日々が突然に終わった。僕が日課を終わらせて訓練の準備をしていると師匠がやって来てこう言った。
「今日は街から出て外で魔物相手に実戦をして貰うぞ。武器の使い方は一通り全て教えたな。それをこれからは実際に魔物相手にぶつけて体に覚えて行かせる。どの様な相手にはどんな武器が有効か、或いは、どの様な戦術が効果的かを触りだけ教えていく。独り立ちすれば貴様が自身で考えて魔物と戦う事になる。その練習だ。」
僕は師匠から「自身の能力を見るな」と言われていてソレを今も守っている。
どうやら自分が強くなった事を数値的な面で確認するとそれに惑わされて基礎を忘れて行くからだと言う。
幾らそう言ったステータス数値が高くても、動きの基本を忘れて好き勝手に動けば宝の持ち腐れと言う訳だ。
ちゃんと基礎あっての強さは粘り強さを生み出す。ここぞと言う場面でキッチリとした下地があるかないかで勝敗を分ける様な場面もこの先に有ったりするだろう。
「ワクワクする!やっと街の外に出られるのか!しかも魔物と戦闘!僕はやるぞ!やってやるぞぉ!」
「馬鹿者が!浮かれている場合か!まだワシはお前を一人前と認めた訳では無いんじゃ!これからもみっちりと稽古を付けていくつもりだから覚悟せぇ!」
師匠が持っていた杖が僕の頭に叩き付けられた。ボコッと鈍い音がする。僕は設定をいじっていなかったのでこれに頭部に痛みが走った。
その痛みは別にそこまでじゃなかったのだが、衝撃は大きかった。勢い良く叩かれた事で頭は下がり、視点が一瞬ブレた。ついでに「ぷげっ」という叫びも口から洩れている。
こうして僕と師匠は街の外へと出る為に移動。僕が以前門番に止められた所まで来た。
「老子、珍しいですね。外に出るのですか?」
ここで門番が近づいて来た。来たのだが、話しかけたのは僕の師匠の方へだ。しかも「老子」などと言われているようだ。
「あれ?君はこの間の?いや、まさか老子に弟子入りかい?・・・頑張れよ!」
この間とは態度が変わって門番は僕の背中をパシッと叩いて応援の言葉を掛けてくれた。
師匠は別段コレに何ら口を開かずに門の外へと向かって歩く。僕もそれを負って街の外に出る。
出る際には頑張れと言ってくれた門番へと振り返って会釈をして。
「さて、先ずは一番簡単なのから行くぞ。ゴブリン一体じゃ。」
いきなり一対一でのゴブリンと戦闘だと言う。持ってきている武器はショートソードと円形の盾。盾は腕に装着するタイプだ。
「教えは覚えておるな?先ずはそれらを全て駆使してゴブリンを仕留めるんじゃ。全部出し尽くせ。」
そう言ってから師匠はそれ以上何も言う事は無いという感じで黙って近くの林へとスタスタと進んで行く。
杖を突いて背中も丸まっている老人なのに、そんな事は関係無いと言わんばかりの速度を出して。
そして林の側に来たら早速ゴブリンが一体ノソノソとした歩きでこちらに接近してきていた。
「よし、アレを仕留めてこい。危なくなったらワシが助けてやる。ビビらずにぶつかって来い。」
こうして僕はやっとこのゲームでの魔物との初戦闘に入った。




