↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何で俺だけ  作者: コンソン
「僕」
233/638

何で僕だけ「誕生」

 僕はゲーマーの岩田健司。ずっと引きこもりで親の脛を齧って生きている。

 しかし親はこれに何も言ってこないんだ。寧ろ僕を猫かわいがりして「働かなくていいんだ」などと言ってくる。

 顔を合わせる毎に母は「私の可愛い健ちゃん」などと言って僕を甘やかす。


 母はいつも長期間家には居ない。仕事人間だ。僕と言う存在をほったらかしに、と言う訳でも無いが、僕の年齢が12になった時に仕事へと比重を変える様になっていった。

 今では家に殆ど帰って来る事は無い。たまに帰って来ると僕をペットでも可愛がるかのように接してくる。


 父も仕事人間だ。しかしこちらは僕に対して何ら興味が無いような態度で接してくる。

 大抵僕へと吐く父の言葉は「母さんが欲しがったから」「世間の目」「体面上」「社会責任上」「結婚した後は孫攻撃が五月蠅かった」などと言った乾いて、そして冷たい人の情など無い言葉だ。


 ずっと僕は親からこうした態度を受けて生きてきたのだ。そして、歪んだ。

 父は僕へとその内に「働きたくないならそれでもいい」と言ってきて追加で「その代わりに外に出るな」と言われた。

 二人は海外出張なども多く、そしてVRで今の時代は何処に居たって仕事ができる世の中であり、一年の内に三日或いは多くて六日家に居れば多い方だと言うくらいになっている。

 VRが在るのだからそれで僕に顔を見せる、挨拶するくらいはできるはずだ。だけどもそう言った事を親から一切された事が無い。僕は愛情とはいったい何なのか分からなくなった。


 こうして僕は家から一歩も出なくなった。VRがあれば何でもアリだ。そんな時代を不幸と言えば良いのか、幸運と言えば良いのか。

 僕の今の境遇が何となく「幸せ」という言葉は当てはまらないと言う事くらいは自覚している。でも僕は既にこのぬるま湯から出る事もできなくなっていた。12を過ぎてからそんな年月を十年以上過ごしてきた。現在28である。


「ゲームならネットで落とせるし、食事は注文して届けられる。おかげさまでこんな体さ。」


 自嘲しながら今僕は新たに遊ぼうと思っているゲームをダウンロードしている。最新のVRヘッドギアも専用ベッドも用意した。

 僕はお金ですら自由にしても良いと言われ、有り余る資金が使える。しかしコレに僕は何ら幸せを感じない。

 寧ろ自分を「屑」とすら思っている。ネットの海で様々な掲示板を読んで過ごした時期もある。

 そこで僕の性格はより大きく歪んだと言っても良い。様々な意見、悪意、論理、善意、主張、押し付け、嘘、真実などなど。

 人の濃い部分を人との生のコミュニケーションでは無く、こうしたネットの中だけの「発言」や「言葉」だけで受けていった僕は中身の無いスカスカな人間だ。それを自覚している。


「お?終わったな。情報だと最近になって大型アップデートが入ったって言うし。遊戯人口もまだまだ増加傾向って、結構なモンスター人気だよね。まあそれに今更僕は参戦するんだけどさ。」


 そのゲームは「ブレイバーズ・シャイニング・オンライン」だ。色々とコレを遊ぶ前に事前情報はある程度を仕入れてある。

 そして僕はここで自らをさらけ出す事を決心していた。

 覚悟と共に僕はヘッドギアを被って専用ベッドに横たわる。この寝心地がまた何とも言えないフィット感でむず痒ささえ覚えるくらいだ。

 この専用ベッドはプレイヤーの体型にぴったりとフィットするようにオート調整機能が付いているのだ。

 長時間これでゲームをしていても疲れが体内に残りにくいと言う最新式である。


「さて、起動!」


 意を決して僕はこの新たな世界に飛び込む。ずっと今までソロでやれるゲームばかり遊んでいた僕がこの世界で果たして他人とのコミュニケーションをしっかりと取って行けるのかどうか。

 いわゆるコミュ障、僕はずっと人との関りを絶ち過ぎていた。だからこそ、このゲームでもソロでの活動になるかもしれないと言う覚悟も持っている。


「さて、最初はジョブを決めるんだったか。けど、知ってるんだ。・・・僕はランダムで行く!」


 何も確認しない。即座に僕はランダムを選んだ。どんな職業だって使いこなして見せる自信が僕にはある。

 これまで多くのゲームに没頭して現実逃避してきた僕に掛かればどんなモノでも受け入れられる。

 ルーレットがずっと僕の目の前で回っているが、人の動体視力では狙ってジョブを選べない位に回転速度が速い。もはや文字の残像ですら目に残らない程だ。


「心を鎮めるんだ。何も考えないでストップボタンを押す。そう、ここでどんなジョブでも受け止めるともう決めているんだ。なら無用な欲は要らない。」


 このランダムの中には強力なジョブが紛れ込んでいるというのは調べてある。だけどもその確率だって当たるはずが無いと言うくらいに低い事も。

 ならばソレを当てたいなどと言う思いはここでは馬鹿げた話だ。そんなモノは運であり、そして幻だ。


 一分ほど僕はずっとルーレット停止をせずにじっと待った。心が何も求めない境地にまで。

 そしてそのままゆっくりとボタンを押した。僕の目的はここじゃない。ジョブが決まった後のゲームの世界、その中に有る。

 そして僕は新しい自分になるために、僕のこの空っぽの中身を埋めるためにこの世界へと飛び込むのだ。


『ジョブが決定しました。ではプレイヤー様、心行くまでこの世界をお楽しみください。』


 人工音声の機械的なアナウンスが流れた後、僕は始まりの街に立っていた。

 そして直ぐに自分のランダムで決まったジョブが何なのかを確かめた。


「はぁ?何だ・・・コレ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これはダブル主人公?1の「俺」はこれでおわりじゃないよね?
[一言] うわぁ二号だー!www
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。