何で俺だけ「復活の時(一部)」
今俺は外に出ている。そう、あの玉座の間から出る事ができるようになれたのだ。
だがしかし、この領地内からは出られていない。今度は門が俺を通さない。と言うか、壁の上空を飛んで出て行こうにも見えない壁に塞がれて出られない。
「城の内部も、外で生活を営んでいる住人たちの事も直接見れるようになったし。それはそれで良い感じ、なんだけど。」
結局はまだ俺はフィールドを自由に走り回れる状態では無い。まだまだ神の封印は俺を縛り付けている。
このゲーム世界を見て回る事は未だにできてはいないのだ。それでも今は大きな一歩を踏み出せた事で喜びを噛み締めている。
何せ壁の内側になら何処でも行けるようになった。多くの種族が住む住居区にも、鉱石を掘っている鉱山にも立ち入る事ができるようになったのだから。
「あの部屋の中からこうして出られるようになったのは偶然だけど。じゃあこの敷地内から外に出るのにも条件が要るって事だろうし?これからはそこら辺も探って行かなきゃいけないかなぁ?」
鍛冶場を覗いてドワーフたちの仕事ぶりに圧倒されたり、畑仕事に精を出す獣人たちを見に行ったりと、俺は今もの凄く充実している。
錬金術の授業が少しづつ始まっているのを見学、銀狐族の魔道具製作所となっている場所に行ってどんな効果の道具があるのかなど聞いたりする。
自分が今まで以上に細やかな部分にまで手が出せるようになったと思うともっと発展させたいと強く思うようになった。
「だけど、プレイヤーから得られたポイントを注ぎ込むのは無しだな。独自の開発やら失敗成功を重ねてちゃんと仕事に携わるNPCの成長を見守りたい。」
散々今までは玉座の間から生産関連にポイントを注ぎ込んでいたクセに、この様なセリフは「何を言ってんだテメエ?」と突っ込みを入れられてしまう所だが。
現場を知らない事務所役員と言う立場から抜け出したみたいなものだ。無茶ぶりをこれからは言わずに実際に仕事に従事している者と話し合いをした上でこれからは物事を決めていく事へシフトするのだ。
地に足着いた計画を出さねば只々頓挫してしまうだけである。もうこれからは俺もこうして現場をしっかりと知る事ができる。
リアル寄りで自由度の高いゲームである。ポイントで何でもカンでもポチッとなのボタン一つの簡単操作で終わらせるのが勿体無く感じる。
進捗状況などを確認してようやっとできた、みたいな経緯があった方が出来上がった時の喜びもひとしおだろう。ボタン一つ、ポイントを只注ぎ込むだけでハイ終わりだと味気無い。
今までは玉座の間と言う何ら面白みの無い部屋に閉じ込められていたからそれで「ハイ終わり」でよかった。だけども今はこうして限定的ではあるが、こうして出歩く事ができるようになったのだから遊び方も変えていきたい。
「まあ、ぶっちゃけポイントはこれからは封印完全解除の為に貯めておきたいって所が本音だな。」
俺が回って顔を見せた各部署の人員たちはいきなり現れた俺に驚いていた。どうやら「魔王」などと言う存在が直接視察に来るとは思いもよらなかったんだろう。
その時の誰もかれもの驚いた顔は俺を楽しませてくれている。
「さてはて、俺がフィールドに出られるようになるまでにはどれくらいかかるかね?」
俺はこうして玉座の間から出られた時の事を思い出してそうぼやいた。
=== === ===
玉座の間に広がった青白い小さな光の粒。それらはずっと停滞したままで一向に消える気配が無い状態で待つ事その後20秒くらいだったか。
『条件を満たしました。これにて封印の一部の解除を始めます』
と俺の目の前にそんなメッセージが出てきたのだ。これは俺にしか見えていなかったようで、ミャウちゃんはこの状況に冷静さを欠く事無く警戒心を落とさずに構えたままだった。
玉座の間を埋め尽くすほどのポイントの光はホンの僅かずつだが、玉座に吸われていっていた。
これに何事かと余計にミャウちゃんが緊張感を増す。そして俺を庇う様な位置に移動して構えを取る。
「あ、ミャウちゃん、大丈夫だよ。どうやら害は無いみたい。それよりもさ。どうやら封印が解けるらしいよ、一部だけらしいんだけど。」
その間にも光は一粒一粒、玉座に吸われ続けていた。一粒を吸収するのに時間はかなりかかっているのだが、しかしそれでも確実にポイントの光は玉座へと吸われていっていた。
そうして待つ事その後にまたも五分。その内にポイントが最初に有った量の五分の一程が残った状態でまた俺の目の前に新たなメッセージが出て来る。
『規定量を満たしました。座ってください』
どうやら封印解除のための数値は満たせたらしい。俺はこれにゆっくりと動き出して玉座に近付く。
その様子をミャウちゃんが自身の胸を押さえつつ注視してくる。どうやら一部とは言え封印が解ける時に同席出来た事で嬉しいやら、興奮やら、と言った所なんだろう。ミャウちゃんは顔を紅潮させていた。
俺が玉座に座るとかなり派手なエフェクト、青やら赤やら紫やら黒やらの電気が弾けた。
そこで俺は背中に違和感が出た事で立ち上がる。すると、ミャウちゃんが感動して涙声で漏らす。
「あぁ・・・魔王様のその御姿をこの目に映す事ができてこのミャウエル・・・もう死んでも構いません!」
「いや、死なれると俺が困るんだけど?これからも、えー?末永く宜しく?」
背中の違和感が何なのかを確認する前にミャウちゃんからのセリフを聞いてしまったので、先にそっちに反応して自分の背中に起きた事の確認よりもツッコミを入れたのだった。




