何で俺だけ「こいつの事をもっと知りたかったな」
そのまま斬られてやる気になれない。どうしてこんな性格になってしまったとかの背景が知りたかった。
しかしそれもどうやら聞けないらしい。ミャウちゃんがこのラーギッドの行動に「糸」で止めようとしたからだ。
だけどもラーギッドは「邪魔をするなと言っただろう?」と口にしただけで魔力をその身から放出して糸を弾き飛ばした。
そして俺へと斬り掛かっていた方向を変えて急ブレーキ、急カーブ。ミャウちゃんへとその矛先を変えてしまう。
攻撃を弾かれて態勢を崩されたミャウちゃんはその剣を避けれるだけの余裕は無かった。どうやら特殊な効果でもあったのか、ラーギッドの放出した魔力がミャウちゃんへと絡みついて動きを制限していたようだった。
「死ぬが良い。大人しくしていれば俺の部下にしてやったものを。」
そんな言葉と共にラーギッドは剣を振るうが、それは空を切る。何故なら俺がミャウちゃんを助けたからだ。
「こう言った展開は以前からあるんだよなあ。それを俺が目の前にして、こうして当事者になるとか?ありえねーと思ってた、一生。」
俺はこうして椅子から立ち上がって動き出せば、その瞬発力は化物である。俺が本気で全力を出そうと思えば、こうして目にも止まらぬ早業で行動が可能なのだ。
腕の中にミャウちゃんを抱いてそのままラーギッドから距離を大きく取る。貴重な体験である。
「ちっ!鬱陶しい。実に鬱陶しい。雑魚がドイツもコイツも。そして貴様もだ。弱い奴らが出しゃばる、そして、そんな弱者を庇う馬鹿。話にならん。そのまま一緒に地獄に落ちろ。」
間髪入れずにラーギッドがこちらにまた飛び込んでくる。もう俺もこうなると手を出さないで様子見、ラーギッドの事をもっと知ろうと言う事もできなくなる。
何せミャウちゃんが攻撃された。しかも殺されそうだった事もある。これ以上はこいつに構っている時間を取るのは危険が増すだけだ。余計な被害が出る前にラーギッドを止めなくてはならない。
(だけど、この「魔王」でどれくらいの力を出せばこいつを戦闘不能にできる?殺したくは、なるべくならしたくない。なんて事はもう今更言ってられる状況じゃ無いからなあ)
またしても俺へと向かってくるその魔力で作られた剣。それを俺は大きくまた飛んで避ける。
抱えているミャウちゃんを部屋から放り投げる様に、開いていた扉の隙間から廊下へと避難させてから扉を完全に俺は閉めた。
その時にミャウちゃんが非常に残念そうな「あァ・・・」と言った声を漏らしていた。きっと俺の護衛すら満足にできないで邪魔扱いされた、脚を引っ張ってしまったといった事が悔しくてたまらないんだろうと俺はその声を解釈しておく。
「とまあ、本当になんだろ?この剣に触れちゃいけない、って感じるのは?」
ラーギッドの作り出したその剣は俺に向かって何度も振られるのだが、それを簡単には食らわない俺。
そして何だかその剣にイヤな感じを俺は受けていて余計にラーギッドの攻撃を避ける。この剣、俺の肌をチリチリと焼いて来ている気がするのだ。
「おのれちょこまかと面倒な!おおおおおおお!」
その剣へと込める魔力を大幅に増やしたのか、ラーギッドが気合を入れ直すとその剣は二回り程もその大きさを増大させる。
「俺はしょっちゅうミャウちゃんと戦闘訓練してたからなあ。素人の動きじゃ、無いんだよねえ。」
ラーギッドは修羅場を潜った場数が少ない。それが俺にもよーく今、実感できていた。
俺はミャウちゃんとしていた日課の訓練でかなりの回数の背中を「ヒヤリ」とさせられる攻撃を毎度の事に受けていた。
もちろんミャウちゃんが寸止めしてくれていたので実際にまともに食らった訳じゃ無い。
だけどもそうして食らわない事もまた重要だと俺はその内に認識した。実際に食らったら衝撃を受けるだけ。
しかし寸止めだと目の前に「攻撃」をまじまじと見せつけられる。そう、危機意識、危険感知がこうすると余計に引き出されるのだ。
もしコレが当たっていたら?そう思うと「ヒエッ」としてより一層に訓練に身が入った。そしてソレを食らわない様にする為には?と思考を回転させる訓練にもなった。
「そんな事を繰り返していたらコイツ程度の動きだと、ねぇ?」
ここはゲームの世界で、そして俺の身体は規格外の「魔王」である。ゲーム内では誰しもが認めるハイスペック。
しかし中身が伴わなければソレは雑魚と変わらない。じゃあその中身の「人」の意識を変えればどうなるか?
「武器の大きさが増えた所でそんなモノを躱すのにそこまで警戒心を上げはしないでも済むよな。」




