何で俺だけ「残念な奴は」
「決まり切った事を。下らん!神の先兵共を殺し尽くし!人種を一人残らず滅し!この世界に魔族のみ生きる世界を構築する!そして俺の気に入った者だけを残すのだ。俺の気に障った者は要らん。俺の理想の世界に必要無い下らぬ連中は皆殺しだ!この世界は魔族の!俺の物だ!逆らう奴は捻り潰してくれる。この世の全てが俺へと跪くのだ。俺がこの世界の王だ!神だ!」
残念だった。修正の効かないくらいの壊れっぷり。自分を何処までも勘違いしている者の発言だこれは。
「はぁ~。俺がもしプレイヤーとしてこのゲームを遊んでいたら、こいつとどう言った遭遇をしたのかな?どう言う風に対応したかな?もしかしたら俺が居なければ本当はこいつが「魔王」になる予定だったとか?」
俺は小声でぼやく。もうどうしようもない事を。そんなどうなったかを確かめる術は無い事象に思いを馳せつつも、今をちゃんと受け入れなければならない。
既にこうしてラーギッドは何処をどう間違えたのか、ここにカチコミしてきてしまったのだから。
ここで玉座の間に入って来る者が一人。ミャウちゃんだった。
そこで俺の事を「魔王様」と呼びそうになっていたので俺は人差し指を唇に当てて「しーっ」と止める。
コレが間に合ってミャウちゃんは「魔!」の所で止まってくれた。
「今まで誰もここに来ない事がおかしかった。どうやら多少はやるようだが、俺の相手では無いらしいな?しかし、邪魔をするなら貴様から殺すぞ。」
ラーギッドはミャウちゃんにそんなセリフをぶつける。これに俺は首を横に振る。
誰に対してのジェスチャーかと言うと、ミャウちゃんへのである。俺はこれに「手は出さないで欲しい」と言う気持ちを込めている。
ミャウちゃんの顔がめちゃんこ怒り状態だったからだ。即座にラーギッドを攻撃して殺そうと言う気持ちが溢れかえっていた。
「ミャウちゃん、抑えて抑えて。別に俺は傷一つ負って無いから、ね?さて、ラーギッド、だったよな。俺の配下にならないか?」
一応は聞いておいた。せっかくだからこのまま処分をしてしまうのはどうかと思って。
でも、駄目だった。どうやらここでラーギッドは片付けてしまわないといけないらしい。
俺の求めを聞いた後すぐ、ラーギッドの身体中から紫の魔力?がどんどんと溢れて来ていたからだ。
どうやらかなり今の求めに怒りを感じた様子だ。怒りっぽい、器、小っちゃい。
「配下?配下だと?何故俺が貴様などの下につかねばならん?俺よりも貴様の方が強いと言いたいのか?何処まで俺を侮辱すれば気が済む?」
確かにラーギッドは強いんだろう。ここに単独でやって来て、ミャウちゃんたちが鍛えた精鋭たちが束になっても敵わない。
ゲブガルの魔力障壁を破り、マイちゃんの魔法攻撃を受けてもピンピンしている。
ミャウちゃんを見てそこそこ強い、などと断じて、しかし自分の相手にはならないとまで言い切った。
自分の強さに自信を持つのは良い。実際にその自信に見合うだけの強さも持っているんだろう。
だけど、何で俺を目の前にして、こうして幾度もやり取りをして、気付かないのか?俺を「魔王」だと。
鈍いにも程があるし、自身の攻撃が通らない事も何かの間違いだとでも言わんばかりの様子は何処までも滑稽だった。
自らをこの世界の王だと、神だと言っておいて、だがしかし到底その器では無い、ラーギッドは。
ラーギッドは自らの腕に魔力を集中させたのか、紫の揺らめく魔力が形を作り、どうやら物質化した。そこには美しい煌めきを放つシンプルな意匠の剣が。
ソレを手に無言で斬り掛かって来るラーギッド。その顔は「終わりだ」と言いたげに歪んでいた。




