何で俺だけ「自分の信じたい世界だけを見る」
「効いていないだと!?・・・どうやら貴様も俺と同じく神の先兵を殺せば力を得られる手段を持っているか。そして、俺と同格までに強さを上げてある・・・ならばここで貴様を殺せば俺に敵う者など一人も居なくなると言う事だ。ここでケリをつけてやる。その椅子に座るのは俺が相応しいんだ!俺にとって邪魔者はお前だけ、死ね!」
三回目の攻撃もやはり魔法での攻撃なのだが、いかんせん何度も同じ攻撃をされてもダメージがこちらに無い。
二回目よりも魔法に込める威力を上げる為なのか、三回目は非常に溜めが長かった。でも、これにも俺はダメージを食らわないのだからしょうがない。
それとここで分かった事がある。ラーギッドは俺の事を「魔族」と勘違いしている。俺が魔王だと言う事を完全に解っていない。
コイツにはきっと俺が誰でも、どうだっていいのだ。殺しさえすれば何もかも関係無い、そんな感じである。
(おいおい、どう言う事だ?いや、ハグレで活動していたこいつは「魔王復活」ってのを分からなかったとか?)
なんにせよ、このラーギッドは俺を殺してこの城の主となる気だ。そして魔族たちを自身の力でねじ伏せて従えるつもりらしい、本気で。
「なかなかやるではないか。俺の攻撃を無傷で防ぐとは。ふん!名前を聞いておいてやろう。殺した後では知ろうにも遅いからな。」
コイツは何処まで鈍いのか?アホなのか?俺はちょっと悩む。三回も直撃して無傷だった事をこいつは俺が何かしらの方法で防いだからだと認識している。
そしてまだ自分が上だと、強いんだといった主張をして俺を見下してくる。その精神の基となる根拠は何処にあるのだろうか?
いい加減自分が対している存在に疑問を持って欲しい所だ。
「名前・・・?ああ、名前ね。どうしようかなあ?確かに俺には今まで名前が無かったなあ。」
「ふざけた奴め。もう良い。さっきから座ったままでこちらを見下していて不愉快だ。下賤な貴様などに高貴な俺が直接攻撃と言うのは嫌になるが、この手で直に貴様の心の臓を握り潰してやる。」
俺は名前を聞かれたが、確かに「魔王」とだけ言われて名前なんて決めていない。だけどもこうなるとこの封印されていた魔王の以前のちゃんとした「名前」が気になってくる。
神に封印された存在だと言うのであれば、それだけビッグネームだ。名前がちゃんとあったはずなのだ。何か古代の資料か何かにその名前が無いかどうか調べたくなった。
だがここで今度は接近戦だと言ってきたラーギッドが腰だめに拳を構えて、その直後に俺へと突っ込んできた。一足飛びで。
伸ばされた腕はそのまま俺の鳩尾を狙って来ている。指先がピンと伸びてその爪はナイフの先の様に鋭い。
これで俺の身体を貫いてやろうと言う魂胆であるらしい。
「そんなに座りたいならほら、座れば?」
俺はラーギッドの攻撃が触れる前に玉座から飛び上がってその場から退く。
ガキン、と言った金属同士がぶつかった音がその後に響いた。それはラーギッドの爪が玉座の背もたれに衝突した音だ。
あれほど鋭い爪だ。そしてこの音。玉座に傷の一つでも付いたかな?と思ったら無傷だった。逆に寧ろラーギッドの方が痛みを我慢しているくらいである。玉座、頑強。
「ぐっ!舐めた真似をぉ!」
振り向きざま直ぐに俺へとまたしてもその腕を振ってくるラーギッド。
(あー、前に報告を受けたアレの中身が良く分かる)
ラーギッドは自分よりも強い者と戦った経験がほぼ無いのだったか。プライドだけ肥大して、自分よりも弱いプレイヤー相手に経験値稼ぎでレベル上げ。
ウチの軍の一人と戦って負けて、そのせいで肥大したプライドが歪みに歪んで何事も冷静に見れなくなってしまったと。
どうやら魔力だけはかなりの量を持っているようで、それで放つ魔法の威力も相当なようだ。ラーギッドの自信はそこから来るのかもしれない。ゲブガルの障壁を破ったと言っていた。ヤバい攻撃力であるはずのソレは何故か俺には通じなかったが。
「哀れだな。」
俺の口からはポツリとそんな言葉が漏れた。こうも接近戦が拙いと、俺もワザと食らおうと言う気すら失せる。
そして魔法も俺に効かないとなればラーギッドが可哀想に見えてくる。
ここで俺は気分を少し変えようと思った。このラーギッドをどうにかウチの軍門に下らせる事ができないかな?と考えながら。
「なあ?お前は魔王になって何がしたいんだ?」




