何で俺だけ「お客様、困ります」
俺はこれに一瞬だけ内心「誰?」となった。ラーギッド、と言えば。
「ああ、魔王?・・・え?ウチに攻めてきたの?マジで?単独?」
ここの城の正面の門は魔族には解放されている。だから、ラーギッドも一応は何ら問題無く入って来れるのだ。
プレイヤーは無理であるのでこうして防衛計画は他の場所をクローズアップしての会議だったのだが。
流石にこれを予想できた訳では無く、ゲブガルもマイちゃんも初動が遅れたらしい。
「ゲブガル様の障壁を即座に破壊、マイウエル様の魔法にもビクともしません!ミャウエル様は外に出ておられ戻って来るまでに時間が掛かります。ライドル様もバイゲル様も各自の防衛からは安易に動けません!このままでは此処に奴が!」
「あー、そんなに慌てないで。今足止めをしている魔族たちに死人や怪我人は?出て無い?なら直ぐに下がらせて。ここに魔王を来させていいよ。」
この「何ら問題無し」と言う俺の言葉にキリアスはあっけに取られてしまっている。
しかし次には表情を元に戻して小声で「こういう方だった・・・」と呟いている。
これにツッコミしたい所はヤマヤマだったのだが、俺は先にキリアスへと直ぐに命令を出す。
「各員に撤収の号令を出して。俺の命令で。ほら、早く!」
俺が魔王通信で一斉に命令を出せば早い話だったのだが、キリアスが動き出そうとしないのでそうせかす。
これに直ぐに敬礼をしてから走って部屋を出て行くキリアス。その際に開かれた扉の隙間から廊下で走り回っている魔族の姿が見えた。
(それにしても落ち着き過ぎかな俺?しかし何でまたここに攻めて来たんかね?あ、もしかしてパワーアップが完了して直接俺と対決を?)
ラーギッドがやって来た事の理由に思いを馳せる。だけど具体的な「コレ!」と言った予想は情報が少な過ぎて立てられない。
色々とアレか、これかと思考をしていると騒ぎは少しづつ治まって行っていた。どうやら俺が出した指示が行き届いたらしい。
走り回ったり、迎撃をしていた魔族たちが一斉に引いたんだろう。ラーギッドから。城に静寂が戻って来る。
ここで玉座の間が開いた。音も無くスーッと開いていく扉。そこに立っていたのは自分の事を魔王だと宣言した一人の魔族。
「その椅子に座るのは俺が相応しいんだ・・・消えろ。」
いきなりだが俺は攻撃を受けてしまった。魔法だ。ラーギッドの伸ばす右腕から紫のモヤが立ち上っており、一目でヤバいと言うのがすぐにわかった。いきなり初見でこれである。
一瞬の視界不良。それはラーギッドが俺の顔面目掛けて放ったその紫の光の魔力砲であった。
避ける事は不可能だろう。光の速さだ。光ったと思ったら俺へと迫っていて食らうしかない。いや、普通なら食らった事すら気付けずにプレイヤーなら一撃で沈む威力だ。
「何だろうか?ドライヤーの風を当てられた様な感覚?しかも温風の強って感じ?」
そんな感想を受ける俺。何とも無いままに気楽な様子で喋る俺の様子にラーギッドが目を見開く。
「何故死んでいない!?そうか!俺は無意識に威力を落としていたのか。ならば食らえ。跡形も無く消し飛ばしてやろう。」
そもそもラーギッドは俺の事を認識できているのだろうか?自分が魔王だと名乗っているから、玉座に座っている俺を只ただ許せ無いといっただけで、もしかしたら俺を「魔王」として認識していないかもしれない?
ラーギッドの魔法に対しそもそも俺は何もしていない。直撃だ。防ごうともしていない。
だけどもこの魔王の身体は何ら傷一つ無い。この事をラーギッドは見えていないのだろうか?
(暴れ回ってどうやらプレイヤーからポイント稼いで大分自身の強化をしている、って言うのは知ってるけどさ?)
この攻撃によって俺は「魔王」の強さを改めて量ろうとした。基準を作ろうと思った。だけども無傷では意味が無い。
強化された魔族の攻撃が魔王に傷一つ付けられないというのは流石に無いだろうに。掠り傷くらいは、或いはダメージ「1」くらいは最低でも、などと考えていたのだが。
「まだまだ考えが甘いのかなあ?それにしたって、そうなっちゃうと、プレイヤーが魔王を打倒するのって完全な無理ゲーになるでしょうに?やっぱ「光の力」で試してみない事には予測も計測もできないねぇ。」
だからと言ってその「光の力」をワザと食らうというのは勘弁しておきたい所なのだ。一応は光関係の魔法であると魔族特攻になるっぽいが。魔王にも通じるかどうかは、ちょっと微妙だ。
「光の力」の攻撃効果が魔王特攻で、しかも急所に刺さると一撃で、などになってしまうとそれだけで俺は殺されかねない。
で、二撃目の魔法はより一層の力を込めてラーギッドは発動したようなのだが、やはりこれも俺には全く効かなかった。




