何で俺だけ「踏まれ続けて」
既に遠くから迫って来るその存在に気づき、そしてその背後の大量の魔物が上げる砂埃を警戒していたパーティは最大の攻撃を放てるように既に準備は終わっていた。
接近してくるその対象がこちらの態勢が整っていないと思わせるため、そう見える様にワザと装っていた。
「MPKなんてこのゲームじゃ滅茶苦茶珍しい事するなー。」
「PKするだけでも旨味が無いゲームだしね。そりゃ愉快犯以外にこんな危険なアホをする奴は居ないだろ。」
「で、その愉快犯は今俺たちの攻撃圏内に入ったけど、どうする?」
「もうこれなら広範囲攻撃から逃げられる手立ても無さそうだし、そのまま巻き込んで後ろのモンス共々お亡くなりになって貰えばイイよ。」
「だな。一纏めで多めにモンスも潰しておきたいし、ちょっと慌てた様な演技しておこう。」
「あ、もうちょっと引き付けるのね。でも、慌てた様な演技って、今やり辛い。」
全員がこれに苦笑い。そして振り向きざまに一斉に全員が広い範囲を攻撃できるスキルを発動させる。
「お前らやる気あり過ぎ。」
そんな事を言って笑うパーティリーダー。その言葉の次にはバスケットボール位の大きさの火球が放たれていた。
「不運」はここでも発動する。MPKをして全力疾走のそのプレイヤーへと「直撃」をしないでそのすぐ横にソレは着弾したのだ。
ソレは巨大な爆発を起こして周囲を派手に吹っ飛ばす。そしてソレを受けてギリギリ死なないプレイヤー。
これもまさに「不運」である。死亡判定を一瞬で受けて何ら苦しまずにリスポーンとなるのは幸運だろう、この時ばかりは。
そのプレイヤーは生き残ってしまったばかりに、ここで苦痛を受け続ける羽目になった。
次に放たれたのは雷の魔法。天から轟音と共に青白い光の筋が降って来る。雷、それを人の動体視力で視認できる訳が無い。避けられる訳が無かった。吹き飛ばされてその衝撃でフラフラと立ち上がっている最中だったのだから。
これにまたしても「直撃」しなかった。これは本来なら運が良いと言えるだろう。しかしその余波が地を伝ってプレイヤーは今度は全身が痺れて麻痺を起こし、行動不能になる。
今の場合は直撃してリスポーンした方が彼にとっての幸運だったのだが、それはもう叶う事は無い。
この二つの魔法だけでモンスタートレインで引き連れて来ていた魔物は三分の一が減った。
プレイヤーパーティは先ずこのMPKを起こした者を狙い魔法を撃ち込んだので魔物への被害は考えなかったのだ。
広範囲攻撃だからそのまま魔物の数も大体は減るだろうと。雑魚なんてこの魔法二つで大概は倒せる。
だから残った。まだ数は多い。けれどもその残りの走って来る勢いがこれで削がれたかと言うと、そんな事は無かった。
麻痺をして地面に突っ伏しているプレイヤーなど目に入らないとばかりに踏みつけてそのまま進み続ける。
こうなれば踏まれているプレイヤーは「不運」だ。一気に死亡判定にまで行かないチマチマとしたこの魔物の「踏みつけ」と言う攻撃を受け続ける事になる。
「うげっ!おごぉ!?ぺぶらっ!でででででっ?ひげぶっフっぅ!?」
踏まれ続け、踏まれ続け、自らの体力が無くなりかける。しかしまだ麻痺が治らずに動けない。
踏みつぶし続けつつ、魔物はパーティへと迫る。これを次は剣士のジョブのプレイヤーが迎撃する。
「ゾロゾロ群れて鬱陶しいぜ?おらよぉ!」
剣を横薙ぎに振るうと、そこから赤いエフェクトが三日月の形になり飛んで行く。それに触れた魔物は次々に光と消えていく。
これでもまだ魔物を全滅をさせるまでには行かなかった。その間に迫るまだ生き残りの後続は立ち上がる事がまだできていない痺れたままのプレイヤーを踏み続けて行進を止めない。
そのモンスタートレインがやっと終わった頃には、既にソレを起こした張本人の体力は「1」と化していた。
「止めは誰がやる?って言うか、コイツどれだけ間抜けなんだよ。」
まだ奇跡的に生き残っていた地面にうつ伏せで倒れたままに痙攣をしているプレイヤーを見下すパーティ。
これに言い返す事すらできずに瀕死状態で動けないなりにも抗議をしようと不運なプレイヤーは顔を上げるのだが。
その目の前に非常に小さい蛇型のモンスターが草の陰から現れる。そしてその小さい小さい尻尾で鼻先をペチリ、と叩かれた。
その攻撃のダメージはちょうど「1」。これに光と消えていくプレイヤー。
「何だったんだ?アイツ?何がしたかったんだ?」
自分たちが止めをささずに勝手に消えていくそのプレイヤーを見つめてパーティの者たちは首を傾げる。
蛇の魔物は彼らの視界に入っておらず、そして光が完全に消えて無くなった時にはその蛇はもう何処かに去って行った後だった。
パーティの彼らには勝手にそのプレイヤーが死亡したとしか見えておらず、最後には「何アイツ?」と言う感想を与える別れとなったのだった。




