何で俺だけ「不運はこんな所にも影響を出している」
ここはゲームの世界だ。そして「運」とはゲームサーバーの中で計算される「確率」である。
このプレイヤーの受けた呪いはその「確率」なのだ。そう、これは現実の中で起こる「運」なのではなく、あくまでもゲームの中の「確率」として現出する。
呪いを受けたプレイヤーへと「確率」が集約され、意図的に「不運」が生み出されている。それも確実にプレイヤーがソレを必ず受けてしまうように計算されて。
スーパーコンピューターがメインでのサーバーとなっているのでこのくらいの事は朝飯前である。
しかしコレに騒ぐのは運営側の、それも保全を担当している者たちだ。
この様な事が起きた事で彼らは「あり得ない」と叫ぶのである。
「おい!何でこんな計算式がログに!?」
「こっちもある!だけど!何処にもバグは無いぞ?!」
「嘘やん・・・コレ、仕様だぞ?ズレは一切無いし、一瞬だけ負担が大きくなるけど、余裕は残ってる・・・」
「ソレは一安心・・・じゃねえ!だから!こんな計算が出る様な事を誰がやったんだって話がだなぁ!?」
「おーい、調べて来たぞー。関係各所に異常数値が導き出された前後に何か無かったかログを虱潰しにして貰って来た。で、結論。手を出すな、だ。」
部屋へと入って来た職員がそう言った瞬間に騒ぎは一瞬で静寂に変わる。もう出た結論に既に心当たりがあるからだ。
そう、魔王関連である。魔王が係わっている事に関して一切の手出しはするなと命令が出ているくらいなのだ。コレを聞いてしまうと誰もが口を閉じて黙るしかなかった。
そして次に彼らの口から出るのは深い溜息のみ。それが終わるとそれぞれの仕事に戻って行く。
「んだよ。魔王かよ。もう次からは何かあっても一々慌てるのが馬鹿らしいな。」
「そうだよなあ。今回もかよ、ってなるし?いい加減俺たちも慣れて行かないと胃が持たないんじゃね?」
「俺もう胃薬、しかもドラッグストアで買えるようなのじゃ無くて医者に通ってるんだけど?」
「諦めたら楽になるのかなぁ・・・誰か教えて、偉い人・・・」
「あー、しかもさ。このゲームの「呪い」があるじゃん?こんな時に追加情報でコレを言うのは何だけど、魔王が使った、プレイヤーに対して、呪いを。んで、これよ。」
追加でもたらされたその情報を耳にした後にまたスーパーコンピューターの負担が一瞬だけ上がる。小さく「ピー」と言う機械音が静けさの中に響く。
「呪い受けたプレイヤーは何をしたのかね?経緯までは聞かなかったけど、他の、ほら?ログを確認したり、警邏したりする部署あるでしょ?それと、アップデートとかの部署の人たちも皆で頭抱えてたんだよなぁー?」
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そんな「不運」を受け続けたプレイヤーの心が今折れかかっている。彼の今のレベルは「28」まで落ち込んでいた。
「どうせ最底辺まで落ちるんだったらもう覚悟してまた一からこのゲームを楽しめばいいよな?はは・・・後悔先に立たず?めちゃんこ今俺はソレを実感してるよ!」
今の彼は始まりの街からかなり遠い場所を全力疾走していた。そんな彼の背後には一角ウサギの大群が居た。
追いかけられているのだ、このプレイヤーは。モンスタートレインと呼ばれる現象を起こしていた。
「これ、プレイヤーへとけし掛けたら「MPK」になるんだよねー。もう自棄だよ。やってやろうか。」
こうしてワザと魔物を引き連れて他のプレイヤーへとひっかけて被害を出す行為は迷惑行為である。コレを利用してプレイヤーをキルすると言った者も存在する。
今このプレイヤーは自暴自棄になってそんな迷惑行為をしてやろうかと言う所まで精神が追い込まれていた。
自分が馬鹿をしたばっかりに、思慮が足りない行動を起こしたばかりに、今、この様な目に自分が合っているのだと。
どうせこのまま自分だけがこんな「呪い」でレベルが最低まで落とされてしまうくらいなら、とばっちりを食らわせてやる、他のプレイヤーに。そんな心境に変わってしまっていた。
それこそ、自分のこの「不運」と言う呪いを他者に擦り付けられないかとすら思っている。
「お?あそこに丁度良さそうなパーティが居るじゃないか・・・くらえやこらぁ!」
プレイヤーの暴走が何ら関係無いパーティへと迫る。




