何で俺だけ「口止めはほどほどにしておいた」
馬鹿と煙は高い所が好き、何て言う言葉がある。まあ実際に高い所が好きな人全部が「馬鹿」な訳では無いので語弊を生じやすいかもしれない。
しかし今俺の目の前に現れて、ゲブガルにこうしてまんまと拘束されているプレイヤーは確実にその「馬鹿」である。
俺は最初からそんな馬鹿に対して魔王口調で偉そうな喋り方をするのを思わず忘れてしまっていたのだが、もう遅いから良いだろう。
「では、始めさせていただきます。私もこの城の図書室で魔導書で読んだだけなので上手く行くかはやってみなければわからないのですが。」
マイちゃんが今この場に来ていた。それは何故かと言うと。
「呪いって何されるの!?コワい!勘弁してくれない?・・・逃げたい!けど!逃げれないィィィィィィい!」
ゲブガルに拘束されて身動きが一切取れないプレイヤーはその身を捩って必死に脱出しようとするが、それも無駄に終わっている。
「今回は私を通して魔王様が、このプレイヤーへと一方的な「契約」を結ぶと言った形ですね。コレを破ると・・・」
マイちゃんは「呪い」にかんする軽い説明を続ける。
曰く、一方的な「契約」であり、それを破った者へとペナルティが発生すると言うモノである。
「という訳で。アナタはこれから掛けられる約束を破ると大変な目に遭うので心してください。」
動けずにいるプレイヤーの周りにマイちゃんがどうにも魔法陣を描き始めた。
ここ最近のマイちゃんは図書室に通ってお勉強をしている。どうやら自分ができる事を増やしたいと言う思いからである様だ。
その熱心さは相当なもので、魔法に関連する書物は結構な量を読み終えているそうな。
そんな中で今、マイちゃんの一押しで興味があるのがこの「呪い」であるらしい。
コレは一方が無理矢理相手に押し付ける「契約」みたいな形を取っており、この魔法を掛けられてしまう相手の魔力値が高いと成功しずらいモノであるらしい。
本来の契約とはお互いに利のある、もしくは納得し合った内容を「力ある約束」として交わす事だ。
しかしコレが一方的に魔力の高いモノが相手に使えば分類が「呪い」としてカテゴリされるそうで。
「魔王様、こちらに書いた魔法陣へと魔力を流して頂けますか?そうですね・・・できるだけ強めにお願いします。」
俺は指定されたその魔法陣へと手を当てて魔力を「流し込む」と意識する。そうすると自分の中から何かがほんのりと引き出される感覚があった。
(どう言う判定してんだろうなー?とは言え、そんな内部データなんて遊んでる俺からしたらどうでも良い事か)
くだらない事を考えながらちょっと力んでみる。するとやはりどう言った判定なのかは分からないが、魔法陣が強く輝き始めた。コレはきっと魔力が多めに流し込まれたからなんだろうと一人納得する。
驚く事にその魔法陣からプレイヤーの姿がホログラムの様に透けた形で現れた。
「では、本日に貴方が体験した事を他のプレイヤーへと伝える事を禁じます。それを破った場合は力が一度最低値へと至るまで、不幸によってあなたは何度も死亡します。」
そう言ってマイちゃんが手のひらから赤い魔力を出してそのプレイヤーのホログラムへと触れた。
次には魔法陣と一緒にそのホログラムも赤い光を放って消える。
「え!?ちょっと!どうなってんのソレ!?しかも俺へのその怖い制限一体何!?何なの!?」
この演出にプレイヤーは盛大にビビった。そしてその中身にも。
「魔王様、どうやら成功したようです。それと宜しかったのですか?この様な条件で。」
「喋っちゃ駄目とか言うとさ?文字で伝えるかもしれないじゃん?で、何かと具体的な事を言わずともヒントを出して伝わっちゃう、勘づかれたりしたら駄目じゃん?だから「伝えちゃ駄目」なんだよ。どんな形であっても。それが破られたらそこでハイ終了、ってね。まあ、その内容も嫌がらせにしかなっていないと言えばなっていないんだけど。」
この俺の掛けた呪いは別に延々とそのペナルティが続く訳じゃ無い。一度レベル「1」になればこの呪いの効果は消えるようにしてあった。
どうせいつかはプレイヤーたちがここへと将来辿り着くだろうと。だけど今はまだこの城の中の情報は広まって欲しく無い。
何せ知ったらこれに興味を持ったこのプレイヤーと同じ「馬鹿」がここへと殺到してこないとも限らない。
「レベル「1」にはなりたくは無いよな?なら、コレを守っていれば大丈夫。他のプレイヤーと一切合切接触しなければ発動する可能性はゼロだから。コレで一安心だよ。お前が言ったとおりだろ?喋らない、他のプレイヤーと会わない。な?それにソロでやってるんだろ?なら、何ら問題は無いよな?」
「えー?コレは無いんじゃない?解呪できる方法無いかなー?後で調べてみないと駄目かぁ?」
このプレイヤー、結構まだまだ余裕が有るようだ。しかしだからと言って俺はこれ以上こいつを追い詰めようとは思っていない。なので仕上げだ。
「ゲブガル、俺が合図したらこいつの拘束を解いてくれ。それじゃあ・・・サン、ニイ、イチ・・・」
俺は思いきり構える。めちゃクソ勢い良く走り出します!みたいな構えを取る。
「え?何しようとしてるの!まさか俺をキルするの!?止めて!普通に帰らせて!?リスポーンで戻るのはイヤァぁァぁあ!」
俺は「ゼロ」と言った瞬間にダッシュする。そしてどこかのサッカー漫画の如くにプレイヤーを蹴り上げた。ボールは友達。
この「魔王」の攻撃力は激烈である。結構な力を入れてプレイヤーを蹴ったのでプレイヤーは吹き飛ばなかった。その場で綺麗な光と弾けて消える事になった。




