何で俺だけ「ここまで来た経緯とアホの所業」
「いやー、すげえ迫力魔王!この目で見ると滅茶苦茶イカツイその顔!あのめちゃクソ高い壁を越えてきて隠密使ってここまで来たかいがあったわー。城の中の観光もできたし!あ、そうだ!あの山登って山頂から景色を一望したいなあ。」
どうやら防衛線を隠密で通過。城の周囲にある絶壁を越えて侵入したようである。その後も隠れてここまで辿り着いたらしい。かなりのスニーク技術持ちであるこのプレイヤーは。
どこぞの有名なゲームの主人公、特殊工作員か!と思わずツッコミを入れたくなる。段ボール箱にでもその身を隠していたのか?と。
「あ、ゲブガル。良い所に来た。コイツ拘束してくれない?」
どうやらゲブガルが丁度何かの報告があったのか、玉座の間に現れてくれた。
「御意。と言いますか。こやつの件について報告をしに参ったのですが・・・」
どうやら一足遅れてウチの兵たちがこのプレイヤーの反応を捉えたらしい。ゲブガルはソレを受けて曲者が入って来たようだと俺に報告を上げに来たみたいだ。確かにここに入って来る時に少し慌てていた様子だった。
この場には俺の付き人をしてくれているキリアスは今は居ない。キリアスは別にずっとここに張り付き続けて俺の対応を任せられている訳では無い。今は休憩時間である。他にも勉強の時間も取っているし、休日も取っている。
俺が居ない間はキリアスも何らする事は無い。しかしだからと言って他にやる事はいくらでもある。
話が逸れたが、今はこの目の前のプレイヤーの処分に関してだ。
「おおおおおお!?動けねえ!?どう言うこった?これじゃあ城の内部の観光が続けられないじゃないか!」
「お前随分余裕だな?とは言えさ。そのアンタの見た、聞いた、体験した情報を他のプレイヤーに漏らされちゃうとねぇ?ほら、プレイヤーと魔王は敵対関係でしょ?みすみすこのまま放っておくわけにもいかないんだよ、分かるだろ?」
俺は素のままでこのプレイヤーへと語り掛ける。そして処理の仕方に頭を悩ませる。
「とは言えこのまま片付けてもリスポーンするだけで口封じにはならないからなあ。なんか良い方法無い?ゲブガル?」
「おいおい!ちょっと待てよ!俺は完全ソロでやってるし!誰にも今回の事は言う気無いから見逃してくれない!?」
プレイヤーはやっと自分の世界から脱して現実を見る。さっきまであれほどに興奮していたのに一気に気持ちが冷えたんだろう。
「俺は観光プレイがちエンジョイ勢だから!しかも一人旅派なの!他のプレイヤーに接触機会は少ないし!話したりもしないから!」
「いや、駄目だろ。そんな口約束だけじゃなくってちゃんと契約?みたいな形にしないと。アンタと俺の間にそもそも口約束で「はいオッケー」って感じの信頼なんてこれっぽっちも無いからね?初対面、これが。・・・そもそもさー?何でここに忍び込もうとしたの?そこが分からん。」
このプレイヤーは俺が魔王だと言うのにこの様な話し方をする事に何ら疑問を持たないのか、その動機を喋り出す。
ソレがこの場でキルされたくない一心だと思われる。レベルが下がったらきっと行きたい所があっても「強さ」と言う点で行けなくなる場所が増えるからと見える。
「いやー!だってさ?ついこの間有名になったでしょ?ここの周囲の森に集まった観光プレイヤーたちの殲滅が!ソレが俺、気になって気になって!俺まだその時さー、ここの城?そもそも門も見た事無かったの。それで一気に「行きたい!」ってなってさ!」
本当に俺はこのプレイヤーを本心から「本物の馬鹿だ」と思った。
「で、門の周辺じゃもしかしたら俺もやられちゃうかもしれなかったじゃん?だから他にもっと別の場所に観光に相応しい光景無いかなー?って。そしたら暫く外周歩いてみていくとさ、あるじゃん?めちゃクソあの馬鹿みたいな高い壁!」
馬鹿なのはお前だ、そう俺はツッコみたかったのだが、このプレイヤーの一人語りに耳を傾け続けた。頑張って。
「そこでよ?あれ?もしかしてこの壁上り切ったらその場所から眺める光景はめっっちゃ!良い景色なんじゃね?って思ったらいても経っても居られなくなってさー。」
心底馬鹿の考えである。行き当たりばったりの、思い付き行動。しかもこのプレイヤー、限度と言うのが無い様子。このプレイヤーの辞書に「思いとどまる」といった言葉が無いように感じる。
「で、登り切った!俺ってば山登りも好きだからクライミング技術も上げてあるのよ!それでとうとう登り切ったの!景色を一望さ!で、次にだよ?さあ降りよう、って思ったら登るよりも難しいのよコレが!で、どうせならこっちよ。そう、城がそこから良く見えてさー。あれは絶景だった!んで、どうせならこのまま内部に入って行ってまだ誰も見た事無い景色を見て行こうって考えたんだよねー。」
それで今ここに居ると言う訳だ。そしてこの玉座の間に何ら警戒心も無くちゃらんぽらんな頭で入って来て一人で興奮して、冷静さを欠いて、こうしてゲブガルに拘束されていると。
「駄目だ。心底のアホだコイツ。ゲブガル、良い案思い付いた?」
「・・・呪い、はどうでしょうか?」




