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何で俺だけ  作者: コンソン
「俺」
203/638

何で俺だけ「押しかけ女房?」

「で、何で君がここに居るのかね?シャール?」


 ライドルは少々の困惑と共にそうシンプルな質問をする。昨日のプレイヤーとの攻防から一日が立っての事だ。塔に一人の来客があった。


「私もこの塔で暮らす。魔王様から許可は頂いている。共にこの塔の防衛をします。不束者ですが、どうぞ宜しく。」


 ライドルは頭を抱える。しかし割り切った。シャールは「防衛」と口にしたのだ。共に戦う仲間だと。

 ライドルは以前にこのシャール、銀狐族との婚姻の話を魔王から振られていた。それを一旦保留、魔王が話を預かっている所だったはずである。


「ライドル様は私の将来の夫。ならばここで支える。アナタは私を見る。そして私もアナタを見る。お互いに理解を深めるのに丁度良い。」


 この理屈にライドルは再び頭を抱えそうになる。しかし踏ん張った。まだ魔王から話を「進める」と言った流れは受けていない。しかしこうして本人がぐいぐいと圧してきているのだ。上手く、そしてやんわりと躱すべく、一言咄嗟に吐き出す。


「分かった。言うなればここは戦場だ。互いの本心を知るのに丁度良いだろう。その力を貸して貰うとしよう。」


 共に戦場で助け合う仲間、そう何とか言ってその場を収めたライドルは周囲への監視の仕事に戻ろうとする。


「張り切る。掃除洗濯、炊事は任せて欲しい。後、錬金術も物作りもいける。新たにエルフから習った錬金術はこの森に有る素材を使えばもっといろんな回復薬を生み出せる。やるからには徹底的にやる。」


 シャールのこの発言に驚愕をするライドル。勘弁して欲しい、と。


「掃除洗濯は自分でする。俺以外の者たちの助けを頼む。」


 この様な子供、見た目だけだが、そんな相手に掃除洗濯の世話までされるのは流石に無い。そうライドルはシャールに言うのだが。


「遠慮はしないで良い。戦闘の方は脚を引っ張るから裏方仕事は完璧に熟す。早速一階から掃除を開始する。」


 そう言ってシャールは何処から出したのか、その手にはいつの間にか各種掃除道具が。

 ライドルはシャールのこの意気を止められる、抑えられる気がしなかった。


「・・・ほどほどにしておいてくれ。」


 絞り出せたのはそんな一言だけだった。


 ====  =====  =====


 時は遡り、魔王がライドルへと増援を出したその後の事。玉座の間に客が舞い込んでいた。シャールである。


「魔王様、私をライドル様の所に行かせて欲しい。戦場での覚悟もある。ライドル様の危機に側にいて助けとなりたい。許可を。」


「・・・あれー?そんな熱量のあるキャラなのー?ギャップがあり過ぎないかな?まあ、うーん?そうだなあ・・・良いんじゃないか?あ、でも行っても足手纏いとかになるとあっちの負担にしかならないんだけど?」


「大丈夫。エルフから教わった錬金術で様々な薬を作れるようになった。まだまだ未熟かもしれない。だけど、役に立つ。立って見せる。」


 エルフが来てまだ錬金術の方は生徒募集の前に実験として銀狐族が教わって、そして実践してみると言う事になっていた。

 そして短い間ながらもシャールはどうやら多くの薬品の製造を成功しているそうで、結構優秀であるようだ。

 その後はアレができる、コレができるとアピールされた。

 俺は「良いんじゃないか?」と言ったはずだ。しかしその後に「負担にならない?」と付け加えてしまった事で俺がシャールを戦力外として見なしていると勘違いされてしまったようだ。

 そこで彼女は今必死に俺にアピールしていると。自分が塔に行く事で様々なメリットがあるよ、と。


「あー、分かった。その熱意は非常に強い力になるかもね。まあ、ライドルとの縁談話もあった事だしね。それも同時にこの際進められたらいいか?でもライドル本人は微妙な気持ちになるだろうけどなー。」


 シャールは婚姻の件にやる気満々?なのだが、ライドルは逆に「ちょっと待って」と言って困惑している。それで俺は「まあ、状況が落ち着くまでは」と言ってその話を預かっていた。

 だけどいつまで経てばこの「魔王軍」に落ち着きが訪れるのかは定かじゃない。なのでもう進めちゃっても構わないかなどうせ?などと言った無責任な事を俺は思い始めていた。


「よし!それじゃあシャールをMAXパワーアップだ!もうしゃらくせえ!上げときゃどうにかなるだろ!何とかなるだろ!んじゃま!ぽちっとな!」


 俺はもう次々に来るあれもこれもにテンションが少々おかしくなっていた。そしてコレである。


「・・・力が、漲る・・・?これ程の力を魔王様が、私に?」


「パワーアップした?ならソレをどう使うかはシャールの自由にして良いよ。取り敢えず塔に行っても良し!塔の防衛をより強固にするんだったら戦力はいくらでも注ぎ込もう。ライドルの危険もコレでかなり少なくできるだろうしね。」


 ライドルの所にプレイヤーが攻めこんできた事に俺は大分危機感を覚えていた。

 既にこのゲームはレベルキャップが解放されてカンストを始めているプレイヤーが多い。

 だからちゃんとそこら辺のケアもこれから考えて行かないとならないのだ。「光の力」を使うプレイヤーも現れた事だ。


「命大事にで逃げるように指示していたとしても、逃げる際に退路を塞がれるとか、もしかしたら追撃を食らってやられる可能性もあるからな。死んで欲しくは無い。そう、なるべくなら。」


 俺は深く俺へと一礼して部屋を出るシャールを見送りながらそう呟いた。

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