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二回目の異世界転移ですが実質ニート  作者: 君影想
第二章 死を呼ぶ宴
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15/15

2-5

「なんか変な気配するものとかあります?私はさっぱりわからないんですけど。」


 現在、私はデミアンさんとこのソルト城を探検中である。色々探し回ってみたはいいものの…なんの気配もないし、特におかしな点もない。石造りのこのお城は質素ではありながらも、手入れがしっかりと行き届いていて、外から見た時の恐怖感は案外内側から見てみるとない。近所で銃持って歩いてるグラサンの人見かけてやべぇと思ってお巡りさん呼んだら、プラモデルの銃持ち歩いてるだけの少し…かなり変わってるだけのおじさんだったし、やっぱ見た目で決めつけるのってよくないね。

 

「全く。本当にここで人なんぞ死んでいるのか?」


 やっぱり?本当になんの変な気配もないよね。あの噂は一体全体どうしてしまったのだろう。


「あ、こんにちは。カヤコさんにデミアンさん。」


 二人でただ城の中をウロウロしていると、先ほど私たちを案内してくれたチャールズくんが素晴らしい笑顔で話しかけてくれた。ティーセットを持ってるので給仕中なのかもしれない。


「こんにちは。そちらは給仕中か?」

「ええ。クリスさまがお茶を飲みたいとおっしゃられて、お部屋にお運びする途中なんです。」

「クリスさん?」

「はい。今晩のパーティーのお客様の一人です。」


 他の客人の名前はクリスさん、と。覚えておこう。


「へぇ。今夜のお客様は何人いらっしゃるんですか?」

「クリスさまとジェイミーさん…あとはジェイミーさんのお連れの御三方だけですよ。」


 …少な。今晩このお城に泊まる部外者は私たち四人とクリスさんだけということか。というか、パーティーにしては人が少なすぎないか?それともやっぱり、来た人は死ぬからってことで一応遠慮して人数絞っているのだろうか。いや、なんだそのわけのわからん遠慮は。


「あ、すみません。そろそろこれをお部屋にもっていかないと。」

「ああ、引き留めてしまってすみません。お仕事頑張ってくださいね。」


 軽く声をかけると、チャールズくんはにこっと愛嬌のある笑顔を残してさ…らずに足を止めてこちらを振り返った。


「そうだ!このあと、僕はお仕事あんまりないので一緒にお茶でもしませんか?お互いのお仕事の話とか、お茶を飲みつつぜひ。」


 お茶か…。デミアンさんと顔を見合わせる。…デミアンさんは首を横に振っているが、うん、よし。受けよう。彼からなにか情報を手に入れられたらラッキーだ。正直、このままお城をグルグルしていてもなんの情報も手に入れられる気がしない。


「ぜひ。」

「よかった!僕、他のお家のこういうお仕事の人と話してみたかったんです!…あ、じゃあ、ちょっとここで待っててください!すぐ戻りますね!」


 これまでの整った笑顔とは少し違う、年相応な少年らしい無邪気な笑顔を零した彼は、お茶零れない?と思うほどのスピードで石畳の床をかけていった。


「…洗われる。」


 いい笑顔だ…。仏頂面かビビり顏しかしないデミアンさんか、無邪気は無邪気だけどサイコな笑い方しかしないクロムさんしかここのところ見てない私から見ると、もう彼の笑顔は天使の笑みだ。


「…どうするつもりだ君。」

「はい?」

「僕たちにこの仕事のなにが語れるというんだ…。」

「…あ。」


 そういえばそうだ。さっきのチャールズくんの口ぶりだと、絶対このお茶会の話題は仕事のことだろう。私たち、新参というか偽メイドに偽執事なんだけどどうしよう。


「…ま、まぁ新人ということで誤魔化していきましょう…。あとは、なるべく違うことに話題を…。」

「…それぐらいしかないな。」


 肩をすくませたデミアンさんは壁にもたれかかり、こちらを見つめる。

 私が見てるから見るのかなと思って一回視線を逸らしてみても、視線を戻すとやっぱりこちらを見つめている。


「…なんですか?」

「もう少し慎重に行動すべきなんじゃないのか?」

「十分慎重だと思ってますけど。」

「一緒に茶なんぞ飲んで、アイツに毒でも仕込まれたらどうするんだ。霊の気配がないとはいえ、ここでは間違いなく人が死んでいる。」


 この人はなんてこと考えてるんだ。あまりにも警戒心Maxすぎるだろう。だから女にモテないんだぞ!!


「大丈夫ですよ。そんなことたぶんありませんから。」


 私だってそりゃ色々考えることはある。なさそうだけどあるかもしれない仮定の話。むしろ私は他の人に比べて、かなりの妄想魔だし被害妄想酷すぎ新人類だろう。でも、妄想は妄想だしそこまで最悪の事態ってそこまで起きないなって最近思い始めた。というか、こっちに来てからそう思い込みでもしないと生きられなくなった。そんなこと疑ってたら、クロムさんが持ってきたものなんか一生食べられないし、もしそれで本当に食べなかったら私は飢え死にする。


「…たぶんか。」

「それに、二人欠けてる状態で殺すかなーって。加害者にとって被害者の知り合い残ってる状況ってかなり厄介だと思うんですけど。どうせだったらまとめて私は殺します。」


 これは単なる咄嗟の思い付きだけどね。

 でも我ながら咄嗟にしてはいい線いってると思う。クロムさんとかジェイミーさん残ってる状態で殺すのは結構リスキーだ…と、私だったら考える。


「ついでにいうと、もしこっちを殺すつもりだったら、さっきのクロムさんのお菓子の時点で死んでるかと。」

「…たしかに。」


 たしかあれもらってきたってクロムさんいってたしね。

 忘れかけてたけど。


「とにかく情報が今は欲しいです。なるべくチャールズくんから情報を引き出すことに集中しましょう。」

「…僕もなるべく協力はしよう。」


 なるべくか。まぁ、いい。出してくれたお茶をわざとマーライオンするとか、明らか態度悪いことしなければそれでいい。ついでにいうと、上手いこと話しを進めてくれるとありがたい。 


「すみません!待たせちゃって。」


 その後、二人で雑談をしているとチャールズくんが戻ってきた。サービスカートの上にティーセットと美味しそうなお菓子が並んでいる。


「どうぞこちらに。」


 そういって案内されたのは、大きな時計と長机があること以外はこれといった特徴もない部屋だった。机には白いレースのテーブルクロスが敷かれており、洒落っ気といえばその程度のものでこれまた本当に簡素だった。

 私たちが木製なシンプルな席につくと、チャールズくんがティーカップを前においてくれる。そして、色とりどりのお菓子と自分の分の紅茶を机に置くと、彼も私たちの正面の椅子に腰をおろした。


「…上品ないい香りだ。ダージリンか?」

「ええ。紅茶、お好きなんですか?」

「ああ。よく飲む。」


 ま、好きそうな顔してるよね。私は紅茶なんかほぼ飲まないから、どれもこれも同じに感じるけど。

 試しに一口飲んでみるが、まぁ普通に紅茶だよねという感じだ。おいしいっちゃおいしいけど、私としては砂糖とミルクを大量に欲しい。

 私の視線に気が付いたのか、チャールズくんが笑顔でお砂糖とミルクを渡してくれる。いい子だ。

 ドバドバとミルクと砂糖を突っ込む私に理解できないといった感じの誰かさんの視線が突き刺さるが、そんなことはどうでもいい。


「…この館の主人は紅茶好きなのか?」

「そう、ですね…おそらく好きなのではないでしょうか。」


 なんだその曖昧な受け答えは。よくわからないけど、こういうお仕事の人って主人の好みとかちゃんと把握してそうなイメージだけど。


「この館には様々な茶葉がありますよ。言ってくださればご用意いたします。」


 それ明らかに好きなやつじゃん。


「あ、そうだ。お二人とも時計のことはご存知ですか?」


 時計?直す?どういうこっちゃね。いつの間に私の時計は壊れたんだ?

 きょとんとしている私たちに気づいたのか、いたずらっぽい笑みを浮かべてチャールズ君が部屋にある大きな時計を指さす。

 なんだなんだ?と思ってその時計を見てみるが、特に変わった様子はない。なんのこっちゃ?


「ここらへんでは、我が主の魔力の影響で時計が三十分程度戻ってしまうんです。ですから、外から来た方は本来の時間にあわせたければ、この時計に合わせて三十分ほど針を進めないといけないんですよ。」


 なんじゃそりゃ。つまり、五時だ!って思ってても、時計が巻き戻ってるから本当はそれは五時半だってこと?はた迷惑な魔力だね。ま、時計を一回直せばいいだけっぽいから、まだマシなのかもだけど。


「へぇー。そんなことあるんですね。」

「ああ。だからいつも客人には迷惑をかけてしまう。」


 私の返答にバリトンの声がさらに返ってきた。明らかにチャールズくんの声ではないし、デミアンさんの声はもうちょっと嫌味っぽい声だ。もちろん私でもない。もしこれで私の声だったら、私はたぶん音域広すぎなオペラ歌手かなんかとしてデビューすべきだと思う。

 ということはまぁ、明らかに他の人物のわけで…


「ロルフ様!」


 ロルフ?えっとロルフロルフ…。なんとなく聞き覚えがあるな…と思いつつ必死で色々思い返していると、デミアンさんが小声でここの主の名前だと教えてくれた。

 へぇー。ここの主か…。

 堂々とした足取りでこちらに歩みを進める青年は、年齢の割に随分と貫禄があるように思える。少し長めの襟足の艶やかな青い髪は軟派な男を想像させるが、鋭い紺碧の瞳がそれを否定している。デミアンさんほどではないが顔はかなり整っていて、その瞳の鋭さも相まって女性にはかなりモテそうだ。


「本日は我が主、ジェイミー・ホールをお招きいただき大変ありがたく存じます。私は使用人のデミアン・ミーティアです。」


 デミアンさんがきちっと頭をさげつつそんなことを言い出したので、私も慌ててそれを真似て名乗りを上げる。


「…そうかしこまらないでくれ。…チャールズ茶を。」


 私の隣の席に腰を下ろしたロルフさんは体ごと私たちの方を向く。

 そして、命令されたチャールズくんはてきぱきと紅茶を準備し始める。


「むしろありがたいのはこちらの方だ。…噂は知っているだろう?」


 紅茶にレモンのスライスを一ついれながら、ロルフさんはそんな言葉を口にする。

 もちろん、ここで嘘をつく意味も特にないので肯定する…が…これは意外だ。まさかそちらからこの話題を持ち出してくれるとは。呪われた云々系は本人たちはその事実を隠したがることが多いのに。


「私たちもどうしてあんなことが起こるのか、色々調べてはいるのだが…さっぱりわからなくて。今度こそなにも起こらないように色々策は講じている。安心してくれとは言えないが、どうか心配しすぎないでほしい。」


 ロルフさんの表情は少しも動かないし声色もほぼ変わらないので、それが本心なのかなんなのかはさっぱりわからないが、せっかくこのことを話題に出してくれたので、気になっていたことを聞いていみる。というか表情動かなすぎだけどあなた人間?


「失礼だったらすみません。その…どうして毎回人が消えたり死んだりしているのにこのパーティーを開催し続けるのですか?」


 ごくり、とデミアンさんの喉がなる。たしかにちょっと踏み入った質問だが、そこまで緊張するほどではないと思う。

 催者側には主催者側にものっぴきならない事情があってそのパーティーを開催しているらしい、ということは知っている。でもその事情とはなんなのか?それが調べてみてもさっぱりわからなかったのだ。


「…身勝手な話だし、参加者の皆様には申し訳ないと思っている。だが、このパーティーを開催しなければ、我が領に災難が降り注ぐ。一度、開催しなかったことがあるらしいのだが、その時は町から何十人もの失踪者が出たらしい。」


 …へぇー。なるほどね。このパーティーに呼ばれる人々は領民を守るための生贄みたいなものということか。なんか嫌ね。でも、パーティーに呼ばれるのは毎回数人で一桁程度らしいし、パーティーをやらずに何十人も消えるよりはマシなのかもね。命は数で判断するべきじゃないのかもだけどさ。


「とにかく、こちらも努力はするがそちらも警戒を怠らないようにしてほしい。パーティーはこの時計の七時からだ。ちゃんと時計を直して主人を連れてくるように。それでは失礼する。…チャールズ、しっかりと客人をもてなせ。」

「承知いたしました。」


 ティーカップの中にくにょんとなったレモンのスライス一つを残して、ロルフさんはマントを翻しつつ部屋を出て行った


「…驚いちゃいました!びっくりです!こんなところにロルフ様がいらっしゃるなんて!!」


 ロルフさんが部屋を出て行ってから十秒間頭を下げたままでいたチャールズ君は、部屋の外を何度も確認した後プハーと息を吐きながら若干声を潜めつつそんなことを口にした。

 まぁ、自分の主人が自分が話していたところにきたらそりゃビビるだろう。


「威厳のある方ですね。」

「そうですね。迫力があります。…あー。まだあんまりお話できてないんですけど…その…」


 ちらちらと時計を見ている。そろそろ仕事に戻らなきゃまずい時間なのだろう。私としてはもう少し情報を引き出したいし、彼の笑顔に癒されたいところだが…まぁ仕方ないだろう。


「大丈夫ですよ。お仕事に戻ってください。」

「すみません…。あ、このままお二人はここにいらっしゃっても大丈夫ですよ。ティーセットとかはそのままここに置いておいてくだされば、あとで僕が片付けておきます。それでは。」


 そう言い残すと、チャールズ君はパタパタと走り去ってしまった。

 

「…せっかくだし、お茶とお菓子頂きつつ話します?」


 時計の時間を直しつつ、デミアンさんに声をかける。デミアンさんは時計を直してないがいいのだろうか。

 それについて尋ねると、彼は馬鹿にするようにフンッと鼻をならした。なんだこいつ。馬にでもなった方がいいんじゃないか。


「僕は時間はタブレットで見る主義だ。時計なぞすぐズレるし、今時使ってるやつの方が少ないだろう。」

「え、そうなんですか?」

「ああ。…まぁ、おかげさまで僕はここに来てからいちいち時計を探さなくてはならなくなったわけだが。」


 へぇー。そうだったのか。そういえば私も現代で普通に携帯がある時は腕時計なんかつけてなかったかも。腕がムレてかゆくなっちゃうし。


「…そういえば、あの領主とやら嘘を言っていたな。」

「嘘?」

 

 なんかいってた?なにか不自然なことを言っているようには思えないけど…。


「開催されなかったときに色々起きた云々言っていたが…記録が残っている限り、このパーティーが開催されなかったことはない。必ず十年に一度、この日に開催されている。」

「えっ。」


 いやまずその記憶力にドン引きだけど…

 

「警察が記録し始める前にそういうことがあったとかは…?」

「警察の記録上の最初のパーティーは三百年前。警察の最古の資料は四百年前。…さすがに百年間も放置されるとは思えない。」

「…なるほど。」


 なんで最古の資料とか知ってるのかとか、その記憶力分けろよタコとか色々思わなくはないが、たしかにロルフさんが嘘を言っていた可能性は高いように思える。


「でも、なんでそんな嘘を…。」

「自分の行為を正当化するためだろう。その程度の人間ということだ。」


 うーん…。まぁ、そこらへんが妥当なんだろうけど…。

 だけどさ、三百年もあったらそれなりの人数の当主がいたと思うんだよね。その中で誰もパーティーをやめよう!っていう考えに至る人が誰もいないって逆に不自然じゃない?特にニ人目とか、「こんな人が死んだ日にまたパーティーやるのなんか不吉だしやめよこわ…」ってなって二回目とかは開催されない気がするんだけど。…ま、不自然ではあるけどありえないこともないか。


「あ、そういえば時計がずれるって言ってましたけど、そういうことあるんですね。初めて知りました。」

「強すぎる魔力によってなにか特定の機械や魔道具に影響を及ぼすことがある…という話は聞いたことがある。」


 なるほど?まぁ、一般的ではないけどあるっちゃあるってことか。


「時計なんぞどうでも…よくはないが、一番の違和感は紅茶だ。」

「紅茶?普通の紅茶でしたけど?デミアンさんも上品ないい香り云々いってたじゃないですか。」

「上品すぎるのが問題だ。あの茶葉はおそらくかなりの高級品だ。ちょっとやそっとじゃ買えない。」

「へぇー。やっぱり領主のロルフさん紅茶好きなんでしょうね。」


 そこまでこだわるってことはやっぱりそうなんだろう。チャールズくんの反応はなぜか微妙だったけどさ。


「普通、使用人の茶会程度にそんな茶葉を使わせるか?そもそも、こんな華やかさの欠片もない城にはあまりにも不釣り合いだろう。」


 …不釣り合い云々は置いといて、使用人にこんな茶葉を使わせるかについてはたしかに疑問だ。不釣り合いに関しては、城にはお金をかけないけど紅茶にはお金かける方針なだけかもだし。

 

「…そもそもアイツは紅茶好きでは恐らくない。」

「え、そうなんですか?」

「レモンを入れていたが…あれはずっと入れていると苦みが出て紅茶の味が変わってしまう。それなのにあの領主とやらはずっと入れたまま飲んでいた。…大したこだわりがないのだろう。


 へぇー。なのにそんな高い紅茶買ってるのか。謎だね。使用人の誰かが紅茶好きでこっそり高いの買ってるとかかね?


「とりあえず、あの領主とやらが信用ならん男だということだけはわかったな。」

「ま、そうですね。」


 もともとこんな胡散臭いことが起きてる城の持ち主だし、トップオブthe怪しいんだけどね。

 はて、この後はどうしよう。正直探索はここら辺が限界だと思うんですけど、とデミアンさんに振ると同意してくれたので部屋に戻ることにする。

 鍵がかかった部屋などはまだ入れていないが、そこに入れてもらうのは夕食後…部屋の開放を拒否されるようであればクロムさんがいるときがいいだろう。なんでかって?そりゃあ…扉をぶっ壊すにはパワーが必要じゃん?



  *  *  *  *



 部屋に戻ると、ジェイミーさんとクロムさんが二人で談笑していた。

 クロムさんって人と普通の会話できたんだ…なんかよくわからないけどよかったね…。お母さん感動したわ…。頼むからお母さんにも普通の会話して欲しいな…。ま、こんなヤツの母親なんてゴメンだけどね!!


「おかえりなさい。大丈夫でしたか?危ない目とかには…」


 私たちに気づいたジェイミーさんが少し心配そうな顔で声をかけてくれる。いい人や…。


「大丈夫ですよ。…まぁ、あんまり発見もなかったんですけど…。」

「そうですか…。ですが、みなさんの無事がなによりです。怪我などもないようでよかった。」


 ジェイミーさんは少しがっかりした様子を見せたが、すぐに笑顔に切り替えると私たちに気をつかってくれる。こういう人間になりたいもんだね。私なんかこういう状況になったらすぐブチ切れるもん。近くにある電柱引き抜いてそれ振り回し始めるよ。ま、そんなことしたことないけどさ。


「ねぇねぇ、スイミーちゃんが変なこと言うんだよ。」


 スイミ―?目玉役の魚のこと?…と、思ったが、そういえばこの人は人の名前をちゃんと覚えないんだった。


「なんか時計が変なんだってさ。」

「時計?」


 私がジェイミーさんの方を向くと、彼女はものすごくおかしなことを言うかもしれないんですけど…と前置きした。


「時計の針が巻き戻っているのを見たような気がして…。」

「あー!わかりました。そういうことですね。」


 なるほどなるほど。そういうことね。

 私の言葉に、どういうことですか?と小さく首をかしげるジェイミーさんに先ほどのチャールズくんの話を伝えると、安心したように気のせいじゃなくてよかった…と呟き、彼女は腕時計の針を三十分進めた。

 というか、さっきの話ガチだったんだ…。知らずに時計巻き戻ってるの見ちゃったら、もうなんかの呪いかと思うよね…。


「へぇ~。時計が巻き戻っちゃうんだ。大変だねぇ。」

「クロムさんも直しておいた方がいいですよ。」

「僕、時計持ってないんだよね。」


 えー。クロムさんもそうなのか。私は時代のビッグウェーブに乗り遅れてるのかな…。


「…じゃあ、私はそろそろ部屋に。」

「え、でも、

「ちょっと疲れてしまって…一人にしていただけませんか?」

「…わかりました。なにかあったらすぐ呼んでくださいね。」


 そう言われちゃあねぇ…。心配だけど…。まぁ、クロムさんなんかとずっと同じ部屋にいたら疲れちゃうか。

 ジェイミーさんは少し頭を下げて部屋から出て行った。


「なんかわかったことあった?」

「うーん…。本当に大したことは…。せいぜいいうならば、さっきの時計のことと…なんかありました?」

「ここの主に会った。そしてそいつは信用ならない。以上。」

「へぇ~。幽霊はいたの?」

「それがさっぱりいなかったんですよ。」


 それから私たちは色々意見交換をしながらパーティーまでの時間を過ごしたのであった。

 


 

ぎゃー!遅くなって本当に申し訳ありません!

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