68 進学
生徒会の仕事は、見立て通りに、きっかり二日で終了した。
生徒会に残っている仕事は、あとは夏休み前、終業式での挨拶くらいなものだ。
斉藤に聞いたところ、次の生徒会選挙ではもう仕事がほとんどないらしい。選挙は委員会によって行われるので、現生徒会が行うのは候補者の推薦くらいだそうだ。
天には、推薦するような人物はいない。そのため、もう仕事は無い。
海智留や真波を、生徒会に推薦しようかとも思ったのだが、
「天さんがいない生徒会に、興味はありません」
「天センパイがいないんじゃなー。アタシはどうでもいいかなって」
と、二人はあっさりしたものだった。
天としても、特別推したい訳ではなかった。二人にその気があれば協力しよう程度のものだ。
そうなると、天には全くやることがない。最初は敬遠していた生徒会の仕事も、実際に取り組み、終わってしまうと寂しいものだ。
斉藤は、今の会計から次の会長を推薦するそうだ。推薦文を作っていると、先日聞いた。
肩の荷が下りたような安心感がある。無能と呼ばれて久しい生徒会長職も、これで終わりだ。
昼休みに、また三人で弁当を突き合いながらぼんやりしていると、真波は、それよりもと前置き、
「天センパイは、進学どうするんですか?」
「えっ?」
今日は雨が降っていたので、天の教室で食事をしている。進学、という言葉で、クラスメイトの数人が反応したような。
確かに、三年の夏休み前となると、受験勉強が本格化して忙しい時期だ。色々あって忘れていたが、天も一応、大学に進学予定である。
「大学には行こうかって思ってるよ。特に勉強したいものがあるかって言われると、困るんだけど」
ささみカツをかじりながら、曖昧な笑みを浮かべる。
進学したいとは思っているものの、明確な目的が無い。法律か、政治経済か、そのあたりを考えているが。
「それは私も気になりますね。自分の進学先に関わります」
「え、海智留さん、まさか……」
「はい、同じところを受験しようと思います」
「気が早いよ……」
天が受けるのは、中の中といった学校だ。海智留ならばもっと上のランクを目指せるのではないだろうか。
「アタシも気になります。って言っても、もしかしたら一緒なところにはいけないかもしれませんけど」
「ああ、真波ちゃんは陸上があるから……」
「まあ、アタシくらいじゃ、大したことないですけどね」
そう言う真波も、天とは違う道がたくさんあるに違いない。
「一緒にキャンパスライフを送りましょう、天さん」
「だから、気が早いって……」
「アタシはどーすっかなー。まあ、天センパイと一緒なら、全然いいんですけど」
「真波ちゃんも、もっと考えようね……」
慕われるのは嬉しいが、それで選択肢を狭めるのはよろしくない。二人にも二人なりの進み方があるはずだ。
大学、さらにその先と言われても、まだ天は具体的なイメージを持たない。いつかそのうち、という漠然とした感覚しかない。
だが、以前とは心持ちが変わった。今一度、進路を考え直してみるのもいいかもしれない。
二人にも言ったように、天とて道は一本ではない。すぐには決まらないだろうが、選択肢を広げてみるのもいいだろう。
米をかみしめながら、天は食べ終わるまで自分の進路について、考えを巡らせた。
それは二人にも伝わったのか、
「天さんも、また別に決まったら、ぜひ教えてくださいね」
「やっぱ、一緒の学校とか、また面白くなりそうですもんね」
と、応援するかのように言われてしまった。
先輩としての威厳などとうの昔に捨てているが、年下二人に言われると、なんとなく頑張らねばならない気になるのだった。
次で最後です。




