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最強でなくなった俺がこのゲームをクリアする! 〜ユニークウェポンを手に入れて、周りが俺を放っておいてくれないみたいです〜  作者: 七詩のなめ


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伝説の戦闘スタイル

 10体の弓兵に重武装をした鬼とそれを守る槍兵が3体。そして、見るからに強そうな四足歩行の金色の獣を見て、刃は考察する。

 横目に見えるのは両足を切断された兎の百鬼影。考えるまでもなく襲われたのだろう、と察しが付く。問題となるのは、どちらが先に手を出したか、なのだが、刃にとってそんなことはどうでもいい内容だった。


「……姫野がキルパクしたとか?」

「そんなわけないでしょ!? 勝手に因縁をつけられてるのよ! あの男……自分の嫁になるか、一生邪魔されて生きるか選べってね!」


 なるほど……わからん。


 何がどうなればそのような考えに至るのかもわからないが、もっとわからないのは姫野を嫁としてもらえなければ一生を懸けて邪魔をするだけの労力が無駄ではないか、と刃には思えてしまう。

 それだけ姫野に魅力を感じているということだろう、と心の中で考える。確かに姫野はそのツンケンした性格を除けば見た目は美少女だ。いや、ツンケンしていたと思いきやデレがポロリと出てしまったりすれば、刺さる人には刺さるのだろう。きっと、目の前の四足歩行の獣もそうに違いない、と刃は納得した。

 自分にはない感性の持ち主を邪険にするような刃ではない。というよりも、強そうな見た目から、一度でいいから戦ってみたい、と心の奥底で思っていた。

 そうこうしているうちに、アレクサンダーがイライラした様子で物申す。


「俺様の香織と、随分と仲が良いみたいだな。てめえ、香織の何なんだ?」

「待ってくれ。何か勘違いしてると思うぞ? 俺は姫野のパートナーで、大した関係じゃ——」

「パートナーだあ? ……ククッ。クハハハ! てめえ、冗談も休み休み言いやがれ! てめえなんかが香織のパートナーなんかに——」

「本当よ……仮初だけどね……」


 最後の方を小さく呟くあたり、姫野も策士だ。その策とはヘイトを自分から刃へと移す行為。すなわち身代わりである。

 その効果は思った以上に絶大で、雷獣は怒りで静電気を滾らせる。

 おい、と呟くよりも早く刃は危険を察知して横に飛んだ。すると、今まで刃がいた場所にはいつの間にやら移動していた雷獣が加えている短剣で小鬼の心臓あたりを貫こうとして空を切った後だった。


 瞬間移動……いや、一瞬目の前が明るくなったとこを見るに高速移動の類か。また厄介なやつを相手にしたもんだな、姫野のやつ……。


 野郎。避けやがった。俺様の移動に初見で追いつくだと……。当て勘か、それとも動体視力系の特殊能力でも持っているのか。香織のやつ、当てつけのようにいいやつをパートナーに選んだもんだな。


 2人の考えはすでに戦闘に対するものへと変わっていた。利があるとすれば、数を用意しているアレクサンダーだ。土地勘、数的有利もない刃にとって非常に大きいアドバンテージと言えるだろう。加えてアレクサンダーたちは一本道を塞ぐように陣取っている。

 その有利を使わないアレクサンダーではない。


「こいつを蜂の巣にしてやれ!」


 アレクサンダーの号令で10体の弓兵が一斉に刃へ向けて矢を放つ。次々と射られていく弓矢の数はおよそ50。ぐるりと視線を移動させ、刃はその弓矢を正確に捉えた。


 矢の形状に目立ったものはない。多分、通常の矢だな。問題はその数……50……54……57。全部は撃(・)ち(・)落(・)と(・)せ(・)な(・)い(・)か。でも——。


 幸いだったのは、弓兵の矢がまっすぐに刃へ向けて射られたものではなく、アーチを描いた波状攻撃だったこと。全てが刃に向けられた攻撃だったなら、刃は負傷を覚悟しなければならなかった。

 しかし、点ではなく面での攻撃であるなら、全てを撃ち落とす必要はなく、身を守るだけであればその数は30を下回る。

 すかさず刃は真紅の二丁拳銃を構えて、正確に弾道予測した矢へと弾丸を撃ち出す。その弾丸は刃に当たるはずだった矢へと向かっていき……。


「なっ……」


 本来であれば弓矢で持って波状攻撃を行い、重武装の鬼にメインの攻撃をさせる予定だった。そもそも、飛んでいる弓矢を弾丸で撃ち落とすなど、一体誰が考えるだろう。

 アレクサンダーはその考えに至れなかった。ゆえに漏らした言葉は自然と空気に溶けていく。唖然とした表情で目の前の理論上あり得てもあり得てはならない状況を見つめていた。

 無傷で事を済ました刃は、アレクサンダーへと向き直り。


「戦う……ってことでいいんだよな?」


 小鬼が無邪気に笑う。まるでこの状況を楽しんでいるかのように。

 冗談じゃない、とアレクサンダーは叫ぶ。


「プランBだ!」


 一瞬の光。アレクサンダーは後方へと下がり、弓兵は隊列を広げた。波状攻撃の構えから、一射一殺の陣形へと変わる。重武装をした鬼が3体の槍兵と共に刃へと走る。必然的に刃は重武装した鬼と対面で戦わなければならず、背後に弓兵の視線を集める形になった。


 やりづらい陣形だな……。


 弓兵たちに意識を割かなければならないのに、目の前の重武装した鬼にプレッシャーをかけられて注意散漫になる。また、弓兵たちもこの作戦をよく理解しており、重武装した鬼の攻撃の隙を狙いづらくするために弓矢を放っている。

 これがアレクサンダーの編み出した対ボス用の陣形である。さらに注意を引くためにアレクサンダーが参戦することで盤石となるが、相手が格上のプレイヤーでもない限り、自分が出る幕はない、とアレクサンダーは考えていた。

 一方刃は最も注意すべき相手を見定めている。弓兵は確かに厄介だが、その攻撃はほとんどがサポートのためのもの。打点が高い攻撃を確実に刃へと届かせる攻撃だ。であれば、刃が標的として見るのは眼前の重武装した鬼だろう。しかし隙を突こうにも弓兵のサポートが手厚い相手を倒すには予想だにしない一撃が必要になる。


 ……仕方ない。10年ぶりだけどア(・)レ(・)……できるかな。


 刃は真紅の二丁拳銃を構える。リロードは済ませており、戦闘準備は万端といったところだ。心配だったのは姫野の特殊能力を刃自身も影響を受けていること。普段のパフォーマンスを十全には発揮できないことだった。

 そうこうしているうちに重武装した鬼の大振りの振り下ろしが来る。


 これは何度も見た。大きさ、重さ、威力から必(・)要(・)な(・)弾(・)丸(・)は(・)5(・)発(・)。そしてウィークポイントは大剣の重心から少し手元にズレた部分。


 大振りの振り下ろし、ただ回避するのでは槍兵と弓兵に邪魔をされてまともな攻撃が行えない。重武装した鬼は防御力も高そうで、素の攻撃力が低い刃では倒すのにどうしても時間が掛かってしまう。狙うなら急所、さらに言えば一撃で倒すしか道はない。

 モンスターと同様、プレイヤーにも急所は存在する。プレイヤーの急所は心臓と脳。どれだけ防御力が高くても、そこを破壊されれば即死する。

 すでに刃は重武装した鬼の握る大剣の弱点は見抜いている。問題はその弱点が非常に狭いこと。

 振り下ろされる大剣の切先に1ミリのズレもなく見抜いた大剣の弱点へと5発の弾丸が撃ち込まれる。1発の威力は少なくとも5発の弾丸であれば、弾くことはできずとも逸らすことは可能だ。これにより思わぬ方向へと大剣の軌道を変えることができ、体勢を崩す目的を達成できる。

 ただ、これまた理論上可能であって、絶対に不可能な行動であることだ。あるいは神業と呼ばれるようなプレイを刃はやって見せた。


「おわっ——」

「顎がガラ空きだぜ?」


 体勢を崩された重武装した鬼の懐に潜り込んで顎を下から真紅の銃で脳天目掛けて発砲する。絶対に崩せるはずのない陣形を、刃は崩してみせた。ポリゴン粒子が崩れていく重武装した鬼を尻目にはつらつとした笑顔で、後方へ下がったアレクサンダーを見つめた。

 その視線にアレクサンダーは怯むことなく、だがあり得ないと思いながら見つめ返していた。

 昔、刃は弓兵でありながら近接戦闘が得意であった。理由は単純で、距離が近ければ近いほどに、敵の弱点を見抜くことが容易かったからだ。けれど、問題となったのは近接での戦闘の際、敵からの攻撃をどのように避けるかだった。

 言わずもがな刃には特殊能力は存在しない。回避は自分の体で行わなければならなかった。そこで目をつけたのが”アンダーワールド”に搭載されている現実の物理を忠実に再現したシステムだった。たまたま弓矢に弾丸を当てることができた時に、刃は思いついた。

 弓矢に弾丸が干渉できるのならば弾(・)丸(・)で(・)攻(・)撃(・)を(・)パ(・)リ(・)ィ(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)が(・)で(・)き(・)る(・)の(・)で(・)は(・)な(・)い(・)か(・)。そんな思いつきが、刃の戦闘スタイルを大きく変えた。


「……何じゃ、そりゃ……銃弾で剣をパリィしたのか?」


 あり得ないことがあり得ていることにアレクサンダーは驚愕していた。

 10年のブランクを経て、できるか怪しいことだった銃弾でパリィを行うといった神業をこなしてみせた刃は、ふと頭に浮かんだ疑問を口にする。


「——そういえば、あんた誰だ?」


 今更ながらに、極東第一学園の第7位の名前を知らない事を思い出した刃は問いかけた。その問いかけにプライドを傷づけられたアレクサンダーが唸るように言う。


「……クハハ。いいぜ。最高だな、てめえ。この俺様を知らないだと? てめえが一体誰に手を出したのか理解できていないだと!? いいだろう。全力を出してやる。このアレクサンダー・ウォーカーに手を出したらどうなるか……身を焦がして知りやがれ!!」

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