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8[LOG] PM13:05 /

6話からは月水金の週三更新

大体夜の11時10分ごろを目安に更新していきます

 俺はグレモリーが案内する先に、黙ってついていくしかなかった。道すがら見覚えのある路地に差し掛かる。そこは昼でも暗く見にくかったが、乾いた血の跡がこびりついている。

 


 ──そうだここは俺が最初死んだ場所だ……。



 あの夜が、今や遠い過去のように感じる。もしかしたら、今の世界は俺が死んだ後に見ている幻なんじゃないかと一瞬思ってしまう。幻だったらどれだけ良かったんだろうな……でもグレモリーとの契約によって生じた自らの胸の痛みがヒシヒシと現実だと知らしめる。

 

 すると、そんな馬鹿な考えを揉み消すかのようにチュンがヒソヒソ話しかけてきた。簡単なシステムのはずなのに自我がハッキリしすぎてるように感じる。もしかしたら知らない誰かが通信を乗っ取っているのかもしれない。

 でも、見ず知らずの誰かでも自分のことを見てくれる人がいるのは正直ありがたかった。今の俺は、町から追放された異端者のような存在なのだから。




 『PPP……ねぇ可可(カカ)、本当にあの女について行って大丈夫?……PPP』


 「……わからない、でも今はグレモリーを頼るしかない。…………念のために、この辺の座標をマークしといてくれるか?戻れるように」


 『PPP……わかった……PPP』



 

 チュンの言葉にハッとなった。今は現実逃避なんかしてる場合じゃない。しっかり現実を見なくては。俺は拳を力強く握って、自らの決意を陰ながら露わにする。

 そんな葛藤を抱えながらも、グレモリーはどんどん暗い路地に入っていく。更には、階段で地下に降りていくではないか。下へ行くにつれ視界が益々暗くなっていき、足音だけが反響する。


 ようやくたどり着いた地下道は、生活廃水とゴミの匂いが交じり合った醜悪な場所だった。そんな汚らしい場所を彼女は迷いもなく、何処かを目指してズンズン進む。

 ……それになんだか俺たち以外の気配を感じるが、きっと暗闇を好む動物たちのものだろう。……決して幽霊なんかじゃない、断じて違う。

 どこに向かっているのかを聞きたかったが、彼女の微かにピリピリした雰囲気が怖くて口を閉ざす。下手に話しかけたら、怒りに油を注いでしまいそうだ。

 

 地下があることは以前から知っていたが、実際に入るのは初めてだった。

 昔、親父からこの町には使われなくなった地下坑道が残っていると聞かされたことがある。またその廃坑を【天】の軍人が秘密裏に利用して、表に出せない廃棄物をバンバン捨ててるとかなんとやら……。まぁ親父の創作も入ってそうなので、この時は話半分に聞いていた。

 しかし現に訪れてみて、大多数の人間が地下坑道をゴミ捨て場みたいに扱ってるのは事実のようだった。紙袋やゴミ袋に混ざって大量の注射器やら油の一斗缶、コード類に壊れた機械など様々なものが捨てられていた。

 そのゴミの中に隠れるよう、ブルーシートに包まった物や骨みたいなものもあり動揺が隠せない。背中に冷たい汗をかきながら、必死で見て見ぬふりをした。気のせいだ、気のせい……。


 大量のゴミに隠れて見にくいが、確かに坑道として使用していたと思わしき錆びたレールが真っ黒なトンネルの先まで伸びている。立てかけられた古ぼけた看板には、安全第一を掲げる標語が書かれてる。

 きっとここが生活の中心だった人間が山ほどいたのだろう。しかし今はゴミと異臭しか残っていない場所になってしまった。他人事だがここであった過去に思いを馳せ、時の残酷さで胸を焼く自分がいた。


 

 ふとグレモリーが、何かの前で止まった。つられて見てみれば、この地下道には似つかわしくない荘厳な扉がある。彼女が重そうにその扉を押せば、黒と紫赤色を基調とした幻想的な室内が姿を現す。

 その室内はまさしくグレモリーのイメージにぴったりで、ついつい感心してしまう。恐らく非常にこだわっているのだろう。生活していれば雑多な感じが出てしまうはずなのに、この部屋にはそれがない。

 また外と同じように暗いはずなのに、汚い感じは一切感じられず高級な雰囲気がヒシヒシと伝わる。きっと金のある連中はこういう部屋に住んでるんだろうな……。

 それに地下道を充満していた様々な異臭が、この部屋では一切感じられない。逆に彼女が纏う花のような匂いが、この部屋を満たしてる。高度な空気清浄機でも使っているのだろうか?是非とも使用している技術を教えてもらいたいくらいだ。

 

 彼女はニコニコした顔でこちらへ勢いよく振り向くと、嬉しそうに話しかけてくる。それはまるで玩具を自慢したがる子供のような表情だった。余程この部屋を見せつけたかったのか?


 


 「やぁっとついた!ここが私の隠れ家だよ~!ほら!座って座って!」


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