6[LOG] AM10:30 /
6話からは月曜と金曜の週二更新
大体夜の11時10分ごろを目安に更新していきます
「よし!できた!」
煤を詰めたような闇が薄汚れた灰色の大気に飲まれるように訪れた朝、俺は手を止めて声を上げた。先ほどまで感じていた眠気が、完成による達成感で全てが吹き飛ぶ。
その声で起きたのか、グレモリーがそろりと覗き込んでくる気配を感じた。そして俺の手元に視線を移すと、疑問を投げかける。
「それなぁに?」
「あぁ、鉄パイプじゃ相手にされなかったから作ったんだよ、靴の底に刃物取り付けた単純な武器だけど無いよりはマシだろ?それに、こんな単純な構造でも小型のエンジンが搭載されててな!!それがまた──」
「あー……そういうのは興味ないから良いかな、んでこの鳥の玩具は何?」
彼女はワザとらしく俺の話を遮ると、武器の隣に置いていたものを尖った爪で指摘する。それは煤のような灰色の世界でも、一際目立つ鮮やかな瑠璃色の体を持つ小型鳥類を象った機械人形だった。
モチーフにした鳥はいつかの路地裏で拾った図鑑に載っていたものを見てから、ずっと頭の中に残っていたものだ。なりたい自分に見えたから形を拝借させてもらった。下層区画のドブネズミが何を言ってんだと思うが、憧れるくらいは許してほしい。
俺はこだわりを遮られ少し不屈な面持ちで、その機械人形を持ちあげ初期情報を入力しながら語る。
「……この町って凄く複雑で迷いやすいからな、道案内用の機械人形もおまけに作ったんだ。名前はチュンな!可愛いだろ」
チュンには各所の空気清浄機の位置データを組み込んでいる。それによって現在地を特定するという仕組みだ。顧客のデータを勝手に拝借するのは申し訳ないと思っているが、心の中で謝罪をしながら使わせていただいた。
しかし、それだけでは心もとない。だから様々なものから発される電波を、1つずつ拾い上げる機能を取り付けた。この2つの情報を組み合わせれば地図として機能するはずだ。
だが、それはあくまで机上の空論だ。実際動かしてみないと分からない。下層区画の乱雑する電波を拾いすぎて、チュン自体が処理しきれずオーバーヒートする可能性は大いにある。
だから俺はドキドキしながら鳥型の機械人形のスイッチを入れた。するとそれは羽根を忙しなく動かしながら宙に浮く。キョロキョロと周りを見渡しながら、俺を視界に捉えると雑音交じりに音を発する。
『PPP……お、おに……ゴホゴホ!!か、可可?……PPP』
「お?早速、俺のこと認識したのか?やるなぁ!あれ?でも、そんな情報登録したっけ?……まぁいいか、頼むぞチュン」
(……誰かが、あの鳥を不正操作してるね…………まぁいっか!面白そーだし)
「可愛いねぇ……よろしくね小鳥ちゃん」
『PPP……うわっ!!変な女!!可可やめなよ、こんな女!!……PPP』
「ん??なんだ?グレモリーあんた何かやったのか?」
「なぁんにも?あははは!!」
早速チュンはひたすらにPPPと繰り返し、グレモリーはそれを見て謎に笑ってる。知らないところで、何かが水面下で進んでいるような感じがして少し居心地が悪い。
俺はそれを遮るように、グレモリーへ町長の元に早速行こうと促した。彼女は笑いながら空返事をすると、俺の後をフワフワとついてくる。それを見て、心の中でようやく動くことが出来ると安堵した。行く場所が分かっているというのに留まらざる得ない焦りから、ようやく解放されそうだ。
秘密基地を出る時にチュンへ町長がいる家の位置情報を入力すれば、嘴は真っ直ぐ方角を指し示す。それを頼りに、俺たちは歩み始めた。初めて刃物付きの靴で歩く感覚は、どうにも慣れないものだったが気にしてる余裕はない。
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私は、白い空間がひたすら広がるところにいた。どうやって私はここに来たのだろう?軍人たちがいきなり家に入って来たので抗議を口にしたら、後ろから薬らしきものを嗅がされたのは覚えてる。だけど、それ以降の記憶がない。
足元にはコードが床一面に敷き詰められている。その様子が不気味で気持ち悪くて、私は建物を探して彷徨う。
どれくらい歩いただろうか?永遠と思うほど永い時が流れたような錯覚を覚える。まるで、へばりつく泥の中をひたすら泳いでる感覚だ。私はどうなってしまったんだろう……。
そんな不安を必死に押さえつける。ここで折れれば溶けて消えてしまうような感じがした。だからひたすら前に向かって歩いた。
しばらく歩くと大きな柱が見えてきた。ようやく人工的な建造物が見えて安堵する。それは今までの人生の中で見たことがないくらいの巨大なものだった。
所々、チカチカと町明かりのように細い光が走っている。きっとデータを処理しているんだろう。でも何のデータだろう?こんな大きな建造物じゃないと処理しきれないっていうのは、相当膨大な情報な気がする。
まぁ私は、そういう機械系に疎いからハッキリとは分からない。アイツだったら分かったかもしれないけど、肝心な時にいなくて少しイラつく。
私はその柱に駆け寄る。しかし特にこれといった情報が無く、心が灰色の虚無に染まったような気がする。
すると、目の端で何かが眩しく光っているのが見える。そっと覗き込むと、小さいデバイスから聞き馴染みのある声が聞こえた。思わず普段言い慣れない呼び方が飛び出しそうになるのを押さえ、必死にそれに縋るよう言葉を紡いだ。
共に暮らしてきた双子の兄の名を──。




