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41[LOG] PM / DATA CORRUPTED_2

月水金の週三更新


大体夜の11時10分ごろを目安に更新していきます

 俺は李沈(リーシェン)に、根源プログラムの心臓部はどこだと聞いた。妹は少し考える素振りをしたのち、こう述べる。それは知りたくない事実の欠片だった。




 「心臓部ね……強いて言うなら私かな」


 「な、なんで……お前が出てくるんだよ……?」


 「根源プログラム(ここ)へ突っ込まれる前に、天帝のお付き?みたいな連中が私をメインコンソールの補強にするとか言ってたから……多分そうなんじゃない?」


 「お前は道具じゃないんだぞ!!」


 「私に怒ってどーすんのよ、この世界にとって私たちはパーツでしかなかった…………ってこと。」



 

 会話を通して理解してしまった。最初は根源プログラムの心臓部さえ壊せば、天帝を出し抜けると短絡的に考えていた。自分の身はひとまず置いといて、他は何とかなると思っていたんだ。

 だが実際はそう甘くなかった。この話が本当ならば……俺が壊すべきなのは……。

 

 

 ——李沈(リーシェン)だということになる。


 

 頭を殴られたような衝撃に、膝が震えた。救いたかったはずの命が、壊すべきシステムの核として目の前にある。運命の悪戯にしては、あまりに趣味が悪すぎる。

 馬鹿みたいな事実を突きつけられたことにより、つい打ちひしがれそうになる。李沈(リーシェン)景春(ケイシュン)を助けたくて……あの日の「いつもどおり」に焦がれて、どうにか戻そうと足掻いて足掻いて足掻いてきた。でも現実は、予想よりも遥かに冷たくて厳しくて残酷だ。

 いつまでも言葉を返さない俺に李沈(リーシェン)はポツリと呟く。




 「ずっと見てたんだよ、可可(アンタ)のこと」


 


 ………………そんなのは、ちょっと前に気づいてた。天帝と相対する前だったから、あまりに気づくのが遅すぎるけども。

 だから…………あの小さい機械……チュンを直すことができる限り李沈(リーシェン)は生きてるし話すことが出来ると、何となく自信を持つことができた。あの時点でチュンを直していれば、結末は少し変わったのだろうか?

 そんな情けない心中を妹に告げる。

 

 

 

 「…………あぁ、さっき気づいた。何年一緒に暮らしてると思ってんだよ」

 

 「気づいてたくせに言わなかったんだ?…………ありがと」



 

 俺は今までのこと、そしてこれからの謝罪を込めて李沈(リーシェン)に言葉をかける。自分の心と記憶に傷跡が深く残るよう、念入りに刻み付けていく。

 サラサラと自分の情報が流れ出て根源プログラムの材料にされようとも、その傷がずっと残るように。

 


 

 「…………俺さ、お前とどうしても向き合って話したくて、足掻いて足掻いて足掻いたけど……結局何も変えられなかった。

 ……………………ごめんなこんな兄貴で」




 虹色のノイズで歪む妹の肩に手を置いて、瞳を閉じて謝った。真っ直ぐ見つめられなかったのは、未だに残る兄としての矜持のせいだ。…………それから……ほんの少し、涙が滲んでるのを見透かされないために。

 こんな時まで、良く見られようとしてるなんて我ながら情けないと思う。でも最期まで兄らしくいたかったんだ。何も守れない、何も変えられないような奴だけど見栄だけは一丁前だと自身を嘲笑う。

 だが、李沈(リーシェン)からはアッサリとした言葉が跳ね返ってくる。



 

 「はいはい辛気臭いのは良いって。…………でもアンタまだ足掻くつもりでしょ?」




 それは、今まで共に暮らしてきた行動故の確信に満ちた言葉だった。俺は、妹の言葉で改めてやらなきゃいけないことを心に刻む。感傷へ飲まれそうになるのを、必死に堪えながら返事を紡ぐ。普段の李沈(リーシェン)にも負けず劣らない宣言に近いような、強い言葉で。




「……あぁ、決めたんだ何もなくても足掻くって」


「あっそ」


 


 返ってきたのは、いつものように淡白な返事だった。励まさないけど馬鹿にもしない、そんな言葉。だけど俺にとっては、背中を押してもらえたような不思議な感覚があった。今更ながら返事の仕方がチュンと同じだったことに気づいて、僅かに口元が緩む。

 そんな不思議な感覚に背を押され、気持ちが高ぶったままポケットから自爆の札を取り出そうとする。すると、今度は李沈(リーシェン)のほうから言葉をかけてくる。

 なんとなくだが……忠告のように聞こえる。ほんの少し機械的に聞こえてしまったのは気のせいだと思いたい。




 「この世界、全部が苦しかったわけじゃないからね。誰かにとっては、ちゃんと生きてる世界だった」


 「……知ってる、だから忘れない。俺が壊したってことも」

 

 「そう、わかった」


 「………………だけど壊すだけじゃない、1つだけ残したんだよ」


 「は?………………もしかして、あの斯文(スウェン)とかいうやつとコソコソやってたやつ?」


 「あぁ……白い小さな箱に町の人々のデータを詰めて、根源プログラム(ここ)が消えるとき流れるようにしてもらった」



 

 あの時のやったことを、洗いざらい話す。斯文(スウェン)と共に、この世界の住人データが全て詰まった部屋に入ったこと。そこで人が生まれる過程が0と1から創り上げられるところを、嫌と言うほどまじまじ見せられたことを。

 そして——白いデータ移送用の小型端末に、町の人々のデータを詰めたことを。

 だけどそこには俺のデータと李沈(リーシェン)のデータはない。あの時点で、俺たちの存在は世界から消されていたらしい。斯文(スウェン)が言うには、いきなり消えても違和感を持たせないようにするための偽装工作らしい。時間があれば住民からもデータを消す予定だったみたいだ。


 李沈(リーシェン)は、ほんの少し瞬きをすると小言で「……そう」と言うだけだった。妹は、少しだけ言い淀んだ後で呟く。聞こえたのは、今までの思い出を名残惜しいと感じるような声だった。

 いつものように強気なはずなのに、ほんの少し寂しさを滲ませたように感じる。

 

 

 

 「ねぇ………………最後に良い?楽しかったよ、苦しくても貧乏でも一緒に過ごしたこと」

 

 「俺もだよ」




 これまでの色んな思いが詰まった返事を吐き出せば、途端に寂しくて潰れそうな感覚に陥る。喚きたくても喚けない。

 もう戻れないという、胸を締め付ける感情に後ろ髪を引かれそうになりながら、俺は勢いよくポケットから自爆札を出す。取り出すための指は既にボロボロに朽ちかけていて掴むのもやっとだった。


 

 ——それを出した瞬間、一気に場が重くなった。

 根源プログラムと化した天帝なのか、それともこの場に溶け込んだ住民だった連中なのかは分からない。彼らは俺の腕に纏わりつき、必死こいて動作を阻止しようとする。そればかりか、勢いよく自身の身体を貪り食うように情報の波が襲い掛かる。


 何千、何万という死者たちの叫びが脳内に直接響き渡る。『壊すな』『消したくない』『やめろ』という執念が、実体を持って俺の腕をへし折ろうと絡みついてくる。

 だが、こんなところで屈してられない。身体が外側から喰われるような激しい痛みを感じながら、李沈(リーシェン)の首元まで腕を伸ばす。しかし何故だか届かない。

 このまま腕が千切れてもいいと感じながら、限界まで伸ばそうとする。あと少し……。


 すると李沈(リーシェン)がそれを振り払った。邪魔だと言わんばかりの傲慢な所作で。彼女の指先が自爆札に触れた瞬間、世界の悲鳴が止まる。そして俺の腕を思い切り引くと、自爆札を自らの首元に添える。

 その時、李沈(リーシェン)が何かを言ったような気がする。いつもよく聞いた言葉の切れ端のように感じたが、残念ながら俺には……何も聞こえなかった。

 

 

 ——瞬間、この世界にある全てのものが一気に消えたように感じた。まるで、崩れかけのものが振動で一気に形を保てなくなったような……110000100011111 1000100110011010 11000001100000 11000001100011 11000001011111。


 


 11000000001100 100111011001010 11000001111110 11000001100111 11000001000010 11000010001010 11000001001100 11000001101000 11000001101101 101001111101111 101001111101111 11000000001101


 

 

 [ロ█が削除さ█まし███……██……█

 

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