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15[LOG] PM17:09 /

月水金の週三更新


大体夜の11時10分ごろを目安に更新していきます

 丁度寺の前に付いたのは午後の光が薄れ、夜の気配が混じり始めた頃だった。

 違法建築したビルとビルの間に挟まるように寺がある。なんだかそこだけ別の雰囲気を醸し出しているように見えた。周りは定期的に清掃されているみたいで、目立ったゴミは見当たらない。この様子から、確実に人が手入れをしているんだろうと伺い知れる。

 だが寺の周囲は異様なほどに静かで少し心細く感じた。まるで緊張の糸が隅々まで張り巡らされてるような……。いや……多分俺が不安に思ってるから、そう見えるだけで実際はそうじゃないのかもしれない。

 行く先々で痛い目に遭っているからか、どうしても警戒してしまう。

 

 そんな今までの経験から、つい寺の楼門の前で立ち止まってしまった。

 すると、俺の心を知ってか知らずかグレモリーは「遅いよ~!」とか言いながらグイグイと俺の背を押してくる。その衝動で微弱ながら前へ進んでしまう。

 俺はグレモリーを咎める言葉を吐き出そうとするが、時はすでに遅し。彼女の勢いに負け、思わず躓きながら寺の敷地内に入ってしまった。

 寺の敷地に一歩踏み出した時、なんとなく何かが変わったように思えた。こう……言葉にするのは難しいが、皮膚を刺すような感覚だ。全神経が外部刺激に反応してしまう。境内の空気が一気に張り詰め、逃げ場が消えたように感じた。

 

 

 ——その時だった。



 チュンが声を上げる。なんだ?と疑問を感じる間もなく、”何か”が目の前に勢いよく降りてくる。俺は護符の反動で咄嗟に避けようと、その"何か"を蹴ろうとした。しかし、その動きは見抜かれていたようだった。

 避ける動きをする前に、素早くその"何か"が俺の腕を思いっきり掴む。そして素早く後ろ手にすると、身体の重みを利用し俺の身体を地面に押し付けた。その時、線香と煤が交じり合った匂いが鼻をかすめた。線香……ということは寺の人間だろうか?

 だが冷静に判断している場合じゃない。これじゃあ、いつ殺されてもおかしくない。必死に抜け出そうと力を籠めるが、逆効果だったみたいで尚のこと束縛を強くしただけだった。

 俺は早急に今の状況をなんとかできる方法を必死で考えた。

 

 すると視界の端で人影が跳ねたと思えば、上から何かの影が大きく覆いかぶさった。

 不思議に思ったときには既に遅く、俺の真横には鉄製の棺桶が地面に叩きつけられており境内の石畳が凹んでいた。

 "何か"は別の人物からの急な反撃に驚いたのか、思わず俺の拘束を解いてしまい素早く後ろへ下がる。

 拘束からようやく解かれた俺は冷や汗をかいていた。それは先ほどの襲撃のせいではなく、鉄製の棺桶を真横に叩きつけられたことによる恐怖心からだった。もし打ちどころが悪ければ2回目の死を迎えるところだ。自分のもしもの有様が頭に浮かんでしまい、つい口を押える。

 

 恐らく棺桶を振り上げたのは景春(ケイシュン)だろう……。助けてくれたのだろうか?いや、目の前で動く"何か"が目障りだったから潰そうとしたのかもしれない。

 どうやら彼にとって自分の存在はハエと同等のようだ。行動は口ほどに物を言うとはこのことかと、苦いくらいに思い知ってしまった。

 せめてグレモリーが止めろよ!!……いや期待するだけ無駄か。あの女は、この状況すらニタニタ笑っているだろう。彼女の表情は、ここからよく見えないが見ないほうがいいだろう。怒りに火をつけるだけだ。

 

 

 顔を真っ青にしながらヨロヨロと起き上がり、奇襲をしてきた"何か"をようやく瞳に収める。それは俺よりも少し年上に見える、景春(ケイシュン)と同じように額に札を貼っている女だった。

 その女は、俺の姿を見るや否や本殿に向かってデカい声をかける。その態度からして、寺の関係者だろう。




玄境(ゲンキョウ)やっぱあかんかった!どないしょう!」

 


 

 とても快活な声だった。それに、なんだか変わった話し方をしていると思った。

 彼女はどこか違う土地から来た者だろうか?でもこんな独特の言葉のイントネーションは、今この瞬間初めて聞いた気がする。

 そんな声を聞いて慌てて駆け付けたのか、道士服の大柄な男が大げさな足音を立てながら本殿から出てくる。彼はしばらく周りを伺うと頭をポリポリ掻きながら、溜息をつく。まるで結末を分かっていたかのような、心の奥に燻っている感情を吐き出すように。

 態度とは裏腹に、あっけらかんとした口調で男が口を開く。




「あらら……取り逃しちまったか」


 

 

 彼は快活そうな女に後ろへ下がれというように軽く肩を叩いて、その場からどかした。彼女は「後は頼むわ〜」とか言いながら、さっさと何処かへ行ってしまう。

 そんな彼女と入れ違いで、玄境(ゲンキョウ)と呼ばれた男が偉そうに腕を組みながら目の前に立つ。すると今まで後ろで面白がっていたグレモリーは何かを察したようで、ケラケラ笑いながら馴れ馴れしく彼に声をかける。




「随分手荒いんじゃない?」


「折角悪鬼(アンタ)を標本にできると思ったんだがな……残念だ」

 

 

 

 恐らくグレモリーは玄境(ゲンキョウ)と関わり合いがあるのだろう。なるほど、おすすめスポットだと言い切った理由も今なら何となく理解できる。でもどうやら、彼女と彼の仲はそんなによろしくないみたいだ。

 そしてグレモリーは自身を捕えるために、玄境(ゲンキョウ)が罠を張ってることを知っていたのだろう。だから俺を先に行かせようとした。

 なんとなく胸の奥に、言葉にできないマグマのような怒りが溜まっていくのを感じる。

 

 俺は悔しさを滲ませながらグレモリーを睨みつけた。睨みつけるだけじゃ物足りないけども、暴力を振るうことはしたくなかったので拳をギュッと握りしめる。

 しかし残念ながらグレモリーは、そんな視線を軽く無視をする。所詮は(ペット)の眼差し。彼女にとっては、蚊に刺されたくらいにしか思われないだろう。

 

 玄境(ゲンキョウ)は、そんな睨みつける俺に気が付いたらしく、話をこちらへ振ってくる。

 見た目は生臭坊主って感じなのに、場を転がすのが意外と上手い。軽めの謝罪を踏まえたうえで、本題に切り込んでくる。




 「あーすまんすまん、人違いだったなぁ……で?悪鬼なんかを連れた子供が何の用だ」




 玄境(ゲンキョウ)は睨みを利かせる。まさに部外者を牽制するかのように。

 腕組みをしたまま動かないのは、手を出さなくてもお前らなど敵ではないという意思の表れなのだろうか?彼の気迫に蹴落とされる感覚がした。

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