14[LOG] PM16:00 /
月水金の週三更新
大体夜の11時10分ごろを目安に更新していきます
寺へ向かうためグレモリーに案内されるがままついて行ってたから、最初は気が付かなかった。
グレモリーが何かに気が付き、いきなり止まる。何も言わないまま止まるもんだから、俺は思わずぶつかりそうになる。せめて一言言ってくれ。
そして来た道を少し戻る。何事かと思い、振り返ると景春が反対の道を歩んでいるのに気が付く。彼女は困ったような声で咎める。
「あれれ?どこ行くの?お寺はこっちだよ?」
「なんでテメェに付いてかなきゃいけねぇんだよ……行くなら勝手に行けよ、俺は行かねぇ」
記憶が滅茶苦茶になっても、性格がそんなに変わらないのを知れたのは嬉しい。だが単独行動になりがちなところもそのままだったみたいだ。いや……記憶がごちゃごちゃになってしまった反動で、なお悪化してる気がする。
彼的には、どうでもいい奴らしかいないので共に目的地に行く義理もないのだろう。馴染み深かった彼に「どうでもいい奴」だと判断されたのは、物寂しいが仕方ないことだ。
でも、ここで逸れておいたほうが景春自身のことを考えれば正しいことなのかもしれない。恐らく、俺とグレモリーは【天】の軍部から目をつけられている。だから、これ以上巻き込みたくなかったら引き留めないほうがいいんだ。
俺と李沈との思い出すら無いなら、何にも悲しくないと思うしな……うん。
しかし、そんな俺とは違いグレモリーは何かにしばらく悩む。そして何かに閃いたかのように瞳を輝かせて景春に言う。
「あっ!わかった!まだ分かってないんでしょ?私が君のご主人様ってこと!」
「はぁ??何言ってんだテメェ」
「言わなかった私が悪いよね?ごめんごめん、あのね?君は単独行動できないよん?
細かいことは省くけど、あんま離れちゃうと死んじゃうぞ!だから分かりやすく名前つけてあげたじゃーん!私と君は同類だって証♪」
今、物凄い言葉が聞こえたような気がする。いやグレモリーが後出ししてくるのは、迷惑なことにいつものことだけど。
離れると死んじゃう——その言葉だけが頭の中で浮いて、意味を結ばない。ちょ、ちょっと待ってくれ……!俺は頭を抱えながら、ついつい二人の会話に口を挟んでしまった。部外者の俺が割り入るのは申し訳ないと思うが、そうは言ってられない。
「おい!離れると死ぬってなんだよ!景春は生き返ったんじゃないのか?」
「死んだ肉体が蘇ったからって簡単に自分で動けると思う?それに私は道士じゃないから完璧な召鬼法はできないんだよ~ん!だから離れると札が身体を維持できなくて死んじゃうの!多分!!」
「”多分”に力を籠めるな!!」
不確定な言い回しが命を弄んでるように感じてしまい、つい言葉を強めてしまう。だが”多分”という語彙が一番力強かったのは、きっと本心なのだろう。
どうやらグレモリーにも正直分かってない部分があるみたいだ。彼女の言い分を信じるならば、景春を生き返らせるため使用した技術は道士と呼ばれる連中が使う召鬼法を基にしてる……と思われる。
残念ながら、俺自身も機械ばかりと向き合ってきたので詳しくは分からない。
だけど、それならば寺にいると思わしき道士たちに聞いたら記憶すらも何とかなるんじゃないかとふと思いつく。多分そう簡単じゃないと思うが、少なくとも離れたら死んでしまうとかいう不安定な状況からは脱することができる……かもしれない!
そんな俺は単純な思考に突き動かされ、どうやって言うことを聞かない彼を寺まで誘導してやろうか考える。だが、くだらない思惑を巡らせてる間にもグレモリーは俺と景春を無視して再びずんずんと進み始めてしまった。
俺は、少し待って欲しいと言おうと小走りで彼女に伝えようとする。だけど……その間にも景春が去ってしまうかもしれない。
視線から消えないよう、そっと彼の方を見ると物凄く不服な表情を浮かべてた。彼は別の方向に足を向けようとするが、咄嗟に踏み出すのをやめてしまった。
その際、札に書かれた文字が仄かに光っているのが見えた。恐らく、命令にそぐわない行動をすると電気信号とかが流れて痺れを感じるのかもしれない。つくづくグレモリーの技術は、この世界では見ることがない異質さを感じられる。
どうしても景春のことが何となく放っておけなくて、声をかけようかと近づいた。しかしそんな俺の横を、彼はスッと通り過ぎる。その時、舌打ちが聞こえたのは聞き間違いじゃないだろう。
景春は不機嫌な表情のまま、無言で彼女の後をついて行ってしまった。なんとなく伸ばした手が行き場を失う。そんな俺の様子を見てチュンがこっそり述べる。
『PPP……別に気にしなくていいでしょ……PPP』
「………………そうだな」
俺は空振りで終わった手を握りしめる。何か言ってやれば良かったのかもしれない。
でも励ましや慰めの言葉など、今の彼にとっては不要なモノだろう……深く考えると何となく気分が落ち込んできたので、頭を振り感情を吹き飛ばす。
そして俺は、改めてグレモリーの後を追うことに専念した。自らの重い足を動かすたびに、暗闇に染まりそうな空が迫ってきてる。
その様子が、俺の未来を暗示するように見えて怖くて仕方なかった。




