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中学~大学までの健太の日記  作者: 蔓草登上
12/13

寿樹とおぼろ月夜 前編

挿絵(By みてみん)


まだ、如月じいが生きていた頃の 初々しい僕と寿樹のお話です。

僕は、寿樹の仕事が気になって 休みにはお屋敷へ訪れます。

寿樹には来なくていいと言われるので、こっそり如月じいに入れてもらっている日を過ごしていました。





 寿樹じゅきが 縁側えんがわで月を眺めている。

健太けんたは 如月きさらぎじいに 寿樹の居場所を案内してもらっていた。


「寿樹……。」

声を掛けると 満月に照らされた寿樹の横顔が こちらを振り向いた。


夜に浮き立つような 白い肌。

こっくりとした瞳は 僕を見つめてくれたことが 嬉しかった。


「健太か。」

いつもの おきまり文句だ。


「明日から休みだから 来ちゃった。明日、忙しい?」

「いや、仕事は入っておらぬ。」


(じゃあ、僕と桜見にでも行こうか?)と言いたかったが、前回も断られているのでやめといた。


僕は そっと 寿樹の隣に座った。

「桜 見れるといいね。」

「花見の事か?」

寿樹の方へ顔を合わせた

「うん」

寿樹は 少し考えるようにか 遠くの月を見た。


「明日は雨かな。」

「え?雨じゃないよ天気予報見て来たよ。」

ちゃっかり デートがしたくて土日の天気はおさえてきている健太。


「ほれ、月はかなりのおぼろ月じゃ。」

寿樹は満月のふちが ぼんやりとぼやけている事を指した。

健太は ぼんやりとした満月を眺めては 明日 雨が降りませんように祈った。


「明日、雨だったら なにするの?」

「屋敷の中で 人形ひとかた作り。」

「僕も 手伝うよ。」

「じゃあ、健太に任せる。」

「え?寿樹は一緒にやらないの?」

「ちと、勉学せねばならん。」

「ふうーん、神主の学校卒業したのに、まだ勉強?」

「勉強会というのが 後にずっとある。」

「まるで、お医者さんみたいだね。」

寿樹は 美しい顔で 僕をじっと見つめる。


あぁ、そのまま僕にキスしてくれたら いいのになぁ。

ぼんやり妄想していると

「お前の顔も 満月みたいだな。」

と言ったので 少し膨れた。


確かに 丸顔の童顔って言われるけど 満月と言われたのは 初めてだ。

笑って 席を立つ寿樹に おいて行かれないように 後をついて行く健太。


食卓で如月じいにむかって

「のう、また健太が来た。」

と愚痴る寿樹。

「いいじゃないですか。せっかく登って来てくださってるんですから。」


寿樹の神社は 山一つ分ある。

下の村の 宿坊しゅくぼうのバス停を最後に もう上がって来る手段は 歩きか車しかない。


健太は 中学の頃から寿樹のお屋敷は通っていたので 何てことなかったのだ。


「健太さんは 皿洗いに洗濯手伝って下さります。じいは大変助かっておりますよ。」

「助かっているのは じいだけだろ?」

「まぁ……。」

「よい、先に風呂入って来る。」

寿樹が風呂場へ消えると。


「スミマセンね、口が悪くて。」

「大丈夫です。寿樹とは中学からの仲なんで。それより、如月さんにいつもお世話になって申し訳ありません。」

「あの性格ですから、未だに健太さんしかお友達は居ないんです。寿樹さまを宜しくお願いしますね。」

とは 如月じいから良く聞いていた言葉だった。

 こんな当たり前の日常会話が まるで遺言のように あの世へ去ってしまうなんて この時の健太には到底考えもしなかった。


 湯上りの寿樹は 髪を乾かすのに時間がかかるので 僕が手伝おうとしたら 怒られた。


 如月じいに呼び止められて 風呂に入る事を進められた。

ちょっぴり嬉しかった。

いや、 本当は 凄く嬉しかった。でもそんな事 あからさまにすると 僕はただの変態になるので ここは自分で抑えておいた。

 寿樹の後の お風呂なんて 別に 珍しくない。昔から 入っていたし。

寿樹のお屋敷のお風呂は 湧き水を沸かしているので かけ流し状態だった。


 僕が お風呂から出る頃に みんな食卓に揃う形となった。

もちろん 弦賀つるがさんも居る。

真正家しんせけは 寿樹をはじめとし、 如月じいと側近の弦賀さんがいて神社をまかなっている。

土日だけ、村の巫女さんと掃除の方が手伝いに来ている。


 寿樹は神主の勉強中、側近の弦賀さんは 神職にはあまり携わってないように見えた。昔から寿樹の健康診断や健康面を面倒見ている、まるで主治医みたいだった。なにか 他に仕事を持っているようで いつもプレハブ小屋で過ごしている。如月じいは、寿樹の面倒を看る役目で、神社の事を教えているのは全て如月じいであった。

 寿樹が 神主の資格を取るまでは 如月じいが宮司ぐうじの位置だったと思えるのだが、寿樹は生まれ持っての神童しんどうだったので、寿樹が一番偉い位置に変わりはなかった。


 夕飯を全員で囲むと如月じいが言った。

「寿樹様、明日赤城家あかぎけの方へ頼まれごとをお願いしたいと思うのですが。」

「仕事か?」

「いえ、私服で構いませんので、恭司郎きょうしろう様にお届けモノを……。」

「そんなの 誰でもいけるじゃないか。」

「あいにく 手がふさがっておりまして。」

弦賀も頭を下げる。

「道中長いので 健太さんと一緒に行かれたらどうです?」

「んなっ!」

驚く寿樹に

「僕も行っていいんですか!?」

と健太が寿樹の声をかき消した。

「寿樹様の 護衛とはいきませんが 道中宜しくお願いしてもいいですか?」

「もちろんです!護衛でもなんでもします!」

健太は喜んだ。






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