第8話 再会、死の刻印
ユニークアクセス3日で1000件近いです。このVRMMOで転生物ってジャンルは本当に人気なのだなーと実感中。たしなみ程度に書きだしましたが、少しでも面白くできるようがんばってみます。
王都エド
到着した俺はブルック退治を優先したことを後悔していた。
「街中ゾンビだらけじゃねえか!」
肉屋の店先で、大量の人肉を裁くゾンビ店主、防具屋は人骨でできた防具を精製、衛兵に至っては魔王城にいた骸骨騎士になっていた。
オオオオオオオオ
どこからともなくうめき声が聞こえる。いたるところでゾンビが闊歩しているのだった。
「リル・・・無事でいてくれ!!」
サーバー停止の直前までいた場所は王都のギルドハウスの屋上だった。
ギルドハウスには凍結していなければペットがいるはず。
走る俺に横手からゾンビがつかみかかろうとする。
「邪魔だ!」
横なぎの一撃は過たずゾンビの上半身を消し飛ばす。しかし今度は背後からゾンビがつかみかかろうとする。それを感覚で察知した俺は範囲スキル・サイクロンバスターで巻き込み、半径10m以内のゾンビを文字通り血煙に変える。
そんなことを繰り返しながらようやくたどり着いたギルドハウスの入口には、見慣れた顔の男が腹から血を流し座り込んでいた。
「ショウ、お前もこっちに来ていたのか・・・待ってろ、今回復薬をわけてやるからな」
「ザムか?すまん、もう目が見えん。俺はダメそうだ・・」
ショウの顔色は土気色になっている。急がないとまずい。
「しゃべるな。これを飲め」
とっておき中のとっておき、エリクサーという奴だ。
「う、ごほっげほっオヴェエエエエエエエエ・・・死ぬかと思った!!!」
ちなみにエリクサーは地獄のドブに住むゴキブリみたいな悪魔の小便よりまずいと言われる。というか死体に飲ますとまずすぎて跳ね起きるほどの不味さを誇る。ただし回復効果は大神官のヒールを軽く凌駕する。ゲーム中100本ばかり入手したが、余りのまずさにまったく使わずにとっておいたのが幸いした。残りの98本はインベントリで再び眠りについていることだろう。
「治ったか。お前ほどの奴がゾンビ相手にどうしてそんなひん死になっていたんだ?」
ショウはレベル1500、うちのギルド内でも戦闘グループに分類されていたガンナーだ。普通に考えてあのゾンビが1000匹いても負けると思えない。
「ああ、それなんだがな・・・俺はギルドハウスを守っていたんだが、一緒にいたシンシアがいきなりゾンビになって襲ってきた。おまけにチート能力持ちのゾンビになっている。詳しくはわからないが、誘導弾系か必中系の能力っぽい。どうしていいかわからなくてとまどってたら腹をぶち抜かれて死ぬ寸前だったってわけだ」
「シンシアが・・・死んだのか。なあ、こっちの世界に来ている奴らって多くないか?俺はリアルで死んだらしいんだが・・・ショウ、お前もか?」
死んだ奴がこっちに転生しているというのはわかるのだが・・・どうにも人数が多すぎる。俺は気になったことを聞いてみた。
「いや、俺は生きてるはずだ。ゲームが終わったあと何日かして、サーバーが復活しているって話が広まってさ、ただログインしたらリアルには戻れないがどうするか聞かれるって話だった。俺はほら、リアルなんてクソくらえのひきこもりだったろ?向こうに未練ないからこっちにきたんだが、他も同じような手合いじゃないかな?」
よからぬ新事実が判明してしまった。この先もプレイヤーと遭遇する危険が高い。白いモンスターだけでも厄介なのに自分勝手な人間が大量にいるとなると先が思いやられる。
「なるほど、腐敗王もその系統か。ウラガーで会ったプレイヤーに聞いたが、王都は現在腐敗王の支配下らしい。シンシアのゾンビをどうにかできるかはわからないが、腐敗王をなんとかしないとゾンビ祭り続行だ」
「シンシア・・・俺を倒した後にどっかいっちまったんだよな。どうにかならねえかな・・・あ、大事なこと思い出した!」
「なんだ?」
「リルのことなんだが・・・」
「そうだ、リルは無事か!?俺はリルを探しに来たんだ!!」
つかみかかって聞いた俺にショウは言いにくそうに話を続けた。
「それがな、起きないんだよ。ギルドハウスの屋上に倒れてたからベッドに寝かしてあるんだが、まったくうんともすんとも言わなくてさ」
「起きない・・・まさか」
俺はギルドハウスに駆け込んだ。リルの眠る部屋まで行き、俺は安堵した。
リルは安らかに寝ていた。規則正しく上下する胸、苦しげない寝息。どうやら無事ではあるらしい。近づいて名前を呼ぶ。
「リル、迎えにきた、ザムだよ」
起きない。そっと額にかかる髪をはらって熱がないか触れようとして、その額に本来ないはずの刻印があることに俺は気が付いた。
「な、起きないだろう?」
ショウが遅れて入ってきた。
「ショウ、腐敗王を速攻でぶち殺しに行くから手伝ってくれ!」
「いきなりどうしたよ!?」
リルの額の刻印は時限性アンデッド製造刻印だった。
「時間がたつとリルがアンデッド化しちまう。腐敗王の奴、アンデッド製造刻印をばらまいてやがるぞ!!」
ショウの表情が青ざめる。
「げ、俺達も時間がたつとやばいじゃん!」
アンデッド製造刻印とは、本来墓地などに微小の呪印を雨のごとく降らせ、アンデッドを製造するスキルである。しかしこのスキルの本当に恐ろしいところは、時間をかけることで生きている対象もゾンビ化させることが可能という極悪スキルの一つだった。
解除するためには使用者を殺害するしかない。
「リル、もう少しの辛抱だからね、行ってくるよ。ポチ、いるか!?」
ポチというのはこのギルドハウスの番犬替わりのグレーターデーモンだ。犬みたいな顔しているからポチだ。
「御意」
天井からぬるぬると出てくるポチ。顔の割に体は筋肉ごりもりのマッチョで、蝙蝠のような翼を生やし、青い鬼火を連れて出てくるさまは正しく悪魔そのものである。
「留守中リルを守ってくれ。近づく奴は警告後に殺害してかまわん。魂も自由にしていい。ただしリルに何もないようにな」
「委細承知」
グレーターデーモンはレベル1400相当の大悪魔だ。プレイヤー相手でも俺が戻るくらいまでの間ここを守備することができるだろう。
俺とショウは王宮に向かった。




