番外編1 腐敗の王
王都エド
ザムがウラガーに到着する数日前
「ソウルスティール!!」
宵闇色のローブに包まれた怪しげな魔術師がそう叫ぶと同時に白いモンスター達は魂を抜かれたようにバタバタと倒れ消滅していく。
クワガタを6m程に大きくしたような白いモンスターが地面から飛び出し、ローブの裾を切り裂く。
体勢を崩した魔術師は地面に手をついて魔力を流し込む。
「サモンアンデッドナイト!行けい!!」
怪しげな光がいくつも魔方陣を作りだし、魔王城にいた骸骨騎士達とほぼ同性能のアンデッドナイトを召喚する。
クワガタに突撃するアンデッドナイト達、一番槍とばかりに突出したアンデッドナイトが切りかかる寸前で大あごに両断される。
「この白いモンスター、強いな!!僕のアンデッドナイトが単体じゃ勝てないなんて・・・おもしろすぎる」
その後にスクラムを組むようにして突撃した残りのアンデッドナイト達だったが、大あごの一振りですべてなぎ倒されてしまう。
「ならばこれだ、腐敗の沼地で蕩けて死ね」
先ほどと同様に地面に手を触れると、そこからクワガタまでの地面がほとんど泥沼と化した。おまけに泥沼は強烈なガスを発生しながら腐敗していく。
クワガタの表面を泥が覆っていき腐らせるが、クワガタは羽を展開して羽ばたくと泥をはじいてしまった。
泥の触れていた部分は溶けて中の組織が見えている。
「しぶといね、アゴニーインフェルノ!!」
魔術師は無数の死霊を集め、それを凝縮した塊が怨嗟と慟哭をまき散らしながらクワガタに殺到する。
さすがのクワガタもこの攻撃には耐えきれず、黒い灰となって消滅した。
「この力は素晴らしい!!現実の僕は死んでしまったらしいから、本当の意味での死霊魔術師に生まれ変わった僕にふさわしい力だ!!」
動くものがいなくなった王都で魔術師は快哉を上げた。
「さてと、神からもらった能力もためしておくか」
未だ解凍されない王都の民に指を向ける魔術師。次の瞬間・・・・何も起こることはなかった。
「あれ?そうか、固まってる奴にはきかないんだな?動き始めたらみんなアンデッドに変えてやるから楽しみにしててね」
残念そうな魔術師の背後から若い女が声をかける。
女の身なりは狩人といったところか?弓を持っているがその身体はいたるところに穴が開いていて今にも死にそうだ。
「た、すけて・・・回復手段がないの」
泣きながら女は座りこんだ。
魔術師はすぐに気が付いた。この女もプレイヤーだと。同時にチート能力持ってるくせになんでこんなところで死にかけているのかと疑問がわいてきた。
「なんで死にそうなの?」
「白い、モンスター・・・。みたこともない大型のドラゴンみたいな奴に襲われた」
魔術師は胸が高鳴るのを覚えた。そのドラゴンみたいな奴を倒して、その死体で家具を作りたいと思った。
「ふーん、ありがと。今楽にしてあげるからね」
「え?」
指先を女に向けると、女は皮膚がずるずると溶け腐り、あっという間にゾンビとなった。
「うーん?レベルが低かったのかな?出来がいまいちだね。でもこれで楽でしょ?」
「・・・・」
ゾンビと化した女は白濁した眼球で虚空を見上げていた。何をしていたのかも最早わからないのだろう。
「うん、鈍いね。まあいっか」
作ったら興味を失ったと魔術師はそのままゾンビを放置して王宮を目指す。
「あのお城の地下、僕のダンジョンにしちゃおう」




