番外編その2
ザムとリルのお話が動き始める中で、それぞれのプレイヤーが思惑を持って動き始めます。
ヴォルガーはクソの話をするのが好きだ。
「おうおう、見ろよハマジー?クソ共がクソみたいな顔してクソったれてやがるぞ」
そう言われたハマジーはすぐ横にいた白いサソリのようなモンスターにヤクザキックをぶちこみながら言う。
「そいつはちょっと違うな。こいつに関してはもうクソったれてた・・・だ。他の奴もすぐ同じことになるだろう」
がすがす、ぐしゅぐしゅと音を立てながら潰れていくサソリ。
「気を付けてくださいよー?お二人のチート能力って灰汁が強いんですから、ちゃんと考えないとすぐ死んじゃうかもですよー」
「クソみてえなこというなよシュライン」
シュラインと呼ばれた女は肩をすくめてみせる。
異様な三人だった。ヴォルガーはバイキングやハイランダーのような金髪、髭もじゃの典型的な白人。装備は正しくそれらのごとく、ラウンドシールドとバトルアクス。ハマジーは細見の燕尾服のようなものに刺繍がされた貴族の夜会服然としたものを着ている。ヴォルガーが金髪を伸ばし放題にしているだけなのに対し、ハマジーは黒い総髪をしっかりと撫で付けオールバックにしている。
シュラインは修道女のようなシルエットの服を着ているが、よく見るとスリットがいたるところに入っており、それを要所でベルトを使い縛り上げていた。ボンデージファッションの一種だろう。おまけにその手に持つ本は、聖書ではなく人皮で装丁された魔本だった。
「どうでもいいけどよ、このクソ共を全部片付けたら自分のクソ領地とか切り取っていいんだろうか?」
ヴォルガーは自分が領主になって毎日クソったれな領民とクソったれなイベントを起こして盛り上がれればいいと考えていた。具体的には酒をかっくらって死ぬほど暴れてクソして寝る。これだけだ。
「そうだな、どうせみんな好き勝手やってるはずだ。NPCの処遇に関してはどうとでもなるだろう。しかしプレイヤーには気をつけねばならんぞ」
ハマジーは破壊癖がある。とにかく乱暴者なのでゲーム内でもよく公共物破損からの衛兵に指名手配されるということがあった。無論哀れな衛兵は公共物と同じ運命をたどったのだが。そんな彼は自分の邪魔が入らない街を欲した。
「私は自分の教会がほしいですねー」
むろん崇拝するのは邪神である。普通の街に立てればすぐに官憲の手が入り捕縛されるだろう。今までも何度かあったがその旅に衛兵が供物としてささげられている。
「情報屋の話によると王都近辺はあらかた名だたるメンバーによって解放されたそうだ」
いつの間にか移動していたハマジーは白いサルのようなモンスターをふみつけ、先ほどと同じように粉砕する。
ハマジーのチート能力は時間停止。ほんの一瞬だけ時間を止めてその間に好き放題できる能力。今も一瞬で踏みつけるまえに数百回踏みつけている。解放するとまとめてダメージが集中し、まるで一撃でぐしゃぐしゃにしたかのような効果を出す。
「け、クソッタレどもだ。俺らより早いとかクソすぎる現状だな」
ぼりぼりと髭をかきむしりながらヴォルガーは近づいてきた白いワームのようなモンスターを両断する。
ヴォルガーのチート能力は一刀両断。どんなものでも切り裂ける。
直後に白いサーベルタイガーのような大型獣がヴォルガーの腕を食いちぎっていく。
「油断しちゃだめですよー」
シュラインの回復魔法が発動し、完全に腕を生え変わらせる。それと同時に大型獣は腹から破裂し、更に肉塊になっていく。
シュラインのチート能力はヒールした分だけ相手にダメージを自動で付与する能力だった。最大の防御と攻撃をヒールだけで一本化している。
ヴォルガーがいれば一撃必殺が狙え、おまけに盾になる。ハマジーが先制することですべての流れがPT有利に傾く。シュラインが回復するかぎり相手はじり貧となる。かなりのレベルの連携だった。
「いっそのこと、俺らもクソ帝国領奪還、いってみるか?」
「土地も余っているだろうしな。切り取り甲斐も多そうだ」
「いっちゃいましょうかー」
こうして3人のプレイヤーは王都近辺を離れた。




