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外伝『ラスト・フォーエバー』

 第一節:立ってたのが間違いだった


 俺は今、ヴィリスの魔弾を食らって、地面に埋まっている。


 いや、正確には《エイシェントグレイス》で直撃そのものは防いだ。

 防いだのだが――地面が耐えなかった。


「いてて……背中から根っこ生えそうだ……」


 大穴の底でぼやきながら、ひとまず骨の本数を確認する。

 左腕、感覚あり。右足、痺れてるけど動く。歯もだいたいある。

 うん、生きてる。


 それにしても。


 まさかヴィリスが、“あんな名前”の全力魔弾をぶっ放してくるとは思わなかった。


「ラスト・フォーエバー、って……いや、うん……語感すごいな」


 けど。


 威力も、語感も、桁違いだった。



---


第二節:あの女、本気すぎる


 なんとか地上に這い上がると、ヴィリスが仁王立ちしていた。


「立った……!?」


 驚愕と動揺を隠せないその顔は、正直ちょっとかわいい。

 だが、そんなことを言ったら二発目が飛んできそうなので黙っておく。


 彼女の周囲には、まだ魔力の余韻が残っていた。

 地面は抉れ、空気は焼けたみたいに張りつめている。

 なのに村の方角には何ひとつ飛ばしていない。

 あれだけの威力を、一点にだけ叩きつけるとか、どういう制御だよ。


「お前……あれ、本気だったな?」


「当たり前でしょ……っ!」


 顔を赤らめながら叫ぶヴィリス。


「だって、ちゃたろ〜が“来る”ってわかってたんだから……」


 あの時、彼女の目は真剣だった。

 でも、その奥に別の震えがあったのも、俺は見逃さなかった。


(……怖かったんだろ、きっと)


 俺が行くことも、

 立ち向かうことも、

 それから、自分が“本気を出してしまう”ことも。



---


第三節:ぎりぎりの、優しさ


「ありがとう、ヴィリス」


 そう言った瞬間、彼女はそっぽを向いた。

 顔が真っ赤だ。ぷいっとした仕草が妙にかわいい。

 けど、やっぱり言わない。生き延びるために。


「行けばいいでしょ、もう!」


 その言葉の裏に、

 “ここまで来たお前を止められなかった”って悔しさと、

 “ここまで来てくれて少し安心した”って気持ちが混じってるのがわかった。


「サナのこと、任せてもいい?」


「……あたりまえよ。あの子は、私の監視対象なんだから」


 背を向けた彼女の歩みは、どこか少し早足だった。


「でも、無事に帰ってきなさい。そうじゃないと、報告書に困るから」


 言い訳みたいな言葉だったけど。

 たぶん、それが彼女なりの祈りなんだろう。



---


第四節:本当に怖かったのは


 俺は、あの魔弾の余韻が残る地面を見つめながら、小さく息を吐いた。


 正直、もうちょっとで意識が飛ぶところだった。

 背中は痛いし、腕は痺れてるし、たぶん明日になったら全身まとめて文句を言ってくる。

 あれはマジで“終わる”威力だった。

 おっかねえ。


 けど、それでも思う。


(あの人が、あれだけ本気で止めにきたってことは――)


 それだけ、サナのことも、俺のことも、本気で心配してくれてたってことだ。


 ……たぶん、俺よりずっと怖かったんだ。

 自分の力で、誰かを傷つけることが。


 でも俺は、ちゃんと立ってみせた。


 なら、今度は俺の番だ。


 “本気のバカ”が、

 “本気の想い”を通しに行く番だ。



---


 行くぞ、サナ。


 全身、いまだに痛ぇけど――


 俺は、この手で守りたい。

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