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【 第四話 / 前編】「完成」

数日後。


捜査本部。


会議室には重い空気が流れていた。


事件は5人目で止まっている。


だが、犯人はまだ捕まっていない。


上司「このまま待っていても動かない。」


刑事A「次の被害者を探している可能性があります。」


上司「囮作戦を行う。」


部屋が静まり返る。


結愛「私が行きます。」


誰もすぐには答えなかった。


それでも結愛は、まっすぐ前を見る。


結愛「犯人を捕まえます。」



夜。


住宅街。


結愛は普段着のまま歩いていた。


耳には小さなイヤホン。


周囲には私服刑事が配置されている。


刑事A(無線)「異常なし。」


結愛「了解。」


静かな道を歩く。


少し離れた場所。


街灯の光が届かない場所に、1人の男が立っていた。


カイトだった。


結愛は気付かない。


カイトは何も言わず、ただ結愛を見ていた。



背後から足音がした。


結愛が振り返る。


男が近付いてくる。


次の瞬間、白い布が口元を覆った。


薬品の匂い。


結愛「……っ。」


視界が暗くなる。


男は結愛を車へ乗せた。


車が走り去る。


カイトはその場から、静かに歩き出した。



目を開ける。


頭が重い。


体がうまく動かない。


起き上がろうとした時だった。


結愛「……痛っ。」


右手を見る。


小指に浅い傷。


血が少しだけ残っている。


嫌な予感がした。


ゆっくり服へ目を落とす。


白いワンピース。


息が止まる。


事件の被害者と同じ姿だった。



部屋の奥から男が現れた。


見た目は普通。


いや、


普通すぎる男だった。


犯人「目が覚めた?」


結愛は立ち上がる。


足がふらつく。


結愛「警察だ。」


犯人「知ってる。」


男はナイフを出す。


犯人「やっぱり。」


犯人「君が一番似合う。」


結愛は一気に踏み込んだ。


犯人の腕をつかむ。


投げようとする。


だが、ワンピースの裾が足に絡む。


体勢が崩れた。


犯人が結愛を押し倒す。


ナイフが振り上がる。


犯人「もう少しで完成なのに。」



その瞬間。


誰かが犯人の腕をつかんだ。


カイト「その子から離れてください。」


結愛は目を見開く。


結愛「……カイトさん?」


犯人がナイフを振る。


カイトは迷わず結愛の前へ出た。


腕に傷が走る。


それでも動かない。


カイト「もう安心してください。」


扉が勢いよく開く。


刑事A「警察だ!」


刑事たちが一斉に入る。


犯人はその場で取り押さえられた。


男は最後まで笑っていた。


犯人「残念。」


犯人「あと少しだったのに。」



数日後。


ニュースでは、連続殺人事件の解決が報じられていた。


結愛は仕事帰り、人形館を訪れる。


ベルが鳴る。


カイト「こんにちは。」


結愛「こんにちは。」


結愛は深く頭を下げる。


結愛「あの時は、本当にありがとうございました。」


カイト「無事で良かったです。」


結愛は少し笑った。


事件は終わった。


そう思えた。



展示室を歩く。


ガラスケースの中には、人形が静かに並んでいる。


木の匂い。


絵の具の匂い。


どこか懐かしい匂いがした。


結愛は足を止める。


カイト「どうしましたか?」


結愛「……なんだろう。」


結愛は少しだけ笑った。


結愛「懐かしい感じがして。」


カイト「懐かしい?」


結愛「小さい頃、父が仕事をしていた部屋も、こんな匂いがした気がします。」


少し間が空く。


結愛「あまり覚えてないんですけどね。」


カイトは静かに結愛を見ていた。


カイト「そうですか。」


その声は、どこか優しかった。



少し歩く。


カイトが足を止める。


カイト「もし良ければ。」


カイト「普段は誰にも見せないアトリエも見ていきませんか。」


結愛は少し驚く。


結愛「いいんですか?」


カイト「はい。」


カイト「あなたなら、見てもらいたいです。」


結愛は小さく笑う。


結愛「じゃあ、お言葉に甘えます。」


二人は地下へ続く階段を下りていった。


第4話 後編へ続く▶︎▶︎▶︎▶︎


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