↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/6

【 第二話 】「先生」

朝。


捜査一課。


会議室には重たい空気が流れていた。


連続殺人事件。


4人目の被害者が見つかった。


資料が配られる。


上司「状況を。」


科捜研「今回も被害者同士の関係は見つかっていません。」


刑事A「現場から新しい証拠もありません。」


上司「引き続き聞き込みを続ける。」


上司「小さな情報でも見逃すな。」


結愛「はい。」


会議は終わった。



夕方。


聞き込みを終えた結愛はデスクへ戻る。


机の上には人形館の資料。


自然とカイトの顔を思い出す。


優しい話し方。


落ち着いた笑顔。


事件とのつながりは見つからない。


それでも。


胸の奥の違和感だけは消えなかった。



仕事を終えた結愛は、叶衛と約束していた店へ向かった。


店へ入ると、奥の席で叶衛が手を振る。


叶衛「お疲れ。」


結愛「お疲れ、先生。」


向かいに座る。


飲み物を注文する。


料理が来るまで、他愛もない話が続いた。


ふと、結愛は叶衛を見る。


昔は眼鏡をかけていた。


黒髪で真面目な先生。


今はコンタクトに変わり、髪も明るく染めている。


最初に会った時は、本当に別人かと思った。


結愛「先生さ。」


叶衛「ん?」


結愛「髪まで染めちゃって。」


叶衛は笑いながら前髪を触る。


叶衛「そんなに変?」


結愛「似合ってるけど。」


少し笑う。


結愛「学校で怒られないの?」


叶衛「周りからは結構言われるよ。」


叶衛「『教師なんだから黒に戻せ。』って。」


結愛「やっぱり。」


叶衛「でも、生徒には受けがいい。」


結愛「そうなの?」


叶衛「『先生、その髪色かっこいい。』って。」


結愛「へぇ。」


叶衛「前より話しかけてもらえることが増えたかな。」


結愛「眼鏡なくなった時、本当に先生か分からなかった。」


叶衛「そこまで?」


結愛「うん。びっくりした。」


叶衛「ちょっと傷付くな。」


二人は顔を見合わせて笑った。



料理が運ばれてくる。


しばらくして叶衛が聞く。


叶衛「仕事は?」


結愛「全然進まない。」


叶衛「例の事件?」


結愛「うん。」


結愛はグラスを揺らしながら眺めていた。


結愛「この前、人形師さんのところへ話を聞きに行った。」


叶衛の手が少し止まる。


叶衛「……カイト先生?」


結愛「知ってるの?」


叶衛「俺を育ててくれた家族なんだ。」


結愛は少し驚く。


結愛「そうだったんだ。」


叶衛「小さい頃から人形館で育ったようなものだから。」


結愛「初めて聞いた。」


叶衛「聞かれなかったし。」


結愛は少し考える。


結愛「どんな人なの?」


叶衛「優しい人だよ。」


叶衛「人形を作り始めると周りが見えなくなるけど。」


叶衛「昔から変わらない。」


結愛は小さくうなずいた。


確かに。


そんな人にも見えた。



食事を終え、店を出る。


夜風が気持ちよく吹いていた。


叶衛「送るよ。」


結愛「悪いよ。」


叶衛「先生の言うこと聞け。」


結愛「まだ先生なんだ。」


叶衛「現役だからな。」


結愛は笑った。


結愛「じゃあ、お言葉に甘えます。」


二人は並んで歩き出す。


昔話をしたり、


学校の話をしたり。


仕事の話をしたり。


歩いている時間はあっという間だった。


途中、結愛はバッグからタバコを取り出した。


叶衛「また吸うの?」


結愛「1本だけ。」


ライターで火をつける。


白い煙が夜空へ消えていく。


叶衛「やめなよ。」


結愛「仕事終わりだけだから。」


叶衛「その一本が毎日なんだろ。」


結愛「先生みたい。」


叶衛「先生だから。」


結愛は思わず笑った。


結愛「その言葉、便利だね。」


叶衛「便利じゃない。」


叶衛「本当に心配してる。」


結愛はタバコを見つめる。


少しだけ申し訳なさそうに笑った。


結愛「そのうちね。」


叶衛「絶対言うと思った。」


二人は笑いながら歩いた。



気付けば結愛の家だった。


結愛「ありがとう。」


叶衛「ちゃんと鍵閉めろよ。」


結愛「子どもじゃないんだけど。」


叶衛「先生からしたら、今でも教え子だから。」


結愛は笑う。


結愛「その言葉、本当に昔から変わらないね。」


叶衛「変える理由もない。」


結愛は玄関の鍵を開ける。


ドアを開ける前に振り返る。


結愛「先生。」


叶衛「ん?」


結愛「今日はありがとう。」


叶衛「また連絡しろ。」


結愛「うん。」


叶衛「おやすみ。」


結愛「おやすみ。」


玄関のドアが閉まる。


家の明かりがついた。


叶衛はその明かりを見届ける。


静かにスマートフォンを取り出す。


短く文字を打つ。


問題ありません。


送信。


数秒後。


既読が付く。


叶衛はスマートフォンをしまう。


そして何事もなかったように、夜の道を歩き出した。


第3話へ続く▶︎▶︎


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。