115話
どうする!?
俺は今ドラゴンの火球を避けつつ、どうやって戦うかを考えていた。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ドラゴンの方も、俺に火球を当てられなくて苛々してきているようだ。
もう既にドラゴンの火球は20発程放たれており、周りの地面は焦土と化している。
このままだと俺もそうなってしまうだろう。
その前に何とかしないといけない。
俺はそう思って走りながら考えているのだが、一向に思いつかない。
「くそっ!どうすればいいんだよ!」
俺は王化しているので、スピードではドラゴンに負けていない。しかし、俺の攻撃はドラゴンの皮膚によって弾かれてしまうので、何とか口内に攻撃するしかない。
だが、先程からドラゴンは飛んで上から火球を放つ攻撃しかしてこない。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「うおおおおおぉぉぉぉぉ!」
そのため、俺はドラゴンが放つ火球を避ける事しか出来ていない。
どうすんだよ!
そう思っていると……
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ドラゴンは、俺が進んでいる方向の壁に向かって火球を3発放ってきた。
やばい!?
俺はそこで急停止し、横に飛ぶ。
すると……
バアァァァァァン!
壁が抉れてしまった。
危ねえ。もう少しで燃えかすになるところだったぜ。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!」
ドラゴンは、今ので仕留められなかった事にかなり怒っているようだ。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ボン!ボン!ボン!
ドラゴンは、さらに3発の火球をこちらに向かって放ってくる。
こうなったら、一か八かだ。
俺は走って火球を避けると、王化を解く。
そして、新たに呪文を唱え始める。
「我、手にするは魔王の力」
「闇を纏い、光を飲み込む」
「我が魂、その力を使い」
「暗く深い闇の深淵へと葬り去る」
「サタン・ソウル・ドライブ!」
その瞬間、俺の体を闇が覆う。
そして闇が晴れると、俺は黒い光を纏って黒いマントを羽織った姿となっていた。刀も黒く染まっている。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ボン!ボン!ボン!
ドラゴンは、そんなものは関係ないとばかりに火球を3発放ってきた。
「はあああああ!」
俺は火球に対して刀を振るい、斬り裂く。
その瞬間……
バアァァァァァァァァァァン!
今までよりも大きな音が、この部屋全体に響いた。
俺が斬り裂いた火球と、残りの2つの火球が爆発したのだ。
「難波さん!?」
「そんな!?」
ローデンさんとケシリーさんの悲鳴じみた声が、やけに部屋に響く。
そして、煙が晴れると……
「……何とか耐えられたな」
俺はほぼ無傷で、その場で立っていた。
「難波さん!」
「生きてる!」
ローデンさんとケシリーさんは、一転して笑顔になる。
まだ笑うには早いんだよなあ。
俺はただ魔王化して防御力を高め、マントで全身を覆う事でドラゴンの火球を受け切っただけだ。ドラゴンを倒すための根本的な解決にはなっていない。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
俺が火球を受け切った事で、ドラゴンがさらに怒り出す。
そうだ、もっと怒れ。
俺が魔王化して、態々火球を受けたのにはもちろん理由がある。
それはドラゴンを怒らせる事だ。
そうする事でドラゴンが火球ではなく、直接こちらに向かって来るかもしれないと思ったからだ。
しかし……
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ボン!ボン!ボン!ボン!ボン!
ドラゴンは、火球を5つ放ってきた。
「なっ!?火球は1度に3発までじゃなかったのかよ!?」
俺は刀を振るい、火球を斬り裂く。
バアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!
一際大きな音が、部屋全体に響き渡る。
「難波さん!?」
「今度も大丈夫だよね!?」
そして、煙が晴れると……
「危ねえなあ……」
俺は何とか無事だった。
「無事みたい!」
「よかった!」
2人はそう言うが……
「くっ」
流石に火球を2発食らった事で、俺の肌は少し焼けていた。
それに、汗もすごい。
今までの火球で、部屋全体が熱されてきているため、かなり暑い。
「このままだとまずいな……」
俺はこのままだと、脱水症状になる。
そうなると、戦闘は続けられないだろう。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ドラゴンはかなり怒っているようで、火球を放つ準備をしている。
ボン!ボン!ボン!ボン!ボン!
俺は一旦その場から離れ、火球を避ける。
くそっ!どうする!?このまま戦い続けるか!?
その場合、早くしないとこっちがやられるだろう。
それとも……
「……いや、駄目だ」
一瞬、脳裏に一旦引くという言葉が浮かんだが、俺は頭を振ってその考えを消す。
「それをしたところで、次に勝てるか分からない」
ドラゴンも少しは傷ついて体力も消耗しているはずなので、今回で決めてしまいたい。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ドラゴンは、さらに火球を放ってくる。
俺はそれを走って避けながら、どうするか考える。
しかし、一向にいい考えが浮かんでこない。
「くそっ!詰みなのか!?」
俺の手札には、あのドラゴンを倒すための手段がない。
このままだと負ける。
そんな考えしか浮かんでこない。
この暑さとここまでの戦闘での疲労で、頭が回らなくなってきた。
そして遂に……
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ボン!ボン!ボン!ボン!ボン!
俺の前方と後方に火球が飛んで来た。
まずい!これは避けられない!
俺は迫り来る火球を見ている事しか出来ない。
ここまでなのか……
そう思った時だった。
「ヒヒーン!」
「うおっ!?」
バアァァァァァァァァァァン!
後方で火球が爆発する。
見ると、クロが俺のマントを咥えて走っていた。
「クロ!?」
どうしてここに!?
そう思っていると、クロは一旦止まり、俺を地面に下ろす。
「クロ……」
「グルル」
クロはその場で座り、俺に乗れと目で訴えかけてくる。
「……一緒に戦ってくれるのか?」
「……」
クロは無言だったが、その目は俺の事を真っ直ぐに見ていた。
「……分かった」
俺はそう言って、クロの背中に乗る。
「行くぞ!」
「ヒヒーン!」
そうして、クロは走り出したのだった。




