叔母
「ご両親に挨拶を…」
と言ったが、美有は、首を振った。
「母親にネグレクトされて、施設に入っていたの…」
と震える声で言うのを聞くと、青年も、挨拶なんてするものか…と思われた。
青年の家には挨拶に行った。妊娠のことは快く思われなかったが、美有の大人しさが受け入れられて、何とか話がまとまった。
青年が、体調不良の美有に代わって婚姻届の手続きをした時、ようやく美有の母親の旧姓も、「藤井」だと気付いた。何だか嫌な胸騒ぎを感じた。
「藤井美幸」
聞いたことがある気がした。美幸…みゆき…親父の妹と同じ名前…
青年は、まさかな、と思って美有に電話をかけた。美有は、
「婚姻届、出せた?」
と聞いてきた。
「うん…」
「ありがとう。」
「あのさ…」
「何?」
「美有のお母さんって…」
「えっ?」
「いいや…。」
美有に奏人という弟がいることも分かった。それについても聞いてみたかった。しかし、これ以上、家族のことを聞くのは…と憚られた。
それでも何か知りたいと思って、青年は実家に戻った。何気なく父親に、
「美幸おばさんにも連絡した方がいいのかな?」
と聞いた。
「はぁ?」
「いや、結婚のこと…。式もいずれしようかなって…」
「やめておけ。駆け落ち同然で出てったような奴だ。」
「おばさんの相手って…」
「何でそんなことを聞く?」
「いや…何か気になって…」
「…。高校の同級生だったかな…」
「へぇ…俺にもいとことかいるのかな…」
「一回、娘が産まれたって連絡よこしてきたな…」
「……。」
「俺の父さん、つまり、お前のおじいちゃんだな、あと、おばあちゃんも、無視だ…」
「そうなの?」
「出て行き方が酷かったからな…」
青年は、実の親子でも、掛け違ってしまえば、二度と会えないこともあるのだな、と思った。祖父母のことを、少し冷たくも思った。
「何か…壮絶だね…」
「身勝手なだけだ…」
「う、うん…」
父親は、お茶を一口飲んだ。
「お前も、できちゃった結婚なんて、うまくいかないよ。」
「え?」
「付き合って、半年で相手の何が分かる…」
「父さん!!」




