微笑み
「そうなんですか…。」
「ごめんなさい。不気味ですよね…。よくお見かけするので。」
「ああ…。大丈夫です…」
警戒と緊張の表情を浮かべる青年に、美有は、柔らかく微笑んだ。そして、揺れる電車の席に戻った。
青年は、どこか不自然さを感じながらも、きれいな女性に話しかけられた、事務の濵﨑さん…覚えておこう、と思った。
美有は、会社で青年に会うと、嬉しそうに微笑みかける。かと言って、馴れ馴れしく話しかけない。ただ、何か気にかけているような仕草を、決して怠らない。
青年は、美有に少しずつ惹かれ始めた。美有を奈良見物に誘ったが最後、その日のうちに、美有のペースに巻き込まれた。
青年は目覚めると、隣で美有が寝ているので、あれ?と思った。デート中は、美有が聞き役ばかりして、楽しんでくれているのか不安になる感じだった。しかし、いざ解散しようとしたら、
「藤井さん…」
と呼んで、寂しそうに黙る。
「どうしました?」
と聞いても、目を伏せるだけ。
「もう一軒、行きますか?」
と言うと、本当に嬉しそうに、
「はい!!」
と言ってきた。
そうだ、それで、お酒を飲んで…あれれ?
美有は、目覚めると、優しく微笑んだ。
「あ、あの…」
気まずそうにする青年に、美有は、
「仕事、間に合うかな…」
と言った。
「え?」
「今から帰って…着替えて…あれ?今日休み?」
「……。そうだよ。」
「そっか…じゃあ、もう少し寝かせて…」
青年は驚いた。私たち付き合ってるの?とか、遊びじゃないよね?とか、そんなことを聞かれると思っていたから。




