出会い
『投身』の続編です。よろしくお願いいたします。
美有は、しばらくずっとぼんやりとしていて、死のうとするのでは…?という周囲を拍子抜けさせた。死ぬための気力さえ残っていない、という感じだった。
美有は、ある日、急に、
「もう良いので、退院させてください…」
と言った。皆、楽観的にはなれなかった。いよいよ、死ぬ気だ、と思った。しかし、美有は、病院で雑誌を読んだり、養護施設の職員に頼んで本を持ってきてもらったりして、落ち着いて見えた。
ついに美有の退院の許可が下りた。退院後も、美有は、大人しく施設で過ごしていた。高卒認定の勉強を誰よりも真面目にしていた。しかし、メモを残してふっとどこかにいなくなって、周りを騒がせた後、何食わぬ顔で戻ってくることもあった。皆、美有に、心配をするから、勝手に外に出ないでほしい、と言った。そして、何をしているのか聞きたがった。美有は、ばつが悪そうに頷くだけだった。
美有は、高卒の資格を取った。施設から、就職のために外に出ることになった。美有は、
「さようなら…」
と全く気に留めていないようだった。美有は、奈良県の企業に就職した。施設の人は、奈良?何で?いつ決めたの?といろいろ聞きたがったが、またあの顔をするだけ…
就職した美有は、ある時、電車で青年に声をかけた。何気なく窓を見ていた青年に
「あの…」
と、美有は言った。
「は、はい?」
青年は、不審げに美有を見た。
「ごめんなさい…〇〇商事の…?」
「え…あ、はい…」
「私、事務の濵﨑です…」
「ああ…」
「私、東京から来て、右も左も分からなくて…同じ職場の人見つけてほっとしてしまって…お声がけしてしまいました。」
美有は、すっかり純粋な顔をしていた。きれいに化粧をしていた。実は、髪も、美容室に昨日、夜行ってセットしたのを、崩れないように寝て、保ったものだった。




