第六話 メインディッシュという名の羞恥プレイ
直接的ではありませんが、第三者の性的行為を連想させる描写があります。
こんにちは、クロウ・クローです。
千歳を超えた魔族なのに、アホみたいな服を着せられてます。
死んだ目が腐っていく気がする。
まずこの服。
裾の長さは足首くらいまでなんですが、両腰辺りからスリットが入っています。しかも下、ノーパンで。アホでしょ。黒地に高そうな赤色の刺繍が入ってるんだけど、その糸をスリット閉じるのに使えよ。
しかも靴を取り上げられて、足首にジャラジャラアクセサリーをつけられてる。逃走防止と、背後から接近されても気付くようにっていうアレでしょ?俺も用心深いタイプだから、わかるけどさ。
一方で上半身は、一応黒だけどめちゃくちゃシースルーでタイトなノースリーブ。俺の素敵なTKBが服の上からでもうっすら透けて見えてるじゃないか…。やめてよ…ママ上じゃないんだから…。ママ上、このアホみたいな服よりも更に布地面積が少ないのに堂々としてるのすごいな。俺とか、今すぐそこのカーテンに包まりたいくらいなのに。
ちなみに現在、目の前では俺と色違いの服を着た美青年が衆人環視の中スタフネルの王ライリダスとアレコレしています。
……嫌すぎる。興奮してる兵とかいるけど、他人のアレ見て何が楽しいんだ。まぁ、周囲に焚かれてる香のせいもあるんだろうけど。
俺は部屋の四隅に置かれた香炉に、そっと目を向けた。
月に一度の闘技大会。
兵たちに連行された俺は、まず身体を洗って服を着替えるように言われた。着替えたら、同じような服を着た青年たちが集められた部屋で待機。時々一人ずつ呼ばれて、連れて行かれる。この時点で何となく察しはついてたので、絶倫だなぁ、と思っていた。
俺が呼ばれたのは、部屋に俺ともう一人しかいなくなった頃だ。二人一緒に呼ばれて、コロシアムの長い廊下を歩く。参加者や観客の姿はない。おそらくこちらは王専用の通路なのだろう。
途中で何人か、アレな感じの汚れをつけ恍惚とした表情で運ばれていく青年とすれ違った。
スン、と鼻を鳴らす。
媚薬香のにおいだ。残り香として付着するなんて相当だなと思いながら、巨大な扉の前まで案内される。
扉が開くと、コロシアムの熱気が一気に雪崩れ込んできた。
王の席だから当然なんだけど。
試合を見るために誂えられた、豪奢な一室はまさに特等席だ。
闘技場を見下ろす前面は全て空いていて、熱気や舞い上がる土煙のにおいさえ感じる。天井には魔石で作られた赤いシャンデリアが吊り下げられ、床も壁も全てが赤色。闘技場を向いている大きな玉座まで真っ赤だった。正直、目が痛い。限度がある。アホでしょ。
ライリダスの姿は玉座に隠れてほとんど見えなかったけど、なんかユサユサ揺れてたから察した。
嫌すぎる。
耐えられるかな、俺。
部屋に入った後は、俺は後ろの方で待機になった。もう一人が先に王の前に連れて行かれて、今に至る。
闘技場での戦いは、佳境を迎えているようだった。俺の位置からは全然見えないんだけど、準決勝辺りらしい。
横にいた兵士の話によれば、俺は決勝のメインディッシュとのこと。王が相手を変えるたびに観客席から歓声が上がるんだとか。なんでだよ。戦いに集中しろよ。頑張ってる剣闘士たちが可哀想だろ。
第一、皆よく見えるな。…魔族の視力なら見えるか。俺も見えるね、普通に。これも王なりのサービス、というやつらしい。嫌がらせの間違いじゃない?
場合によっては、優勝者が王と伽をしている相手を欲することもあるそうで。闘技場の真ん中で優勝者と、このアホアホ衣装の青年がいたす日もあるとのことだった。
下品すぎる。茶畑保護の気持ちがなかったら、聞いた瞬間に術ぶっ放してた。危ない、危ない。
ライリダスに捧げられる青年たちは志願した者もいれば俺のように連行された者もいるらしく、皆が皆、乗り気なわけじゃなさそうだった。俺と最後まで残っていた儚げな美青年もそうだ。
だが彼も部屋に入った途端目が蕩け、表現上の規制がかかる見た目になっていた。四隅に置かれた媚薬香が、彼らから正常な思考を奪っている。中毒性もかなりあるんじゃないか。ひょっとすると、今日見た彼らは、もう『戻って』来ないかもしれない。
興奮してはいるものの部屋にいる兵たちが正常なのは、何か対策をしているからなんだろう。
……毒無効でよかったー。ありがとう、聖界の踊りキノコ。たまにすごくアグレッシブに踊る個体がいて、ダンスバトルをした記憶が蘇る。縞々模様の奴が強かった。
玉座から意識を逸らしたいあまり踊りキノコのことを考えていたら、闘技場の方から急に大きな歓声が上がった。準決勝の決着がついたらしい。
ということは、次は決勝。
全然試合を見れてないんだけど……いるよね、ハクラギ。
グイ、と兵の一人が乱暴に俺の腕を引いた。ハクラギ以外に触られたくないのに、腹立つなぁ。
入れ替わりで、ぐったりとした様子の青年が運ばれていく。ドン、と王の前に押し出される。獅子の顔を持つムッキムキな王は、一瞬言葉を失った後「ほぉ!」と声を上げた。
「これは素晴らしいぞ!」
俺の両腕を後ろ手で掴んで観客の前に晒す。
このアホ衣装を公開されるとか、屈辱の極みだ。俺はママ上みたいな露出狂じゃないんだぞ。
俺の姿が晒されると、今までで一番大きな歓声が上がった。
うなれ!俺の美形パワー!
——…!
ま、待って!うなるな!
ハ、ハクラギが。
闘技場にいるハクラギが俺を見ている。
目が合った、気がした。
すっごく驚いた顔をしている。
こ、こんな透けTKBのアホ衣装をハクラギに見られるなんて。ほんと待って、耐えがたい。ハクラギのためなら耐えられるけど、本人から見られるのは、あまりにいたたまれない。お互いに大事故すぎる。
思わず目を逸らし顔を伏せると。
不意に。
闘技場の空気が、凍った。
顔を上げられなかった俺は、気付かなかった。
ハクラギのその金の瞳が、深い赤へと変化したことに。




