お祭り
その後、泣いてしまった私をお父様とお兄様が宥めてくれて、ようやく落ち着きを取り戻した。
「ところで、お兄様はいつまでこちらにいられるんですか?」
「んー、いつ戻ろうか。正直、来月の終わりにあるテストさえ受けて、点数さえ取ればなんとかなるから。来週くらいに戻ろうかな。」
簡単に言っているが、1週間休むだけでも、学園の授業はすごいスピードで進んでいるだろう。
お兄様が通う王立学園は、12歳から18歳の王侯貴族が通う学園で、貴族としての知識だけでなく、精霊との親和力を試し、精霊術の使い方も学ぶことができる。
「では!一緒にお祭りに行きませんか?」
「ああ、明後日から始まるお祭りか。領地内なら外に出れそうか。」
「領地であれば問題ありませんわ。それに、お兄様が一緒なら、安心ですもの。」
そう、明後日から、フェルリテ領では春の芽吹きを祝うお祭りが開催される。
「それに、春の芽吹きのお祭りに、私が出ないわけにはいかないでしょう。」
毎年、春の芽吹きのお祭りでは、花属性の精霊から祝福を受けている私が、フェルのお手伝いのもと、ステージ上で舞う催しがある。
そのステージが祭りのスタートの合図でもあった。
ついでに、領地は竜たちが空を旋回している上に、領民は精霊との親和性が高いものが多いため、街の中には精霊がたくさんいる。
全く知らない土地でもないので、比較的安全に過ごすことができるだろう。
「そうだね。一緒に行こうか」
「お父様も、一緒にいきましょうね」
私とお兄様の会話を微笑みながら見ていたお父様にも笑顔でそう告げると、少し驚いた顔をしていたが、静かに分かったと答えてくれた。
◇◇◇
時はたち、祭り当日
祭りは、お昼過ぎから始まる。
そのため、私は朝から準備に追われている。
「お嬢様、こちらが、今年の衣装でございます。」
そう言ってマリアが指す先に目を向けると、そこには白のマーメイドドレス。
裾の部分には淡いピンクの糸とピンクダイヤモンドを使って花や花びらが舞っているかのように刺繍がされていた。
背中と袖の部分には、シフォンの柔らかい布が付けられ、きっと舞うたびに綺麗に動いてくれる。
「とても綺麗・・・」
「さぁ、時間もないですので、身支度に入りましょうか」
マリアとメイリに着付けられ、髪は緩くハーフアップにまとめられてはいるけど、二人のヘアメイクは崩れることを知らないので、安心して舞える。
コンコン
「どうぞ」
入室許可を出すと、入ってきたのはお兄様だった。
「ルル、準備は出来たかい?おや、花の妖精だね。」
「お兄様ったら」
花の妖精は言い過ぎだわ。お兄様は身内贔屓が強すぎる。
「ルル!!!!すっごく可愛い!!毎年可愛いを更新し続けちゃうのすごすぎるわ!」
「うっ・・・。フェル、苦しいわ」
これは毎年恒例のことであるから、あまり驚かない。
祭り開始の舞は、元々お母様が行なっていた行事だった。でも、私を産んで亡くなってから3年は、舞は行われておらず、国民から、寂しいがっている声が上がっていた。
元々、小さい頃からダンスは大好きだった私は、4歳の頃から、舞を再開すること決めた。
今年で4回目。これからもこうして舞っていられるように、そんな願いを込めて、毎年舞っている。
「今年もやり切って見せるわ。みんな、よろしくね」
この舞には花の精霊たちのお手伝いが欠かせない。
そして、風の精霊使いでもあるお父様とお兄様のお手伝いも欠かせない。
私が舞うことで、花の精霊たちに楽しんでもらう。花の精霊たちは、楽しくなると花や花びらを出す。
そして、その出た花や花びらを風魔法で領地全体に届けることになる。
フィニッシュと共に、フェルが祭り会場に無数の花を咲かせる。
何もないところから花を咲かすことができるのは、高位精霊であるフェルにしかできない。
「さあ、ルルラティア。時間だよ。頑張っておいで。」
「はいお父様。行ってきますわ」
お父様とお兄様に背中を押され、ステージに向かう。
「ルルラティア様!」
「今年も綺麗だわ」
「ルル様!!」
ステージに出れば領民が温かく見守ってくれて、静かに演奏が始まる。
私は、音楽に合わせて、自由に舞っていく。
「ルルラティア、楽しいね!」
「楽しい!楽しい!」
精霊たちが私の周りでとても楽しそうに飛び始め、あたりに花びらや花が舞い始める。
かと思えば、暖かな風が辺りを揺らし、舞い始めた花びらたちを領地全域に届け始める。
「さあ、フェル。最後の仕上げよ」
「まかせなさーい」
体を丸め、そして、大きな大輪が花開くように身体を広げる。
そして、その瞬間、お祭り会場で無数の花が開花していく。
屋台の周りや、女の子の髪飾りとして、男の手には花束までもで花咲いていた。
「ルルラティア様!!!」
「素敵だわ!!」
「今年も綺麗な舞をありがとう!」
「ルルラティア様だいすき!」
舞が終わると共に、たくさんの歓声が聞こえてくる。
「みんな、祭りの始まりよ。楽しんで過ごしましょう!」
「おお!!!」
「店開けるぞ!!」
「おっちゃん!串焼きちょうだい!!」
私の声を皮切りに祭りが本格的にスタートした。




