第29話 一大作戦
前回のあらすじ
魔心霊装は今も生きてる
ルイが東大陸のパールの町にある支部に派遣されてから、約二ヶ月の時が経過していた。
この間にルイは名実共に、パール支部でトップの異端審問官に上り詰めていた。
当初は彼女の姿から奇異の視線がほとんどだったが、たった一日……いや、たった一度の魔女討伐任務で敬意の視線へと変えた。
それは、彼女が過剰で苛烈に――同業者から見れば果敢に魔女達を捕縛、ないしは処刑していたからだった。
そしてルイの今の姿が過去にSS級魔女から受けた攻撃が原因だと分かった時、その傷は名誉の負傷だとして勇名を轟かせる結果となった。
そんなルイは今日、パール支部の支部長に呼び出されていた―――。
◇◇◇◇◇
「ルイ・ルイン特別異端審問官、参上いたしました」
支部長室に入り、ルイは敬礼と共にそう挨拶する。
ちなみに特別異端審問官というのは第零分室に配属されている異端審問官の階級で、特一級異端審問官と同等の権限を有している。
壮年の男性である支部長は、机の上で手を組みながらルイを呼び出した理由を伝える。
「よく来てくれた、ルイ審問官。今日は貴殿にある任務を任せようと思ってね」
「任務、ですか……」
ルイがそう聞き返すと、支部長は頷く。
「そうだ。貴殿は魔女の隠れ里について知っているかな?」
「噂程度でしたら。それが何か?」
「近々、近隣のサファイア支部、エメラルド支部と合同でその隠れ里に潜む魔女共を一斉に捕縛・処刑する任務があってね。パール支部の部隊の陣頭指揮を貴殿に任せたいと思う」
「大変ありがたい提案ではありますが……私は外様です。元々この支部所属の異端審問官が指揮を執った方がいいのでは?」
「それは私も思う。しかし他の候補者達から、「指揮はルイ審問官が適任です。その方が我々の士気も上がります」などと言われたら、彼等の意思を尊重しないわけにはいかないだろう? それに、私も含めて、この支部の異端審問官全員が、ルイ審問官を我々の仲間だと思っている。だからどうか引き受けてくれないか?」
「……そういうことでしたら、喜んで引き受けます」
少しの逡巡の後、ルイはそう答える。
彼女の答えに、支部長はどこか満足げだった―――。
◇◇◇◇◇
それから一ヶ月後。
ルイ率いるパール支部部隊は、魔女の隠れ里があると言われる、ブラオ山の麓に広がるヴェールの森の中へと足を踏み入れていた。
森の中は草木が鬱蒼と生い茂り、単身で入っていたのならたちまち行方知れずとなりそうな具合だった。
そんな中を、ルイ達は統率の取れた動きで進んで行く。
今回の合同作戦、サファイア支部は南西から、エメラルド支部は北から、そしてパール支部は南東から攻める予定だった。
そうして魔女達の退路を狭め、一網打尽にするという計画だった。
普通ならば成功するだろう。
しかし作戦考案段階から、今回の作戦の成功率は三割を切っているという目算が出ていた。どんなに自分達に有利な状況になろうとも、だ。
作戦成功率を激減させている一番の要因は――偵察段階で確認出来た、SS級魔女の存在だった。
偵察班によると、隠れ里に潜むSS級魔女は少なくとも四人はいるらしい。
四人の内の三人は、この近辺では比較的有名な魔女であったが、最後の一人は最近になって目撃情報が上がってくるようになっていた。
その魔女の特徴は、黒髪黒目の青年で、血のように赤い刀身を持つ剣を携えているらしい。
そして最大の特徴は――異端審問官達が放った魔法がたちまち、その魔女の魔術によって掻き消されたとのことだった。
その特徴を聞いた時、ルイは自身の胸に宿る憎悪の炎が勢いを増したこと自覚する。
そしてその炎は今も、ルイの胸の中で煌々と燃え盛っている。
森の中を進む中、ルイは右手で喪った右目を押さえる。
「……この目と、左腕。そして右足の傷。そのお礼をたぁ〜っぷりとしなくちゃね、ゼクスくぅ〜ん……」
歌うように、唄うように、謳うようにそう呟く。
自身に多大な傷を負わせた相手の名前を呼ぶルイの様子は、まるで運命の相手に出逢い、恋を煩った乙女のようだった―――。
意図してないのに、ヤンデレみたいなキャラになっちゃったルイ。
……実は書くのが楽しいキャラなのは内緒。
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