第30話 望まぬ再会
前回のあらすじ
魔女の隠れ里に攻め入ろう
僕達が魔女の隠れ里にやって来てから約半年。
今日は急に、アナスタシアさんに呼ばれていた。
「なんですか、アナスタシアさん? 急に呼び出したりして?」
「ゼクス様にもお伝えしておいて方がいいと思いまして、お呼びいたしました」
「何かあったんですか?」
「ええ。現在三方から、ワルプルギス機関の異端審問官達の部隊が向かってきているのです」
「それって……ヤバくないですか?」
「はい。控え目に言ってヤバいです」
アハハ……とアナスタシアさんは薄く笑う。笑い事じゃないと思うけど……。
そんな僕の心境を知ってか知らずか、アナスタシアさんは続ける。
「現在、隠れ里で戦闘能力を有する同胞達に異端審問官達の迎撃に向かわせているのですが……不利な状況であることに変わりはありません。なので……」
「SS級魔女の僕の力を借りたい、と?」
そう聞き返すと、アナスタシアさんは頷く。
「はい。ついでに言えば、ノイン様のお力も、です」
「……分かりました。僕としても見過ごせない状況なので協力しますよ」
「ありがとうございます。ではお二人には、南東から来ている部隊の迎撃をお任せしてもよろしいですか?」
「了解です。……ちなみに、他には何処から来てるんですか?」
「北と南西からです。北の部隊はツヴァイ様とドライ様が、南西の部隊はアイン様とフィア様がそれぞれ迎撃に当たってくださってます」
……北と南西、それと南東。この布陣は……。
まさかここで、元異端審問官としての知識が活きてくるとは思わなかった。
この布陣は、大多数の魔女を狩る時に……言わば殲滅戦の時に採用する陣形だった。
普通は四方から取り囲むような形だけど、今回は動員出来る人員が少ないのか、簡素版の三方攻めが採用されているらしい。
それと、ここにいる魔女達を一人たりとも逃がさないつもりのようだ。
「……アナスタシアさん。これは元異端審問官としてのアドバイスです。僕達も隠れ里にやって来ないように努力しますけど、もし三方のいずれかから部隊が迫ってきた時は、やって来た方角と逆方向に逃げてください。今回の場合だったら、南、北西、北東のどれかですね」
「分かりました。助言、ありがとうございます」
「では」
アナスタシアさんに向かって一礼し、白いコートの裾を翻してその場を後にした―――。
◇◇◇◇◇
ノインを連れて、交戦予測地点へと向かう。
この道中に、簡単な状況説明をしていた。
「でもよくこんなことしようと思ったね、ワルプルギス機関は? ゼクスがいた時はそんな話聞いたことないよ?」
「当然だよ。殲滅戦っていうのは、確実に勝てる算段があるか、相手に確実に大打撃を与えられる時に取る作戦だからね。殲滅戦を実行して返り討ちに遭いました、なんて、世間の評価を格段に下げるだけだろう? だからあまり実行されないのさ」
「そうなんだ。流石元異端審問官。組織の内部事情にも詳しいんだね」
「新人研修で習う内容だけどね」
そんなことを話していると、件の部隊が見えてきた。
彼等が僕達を視界に収めるよりも早く、僕は魔剣を抜き放ち、ノインは天使の羽を顕現させて同じ魔術を全く同時に発動する。
「「吹雪け、【氷結地獄】!」」
吹雪が吹き荒れ、辺り一帯を氷漬けの銀世界へと変化させる。
運良く魔術の範囲外にいた異端審問官達から魔法が飛んでくるけど、僕の【魔導封殺】で次々と無効化していった。
すると、パキパキとこの氷の地獄に足を踏み入れる何者かの足音が聞こえてくる。
そして、あり得ない人と同じ声が聞こえてきた。
「生き残っている者達はこの氷を迂回して隠れ里へ向かってください。あの魔女の相手は……私がしますから」
そう言って姿を現したのは、谷底に落ちていったハズのルイさんだった。
彼女の右手には、あの時とは異なり長剣が握られていた。
元々ルイさんの得物は長剣だったから、前回がイレギュラーだったとも言える。
「な、なんで……」
「生きてるのか、ですって? そりゃあもちろん、ゼクス君が私を殺さなかったからでしょう?」
「だとしても! あの高さから落ちて、無事でいられるハズが……」
「でも私は生き残ったわ。自分でも悪運の高さには呆れるわよ」
やれやれと言った風に、ルイさんは肩を竦める。
だけどすぐに真顔になり、片方しかない瞳で僕の顔を真っ直ぐに見つめてくる。
「……だけど、生き残ったのならやることは一つよ」
「……一応聞きましょうか。それは?」
「当然――ゼクス君を殺すことよっ!!」
ルイさんはそう叫ぶと、僕に向かって突撃してきた―――。
ゼクスとルイの三回目の対戦です。
ノインがいるゼクスが有利ですが、果たして……?
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