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代表報告者の沈黙は、本人の異議なし欄ではありません

「代表報告者の沈黙をもって、異議なしと記録します」


晩餐会後処理室の係は、黒い細い筆でそう読み上げた。

声は丁寧だった。だからこそ、リディアはその筆先がどこへ落ちるのかを見た。


異議なし欄。

そこには、リーナの夜薬加温薪、カイルの西三つ角帰宅灯、エダの未手渡し賃金袋、そしてリディア本人の未読欄が、一行ずつ小さく並んでいる。


「代表報告者が何も言わなかった、という欄はどちらですか」


リディアが尋ねると、係は瞬きをした。


「こちらです。代表報告者一名、沈黙。よって各欄に異議なしを転記できます」

「転記できません」


リディアは母の料理帳の写しを閉じず、机の上へ四枚の青札を置いた。


一枚目には、リーナの名。

夜薬を飲む喉は、今はまだ眠っている。眠っている喉は、同意を言わない。けれど、それは薬薪が不要だという意味ではない。


二枚目には、カイルの名。

帰宅灯の下に立つ足は、まだ西三つ角へ戻っていない。不在は、帰れたという返事ではない。灯りを消してよいという合図でもない。


三枚目には、エダの名。

賃金袋はまだ本人の手に渡っていない。手が袋を受け取っていない沈黙を、受領済みの沈黙として使うことはできない。


四枚目には、リディア自身の名。

彼女は代表報告者として紙を受け取った。けれど、紙を受け取ったことは、そこに書かれた全員の夜を読み終えたことではない。


「沈黙には、種類があります」


リディアは、料理帳の余白へ細い線を引いた。


「眠っている人の沈黙。不在の人の沈黙。手渡し前の沈黙。読めていない人の沈黙。これらは、代表者一名の沈黙へまとめられません」


係の後ろで、晩餐会調整室の若い書記が小さく眉を寄せた。


「しかし、異議があるなら代表報告者が発声するはずです。発声がないなら、業務上は異議なしと」

「発声できる欄と、発声してはいけない欄を分けます」


リディアは一枚の赤い転記票を手元へ引き寄せた。

赤字の文言はきれいだった。

代表報告者沈黙。

異議なし。

処理済み。


きれいな三語の下で、リーナの薬薪は削られ、カイルの灯りは消え、エダの賃金袋は警備費へ戻されることになっていた。


「私が今ここで黙った場合、私の沈黙は、この紙を読み終える時間をください、という意味です。リーナの喉が薬を拒んだ意味ではありません。カイルの足が暗い道を認めた意味ではありません。エダの手が袋を受け取った意味でもありません」


リディアは赤い票を破らなかった。

破れば、誰がいつその三語を書いたのかが消えてしまう。


代わりに、その上へ青い保留札を重ねた。


「代表報告者沈黙欄は、情報受領者未発声欄へ移します。本人別の欄は、本人読了待ち、本人帰着待ち、本人受領待ちとして残してください」


「残す、ですか」

「はい。空欄のまま残します」


「空欄が多いと、朝礼で叱責されます」

「叱責されるのは紙ですか。それとも薬を飲めなかった人ですか」


係は困った顔をした。

空欄は、仕事が終わっていないように見えるからだ。

けれど、終わっていないものを終わったと書けば、朝礼は早く終わっても、夜薬と灯りと賃金はどこにも届かない。空欄の遅さは、誰かの夜を待つ速さでもあった。


だがリディアには、その空欄が今夜の小さな火に見えた。

薬粥室の薪束一本。

西三つ角の灯油皿一つ。

エダの手へ戻る賃金袋一つ。

自分が読み終えるまで閉じられない、母の料理帳の余白一つ。


「空欄を埋めるために生活を消すのではなく、生活が届くまで空欄を守ります」


その時、廊下の端でエダが一歩だけ前に出た。

夜番明けの顔は青白かったが、彼女は何も言わず、自分の名が書かれた青札の横に立った。


その沈黙は、異議なしではなかった。

袋をまだ受け取っていない手が、ここにあるという証拠だった。


リディアは係に向き直る。


「エダさんの沈黙は、本人がここにいて、まだ手渡しを受けていないという確認です。異議なしへ移さないでください」


係は筆を止めた。

止まった筆先から、赤い転記線が四欄へ伸びる前に切れた。


リディアは四枚の青札に同じ文言を書いた。


――本人が読めるまで、異議なしへ転記しない。


リーナの薬薪は今夜分だけ削られずに残った。

カイルの帰宅灯は、西三つ角で一皿だけ点灯継続になった。

エダの賃金袋は、警備費箱へ戻されず、本人手渡し棚へ移された。

リディア本人の未読欄も、代表者処理済みではなく、料理帳横の読了待ちへ戻った。


小さな報酬だった。

けれど、四つの沈黙は、四つの生活としてまだ消えずに残った。


晩餐会調整室の若い書記は、今度は別の紙を差し出した。


「では、本人に読ませる責任者を指定してください。未発声保護欄の配布責任者が空白です」


リディアは、その空白を見た。


空白はまた、誰かの生活を動かすための穴になろうとしていた。

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