第9話 禁足地、消失。そして褒美
――禁足地の手前。
空気が、明らかに違った。
重く、澱み、息が詰まるような感覚。
「……ここが」
ダーボンが低く呟く。
「禁足地、だな」
パパイヤも珍しく、
笑顔を引っ込めている。
リィナは無言で周囲を警戒し、
俺も思わず拳を握った。
(緊張する……)
その瞬間。
――ぷぅん。
「……?」
俺の鼻先に、
一匹のハエが止まった。
「……ちょ」
ムズムズする。
「……まず」
息が、
吸い込まれる。
「……!」
リィナが、
即座に叫んだ。
「!! やばい!!!」
次の瞬間。
リィナは
パパイヤの背後に飛び込んだ。
「え!? なんで俺!?」
もう遅い。
「――ハックション!!!」
ドンッ!!!!
凄まじい衝撃波が、
前方へ一直線に放たれた。
禁足地一帯は、
轟音とともに吹き飛び――
気がつけば。
そこには、
だだっ広い平坦な土地が広がっていた。
「……」
「……」
沈黙。
そして後方から。
「――っ、はははははは!!」
リィナの笑い声。
振り返ると。
「……」
パパイヤが、
完全に何も身につけていなかった。
「……お、おい」
俺は真っ青になる。
「ご、ごめん!!
本当にごめん!!!」
パパイヤは一瞬驚いた後、
豪快に笑った。
「ははは!
気にすんな!」
親指を立てる。
「風通し、最高だ!」
「最高じゃないです!!!」
ダーボンが、
そっとマントを差し出した。
「……隠せ」
「お、助かる」
⸻
恐る恐る、
平坦になった禁足地に足を踏み入れる。
……何も、起きない。
「……もう」
リィナが周囲を見渡す。
「恐れる必要、ないわね」
そこには――
モンスターの死骸が、
至る所に横たわっていた。
まるで、
○○チャのキャラクターが
ごろごろ転がっているように。
「……」
「……」
「調査、終わりだな」
ダーボンが静かに言った。
⸻
王都へ帰還。
謁見の間で、
王と側近たちに報告する。
「禁足地には……」
俺は正直に言った。
「何もありませんでした。
モンスターの死骸が、
○○チャみたいに
横たわっているだけでした」
「……」
「……」
王も、側近も、
完全にポカン顔だった。
リィナが一歩前に出る。
「補足します」
そして、
事実を淡々と説明した。
――くしゃみ。
――衝撃波。
――地形消失。
「……」
説明が終わった瞬間。
「――はっはっはっは!!」
王が、
腹を抱えて大笑いした。
「なるほど!
前代未聞だが、
結果は見事!」
そして言う。
「褒美を取らせよう。
何が欲しい?」
俺は、
一瞬考え――
「……かわいいメイドが欲しいです!!」
「良かろう」
「ダメです!!」
リィナが即座に叫ぶ。
「被害が出ます!!
絶対に出ます!!」
「……そ、そうか」
王は咳払いをした。
「では仕方ない。
禁足地の領主になってもらおう」
「……え」
「それを、褒美とする」
「……」
俺は、
目に見えて落胆した。
「……そっちかぁ……」
リィナは、
深く頷いた。
「それが正解です」
こうして。
禁足地は平地となり、
モンスターはいなくなり、
俺は――
禁足地の領主になった。
望んだ形とは
少し違ったけれど。
王都は、
今日も平和だった。




