第25話 湯の奥で、想像は形になった
翌朝の温泉地は、霧が深かった。
露天の湯気が山肌に溜まり、
昨日よりも白く、静かに揺れている。
「……さらに奥がある」
岩の間に細い道が続いていた。
足元は滑りやすく、空気は温い。
進むにつれ、
硫黄の匂いがやわらかく甘みに変わる。
道の先で、視界が一気に開けた。
広大な温泉。
湯は澄み、底が見えないほど深い。
その中央で、
水面がゆっくり盛り上がった。
――巨大なスライム。
透明に近い体は、朝の光を受けて淡く輝き、
呼吸するように、形を変えている。
敵意はない。
ただ、場の力が集まっている。
胸の奥で、
いつもの感覚が動いた。
想像が、
現実に手を伸ばす前触れ。
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スライムは、ゆっくりと動いた。
水面を割り、
湯の中から伸びる柔らかな触手が
彼女達の肌に絡みつく
湯気が濃くなり、
岩壁に反射した光が揺れる。
外套や上着は、
触手によって
役目を終えた布のように形を失っていく。
彼女達は顔を赤らめた。
慌てる必要はなかった。
そこに彼がいたから
スライムの流れは、
彼女達を刺激した。
誰も傷つけない。
彼女達は甘い声を漏らし果てた
その場に満ちるのは、
甘い熱と、安心と、
胸に広がる不思議な解放感。
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次の瞬間、
空気が変わった。
スライムはドーム状に広がり
透明な結界が、
ゆっくりと広がり、
湯と岩を包み込む。
外の音が、遠ざかる。
ここは、
想像が形になる場所。
湯の香りが、
ほのかに甘くなる。
薬のように強くはない。
ただ、心を緩める温泉由来の香気。
呼吸が深くなり、
肩の力が抜ける。
誰かが息を吐く。
その音に、また誰かが応える。
視線が交わり、
すぐに逸らされる。
満たされていく感覚が、
波のように巡る。
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スライムは、
役目を終えたかのように動きを止めた。
流れはほどけ、
結界はそのまま、
場を守る殻として残る。
尻尾を振り、腰を振り
胸で挟み込み咥える
彼女達は絶頂を迎え
ユウを中で感じる
湯の縁に腰を下ろし、
ただ静かに呼吸を整えた。
疲労はない。
代わりに、
深い愛がある。
満足、という言葉が
最も近い。
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透明な体が小さく縮む。
巨大だったスライムは、
掌に収まるほどの大きさになり、
ころりと湯の縁に転がった。
触れても、冷たくない。
柔らかく、弾力がある。
害意は、ない。
「……連れて行こう」
自然に、そう思った。
想像が形になったなら、
責任も、ここにある。
スライムは、
小さく揺れて応えた。
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朝の風が戻り、
霧が薄くなる。
湯は、いつもどおりの温度に落ち着いた。
岩陰で身支度を整え、
荷をまとめる。
小さなスライムは、
水袋のそばで静かに待つ。
守護獣のように。
山を下る前、
誰かが振り返った。
白い湯気。
静かな湯。
想像が、現実になった場所。
それは、もう過去だ。
これからは、
同行者が一つ増える。
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つづく




