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中二病の儀式が成功して世界を殴る係になりました  作者: てん


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10/17

第25話 湯の奥で、想像は形になった

 翌朝の温泉地は、霧が深かった。


 露天の湯気が山肌に溜まり、

 昨日よりも白く、静かに揺れている。


「……さらに奥がある」


 岩の間に細い道が続いていた。

 足元は滑りやすく、空気は温い。


 進むにつれ、

 硫黄の匂いがやわらかく甘みに変わる。


 道の先で、視界が一気に開けた。


 広大な温泉。

 湯は澄み、底が見えないほど深い。


 その中央で、

 水面がゆっくり盛り上がった。


 ――巨大なスライム。


 透明に近い体は、朝の光を受けて淡く輝き、

 呼吸するように、形を変えている。


 敵意はない。

 ただ、場の力が集まっている。


 胸の奥で、

 いつもの感覚が動いた。


 想像が、

 現実に手を伸ばす前触れ。


⸻


 スライムは、ゆっくりと動いた。


 水面を割り、

 湯の中から伸びる柔らかな触手が

 彼女達の肌に絡みつく


 湯気が濃くなり、

 岩壁に反射した光が揺れる。


 外套や上着は、

 触手によって

 役目を終えた布のように形を失っていく。


 彼女達は顔を赤らめた。

 慌てる必要はなかった。

 そこに彼がいたから


 スライムの流れは、

 彼女達を刺激した。

 誰も傷つけない。

 彼女達は甘い声を漏らし果てた


 その場に満ちるのは、

 甘い熱と、安心と、

 胸に広がる不思議な解放感。


⸻


 次の瞬間、

 空気が変わった。


 スライムはドーム状に広がり

 透明な結界が、

 ゆっくりと広がり、

 湯と岩を包み込む。


 外の音が、遠ざかる。


 ここは、

 想像が形になる場所。


 湯の香りが、

 ほのかに甘くなる。


 薬のように強くはない。

 ただ、心を緩める温泉由来の香気。


 呼吸が深くなり、

 肩の力が抜ける。


 誰かが息を吐く。

 その音に、また誰かが応える。


 視線が交わり、

 すぐに逸らされる。


 満たされていく感覚が、

 波のように巡る。


⸻


 スライムは、

 役目を終えたかのように動きを止めた。


 流れはほどけ、

 結界はそのまま、

 場を守る殻として残る。


 尻尾を振り、腰を振り

 胸で挟み込み咥える


 彼女達は絶頂を迎え

 ユウを中で感じる

 

 湯の縁に腰を下ろし、

 ただ静かに呼吸を整えた。


 疲労はない。

 代わりに、

 深い愛がある。


 満足、という言葉が

 最も近い。


⸻


 透明な体が小さく縮む。


 巨大だったスライムは、

 掌に収まるほどの大きさになり、

 ころりと湯の縁に転がった。


 触れても、冷たくない。

 柔らかく、弾力がある。


 害意は、ない。


「……連れて行こう」


 自然に、そう思った。


 想像が形になったなら、

 責任も、ここにある。


 スライムは、

 小さく揺れて応えた。


⸻


 朝の風が戻り、

 霧が薄くなる。


 湯は、いつもどおりの温度に落ち着いた。


 岩陰で身支度を整え、

 荷をまとめる。


 小さなスライムは、

 水袋のそばで静かに待つ。


 守護獣のように。


 山を下る前、

 誰かが振り返った。


 白い湯気。

 静かな湯。


 想像が、現実になった場所。


 それは、もう過去だ。


 これからは、

 同行者が一つ増える。


⸻


つづく


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