第12話 笑ったら、仲間が海を渡っていきました
禁足地には、すっかり人が集まっていた。
屋台が並び、
職人が資材を運び、
子どもたちが走り回る。
「……なんか、町っぽくなってきたな」
俺は、パパイヤとリィナ、ダーボンと並んで
その光景を眺めていた。
「領主様のおかげだな!」
パパイヤが、満面の笑みで俺の背中を叩く。
「いやいや、
俺は何も――」
「やってるわよ」
リィナが即座に訂正する。
「主に余計なことを」
「ははは!」
思わず笑ってしまい、
俺は軽く――
パパイヤの腕に触れた。
それだけだった。
本当に、それだけ。
――次の瞬間。
ドンッ!!!
「……え?」
パパイヤの体が、
弾かれた。
「うおっ!?」
地面に当たり、
バンッ!!
跳ね、
ゴンッ!!
また跳ね、
「ちょ、止まら――」
ドンッ!!
――完全にピンボール。
そして。
勢いそのまま、
海へ。
「……」
「……」
チャポン。
いや、違う。
チャポン、チャポン、チャポン!!
パパイヤの体が、
海面を水切り石のように跳ねていく。
「うおおおお!?
俺、飛んでる!!」
その声を最後に、
パパイヤは――
水平線の向こうへ消えた。
⸻
沈黙。
禁足地に集まっていた人々。
職人。
商人。
住民。
全員が、
ポカンと口を開けていた。
「……」
「……」
「……今の、
何?」
誰かの呟き。
俺の顔が、
みるみる青ざめる。
「……やった?」
リィナが、
ゆっくり振り向く。
「……やったわね」
ダーボンが、
静かに海を見る。
「……生存率は、
低くはない」
「低いとは言ってないけど
高いとも言ってないよね!?」
⸻
数分後。
俺たちは、
即座に決断していた。
「探しに行く」
「当然よ」
「放置はできん」
問題は――
「……町は?」
俺が聞くと、
リィナは即答した。
「勝手に進むわよ」
「だな」
ダーボンも頷く。
「基礎条件は整っている。
むしろ、
我々がいない方が
地形が安定する」
「それ、
褒めてる?」
「事実だ」
⸻
急ごしらえの船が用意された。
「……なんで、
開拓初日に
船旅になるんだろう」
俺が呟くと、
リィナが肩を叩く。
「あなたが笑ったからよ」
「そんな理由!?」
「十分すぎる理由よ」
ダーボンが帆を確認し、
静かに言った。
「……目的地は不明。
進路は、
パパイヤが飛んでいった方向だ」
「雑!!」
だが、
それしか手がかりはない。
船は、
ゆっくりと港(仮)を離れた。
背後では、
禁足地の町が、
何事もなかったかのように
動き続けている。
「……帰ってきた時、
どうなってると思う?」
俺の問いに、
リィナは遠い目をした。
「……もう、
王都より栄えてるかもね」
ダーボンが静かに言う。
「……それは、
十分あり得る」
こうして。
禁足地の開拓は
住民に丸投げされ、
俺たちは――
仲間が水切りで消えた方向へ向かう船旅に出た。
果たして、
パパイヤは無事なのか。
そして、
帰る頃には――
町は、どうなっているのか。
不安しかないが。
この旅もまた、
きっと――
普通では終わらない。




