第12話 人が集まり始める禁足地
禁足地――
かつては近づく者もいなかったその場所に、
今は朝から人影があった。
「……多くない?」
丘(だったはずの平地)を見下ろしながら、
リィナがぽつりと呟く。
「多いな」
ダーボンも同意する。
「……増えてるぞ」
パパイヤが指差した先には、
簡易テント、荷車、行商人、職人。
そして――
やたらと元気な野次馬。
「ここ、禁足地だよな?」
俺は首を傾げた。
「元・禁足地ね」
リィナが訂正する。
「今は“平坦で水があって海もある土地”よ。
人が来ない理由がないわ」
その通りだった。
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噂は、早かった。
「湖が二つあるらしい」
「海に闘技場が浮いてるって?」
「領主が一人で整地したって話だぞ」
情報が、勝手に尾ひれをつけて広がっている。
「……なんで俺の名前、
出てないんだろ」
「出たら問題だからよ」
リィナの即答が痛い。
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最初に集まったのは、
職人だった。
「ここ、石がいいな」
「平らだから建てやすい」
「水路? もうあるじゃん」
次に、
商人。
「人が集まるなら店を出す」
「湖の魚、売れるぞ」
「闘技場の観客向けに屋台だ!」
そして最後に――
住民。
「仕事ある?」
「畑、作れる?」
「……住んでいい?」
「え、いいの?」
俺は思わず聞き返した。
「領主なんだから、
許可はあなたが出すのよ」
リィナが腕を組む。
「ただし」
じっと睨まれる。
「勝手に地形を変えない」
「……はい」
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その日の午後。
俺たちは、
自然発生した“町の中心”に立っていた。
道ができ、
広場ができ、
人が集まり、
勝手に役割が生まれている。
「……開拓って、
こんなに自然に進むもん?」
「普通は、
もっと時間かかる」
ダーボンが淡々と言う。
「だが、
基礎条件が揃いすぎている」
水、土地、交通(海)、娯楽(闘技場)。
「……俺、
何したっけ」
「くしゃみとか、
拳とか」
リィナの言葉が重い。
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夕方。
簡易的な集会が開かれた。
「領主様!」
誰かが俺を呼ぶ。
「ここ、
町の名前どうします?」
「……名前?」
「必要ですよ!」
皆が、期待の目で見る。
俺は一瞬考え――
「……えっと」
リィナが、
小さく咳払いをした。
「変な名前は却下」
「……普通でいいです」
沈黙。
そして。
「新禁足町で!」
「そのまま!?」
ツッコミが飛ぶ。
「仮です!
仮!」
その場は笑いに包まれた。
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夜。
焚き火のそばで、
俺たちは並んで座っていた。
「人、増えたな」
パパイヤが嬉しそうに言う。
「転がる場所も増えた!」
「増えなくていい」
ダーボンが即座に切る。
リィナは、
焚き火を見つめながら呟いた。
「……本当に、
世界は滅びなかったわね」
「うん」
俺は頷いた。
「むしろ、
人が集まってきた」
リィナは、
少しだけ微笑む。
「……だからこそ」
視線が、俺に向く。
「これからは、
守る責任が増えるのよ」
「……領主、
大変そうだ」
「今さらでしょ」
焚き火の向こうで、
新しい町の明かりが揺れていた。
禁足地は、
もう“禁”ではない。
人が集まり、
暮らしが生まれ、
名前を持とうとしている。
そしてその中心に、
なぜか――
俺がいた。
この町が、
どうなっていくのか。
それはまだ、
誰にもわからない。
ただ一つ確かなのは――
もう後戻りはできない、
ということだけだった。




