第11話 港を作ろうとしたら、別の何かができました
禁足地に、ついに――
海ができた。
「……よし」
俺は腕を組み、
水平線を見つめる。
「次は港だな」
「いきなり最終工程に行かないで」
リィナが即座にツッコむ。
「港っていうのは、
桟橋を作って、
波を防いで、
少しずつ――」
「つまり、
船が出入りできる場所でしょ?」
「そうだけど、
あなたの場合は――」
嫌な沈黙。
パパイヤが、
期待に満ちた顔で言った。
「港か!
魚も獲れるし、
市場もできるな!」
「交易も発展する」
ダーボンが冷静に補足する。
全員の視線が、
俺に集まった。
「……力、
使わないわよね?」
「うん。
今回は構想だけだから」
その時点では、
本気でそう思っていた。
⸻
俺は海岸に立ち、
頭の中で港の完成図を描いた。
(船が停まって……
波が穏やかで……
人が集まって……)
「……よし」
軽く、
砂浜を踏みしめる。
「……」
「……」
リィナの目が、
細くなる。
「……今、
何した?」
「え?
何も?」
――次の瞬間。
ゴゴゴゴゴ……
海面が、
不自然に揺れ始めた。
「……?」
「……ちょっと」
パパイヤが、
沖を指さす。
「なんか、
盛り上がってないか?」
ドンッ!!!!
海中から、
巨大な岩塊が突き出した。
「……」
「……」
それは――
桟橋でも、防波堤でもない。
円形の岩の塊。
しかも、
中央が――
ぽっかりと凹んでいる。
「……何あれ」
リィナが、
震える声で言う。
「港?」
「……いや」
ダーボンが、
じっと見つめる。
「……闘技場だな」
「海の!?」
パパイヤが叫ぶ。
岩の島は、
完全に円形闘技場だった。
観客席のような段差、
中央の広場。
無駄に完成度が高い。
「……」
俺は、
ゆっくり言った。
「……船、
入れなくない?」
「入れるわけないでしょ!!」
リィナのツッコミが炸裂する。
「どうして港を作ろうとして、
海上闘技場が出てくるの!!」
「……港にも、
人は集まるから……」
「発想が飛びすぎ!!」
⸻
その時。
どこからか、
船影が近づいてきた。
「……?」
王都の旗を掲げた調査船。
船上から、
役人が叫ぶ。
「禁足地領主殿!
あれは一体――」
「……港です」
「どこが!?」
役人は、
完成した闘技場を見て
完全に言葉を失っていた。
ダーボンが、
静かにフォローする。
「……海流は安定しています。
見物客は集まるでしょう」
「……」
役人は、
額を押さえる。
「……報告書、
どう書けばいいんだ……」
⸻
夕方。
俺たちは、
岩の闘技場を眺めていた。
「……まあ」
パパイヤが、
前向きに言う。
「港は無理でも、
観光地にはなるな!」
「交易港の代わりに、
娯楽施設」
ダーボンが頷く。
リィナは、
深くため息をついた後、
俺を見る。
「……次は、
私に相談してからやること」
「……はい」
こうして。
禁足地には、
平原ができ、
湖ができ、
海ができ、
そして――
港の代わりに、
海上闘技場が誕生した。
領主としての開拓は、
今日も順調――
とは言い難いが、
確実に前へ進んでいる。
たぶん。




