人の扱いが
戴員と嬀覧が孫翊の配下となり暫く経った。
二人は忠実に職務を全うしている姿を見て、辺洪は考えた。
(ふむ。殿も警戒が薄れているし、そろそろ親しくなっても良いか)
二人が有能なので、親しくすればその恩恵に与れると思い、辺洪は二人を呼び一席を設けた
その席で辺洪は「今後ともよしなに」と言って二人に頭を下げた。
戴員達も特に問題ないのか、今度共に仲良くしようと述べて酒を飲み、夜を明かした。
数日後。
辺洪は孫翊に呼び出された。
此処の所、何も失敗も失言もしていないがと思いつつ、辺洪は孫翊の下に来た。
「お呼びとの事で参りました」
「うむ」
挨拶したが、孫翊はぶすっとした顔をしていた。
辺洪が訊ねる前に、孫翊が先に口を開いた。
「お前、最近戴員と嬀覧と仲が良いらしいな」
「は、はい。御二人とは時折酒を飲んでおります」
「お前は戴員達を登用するのは止めようと言ったのに、何故親しくなろうとしているのだ?」
「彼らも殿に仕える家臣です。いがみ合うよりも仲良くした方が良いと思い、親しくしているのです」
「登用するのは止めようと言ったお前がその二人と親しくするとは、恥を知らんのか⁉」
「わ、わたしはただ、殿の家臣になった二人と親しくなる事で、二人に対する家中の者達の目が変わると思い親しくしなった」
「喧しい! お前がそんな事を考える必要などないわっ。余計な事をするでないわ!」
孫翊はその後辺洪を叱責した。
後で分かった事だが、辺洪を呼び出したその日。妻の徐氏が孫翊に「戴員達の重用するべきではない。今すぐに辞めさせるべきです」と言ったのだ。
今迄、妻の言葉にはある程度受け入れていた孫翊は今回は流石に受け入れられないとばかりに拒否した。
それでも徐氏は考えを翻意させようと述べたのだが、孫翊は怒りだした。
周りの者達は孫翊の事を思って言っていたのだが、孫翊からしたら、もしその言葉に従えば、自分は人を見る目無しという事になる。
そんな恥ずかしい思いはしたくない孫翊は言葉を聞き入れる事が出来ず、話を打ち切った。
とは言え、妻にまで戴員達の重用するなと言われて、孫翊は苛々していた。
其処に呼んでいた辺洪が来たので、苛々を発散しようと叱責した。
お蔭で孫翊の胸がスッとしたが、辺洪は逆に鬱憤が溜まっていた。
その鬱憤を晴らそうと酒を飲む事にした辺洪。
酒を飲んでいると、戴員と嬀覧の二人が訪ねて来た。
「随分と酒を飲んでいる様だが、どうされた?」
「何かあったので?」
二人が心配する様に声を掛けて来たので、辺洪は酔っているからか孫翊に対する不満を零した。
話を聞きながら戴員達は辺洪を労わった。
「それは大変でしたね」
「まぁ、あの殿ですから仕方がないですな」
二人に優しい言葉を掛けられて辺洪は少しだけ気分が良くなった。
「とは言え、殿の性格が変わるという事は無いと思います」
「それでは、辺洪殿は苦労するという事になりますぞ」
「致し方なかろう。まぁ、殿が居なくなるという事が起こるのであれば、別だがな」
「・・・・・・殿が居なくなるか・・・・・・それは良いかも知れんな」
辺洪がポツリと零した言葉。
それを聞いて、戴員達は何か思ったのか頷いた後、辺洪の酒に付き合った。




